最後に見たもの
ガキの周囲を等間隔にまとわりつく12本の金色の槍………まさかあれは!!
いや、そんなわけがねえ、『神喰』が言っていた神王遺物を超えるという『始祖遺物』………あんなものは出来の悪いおとぎ話だ。このアルシラ様を見下すための世迷言に決まっている。
証明してやる、このアルシラ様が最強だってことを、あの偽物をぶっ倒して!!!
「教えてやるよ、ガキ!!殺す時なんざ気持ちいい、スッキリする以外の感情なんざあるわけねえだろ!!!弱者をいたぶるのは強者の特権だ、全員そうやって生きてる!!!!権利ってやつを楽しまなきゃ、いつまでも搾取されるだけじゃないか、そんな人生は御免だね!!!!!」
「それがあなたの幸せなの?」
「そうだよ、最高にハッピーってやつさ、今みたいにね!!!!!!!!!そのしかめ面をこのアルシラ様の幸福に変えてやるよ!!!!!!!!!!!!!神位『真次元破断』」
ガキを中心に次元の狭間が広がる。無限がその顎を開く。誰にも平等に与えられる死の安らぎがそこにある。
「そのまま無に飲まれて時空の塵になりな!!!!!!!!」
「神位が使えるんだね、強いんだ、きっと。でもゴメンね、意味がないの。無駄なんだ。ランスオブラウンズ、少しだけ力を貸して。『完全破壊』」
バリンと何かが割れる音が響く。
なんだ、何が起こってるんだ、次元が、無が消えた。
おかしいだろ、私は始祖だ、始祖になったんだ!!!!!!!
まだ使いこなせてないだけだ、力に目覚めた暁にはお前なんざ………
「グアァッァアアアッ!!!!!!!」
足が、私の足が!!
なんでだ、どうして、どうして足がちぎれてんだ!!!痛い、どうしてっ!!!!!!
槍が血に濡れている。
どういうことだ、私がやられたのか、見えなかった、どうして!?
「それで終わり?ならサヨナラだね。ランスオブラウンズ、楽にしてあげて」
ガキが私を指さす。
次の瞬間、私の目の前にパッと真っ赤な花が咲いた。
綺麗。
おかしい、私の身体から金色の槍が突き出てる、何本も何本も。なにが起こってるの?お母さん、お父さん、どこに行ったの、寒いよ。なんで私を置いてくの、皆どうして私より先にいなくなるの、アルシラ、行かないで。寂しいのは………一人は嫌だよ。
私は………ねえ、私は誰なの??
「バイバイ」
私が最後に見たもの、それは白くて綺麗な服を着て、キラキラ光り輝いてる天使の姿だった。




