あの日の記憶
「でも、よかった、あなたが悪い人じゃなかったらと思うと怖かったの。あなたが正義の味方で、悪いことをした人を懲らしめただけだって言われたら、どうすればいいかわからなかったから。よかった、あなたを殺すことが正しいことで」
「………おい、ガキ、冗談でも笑えないね、殺すっていったのかい、このアルシラ様を、お前が」
「大丈夫、なるべく楽にしてあげる、すぐに済むから」
「質問に答えろって言ってんだよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
なにも分かってないガキの癖に調子に乗りやがって、まずは足首をへし折ってやる。指先を動かす。人は死ぬ。簡単な話だ。そして、力を少し弱めれば折れるだけで済む。
か弱いガキは練習台にちょうどいい。
いたぶって、いたぶって、いたぶって、いたぶって、一秒でも長く生きられるように細心の注意を払う。貴族から金を巻き上げるのに役に立つスキルだ。
この世のなか悟ったみたいな顔してるガキが「もう殺してください!!」そう泣きながら額を地面に擦りつける姿が楽しみじゃないか。
………………なんだ?
おかしい、もう発動しているはずだ。どうしてガキの足が無事なんだ、へし折れない。
もう一度指を動かす。
ガキの後ろの木が折れ曲がり、倒れる。
何も問題はない、出力も、精度も、すべてが桁違いだ。
ふんっ、始祖のなったばかりで、まだ力の制御が上手くいってないみたいだね。
「まずは足からだ」
指先に力を込める。何も起きない。
いや、起きている。
空間が歪み、収縮し、折れ曲がる、目に見えない時空の変遷がこの瞳には見えている。
なのに、どうしてこのガキだけが影響を受けない!!なんでこのアルシラ様の魔法が効かない!!!
「時空間魔法だね、これで殺したんだ、たくさん。教えて。死ぬ前には皆どんな言葉を残すの?あの二人はどんな言葉を言ってた?教えて?知りたいの、とっても。知らなきゃならない気がするの」
「うるせえ、黙ってろ!!!!!!!」
練習台なんてのはどうでもいい、本気で、一撃で身体を真っ二つに引きちぎってやる。そうだ、両手をこうして交差すれば、古竜であろう耐えることは出来ない。ミザイも、オートアルマも、ユウミも、アツコも、エルダも………………エルダ?誰の事だ??いや、確かに知ってるんだ、私はその名を。
ちっ、今は余計なことを考えるな。アルシラ様は始祖になったんだ、誰も馬鹿に出来ない、誰も勝てない、最強になったんだ。
「死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ねぇ!!!!!!!」
地面が抉れ、木々は倒れ、時空が歪む。
だが、ガキは傷ひとつ負わない、呼吸すら乱れない。
「どうしてだ、なんで死なねえ、どうして生きてる!!!!」
「ねえ、教えて、どうしてあなたは殺すの、殺す時なにを考えているの?」
おかしい、なんだ、いつからアイツの周りにあんなのが浮いてやがった。
金色の剣、いや槍か!?




