超重力波砲
「クソがっ、微塵も効いてないんだよ!!この程度の魔法で調子に乗るな!!『重力波』」
詠唱により生み出された波動が、波が砂を攫って行くように魔法を掻き消した。
「うわぁ、一発で振り出しに戻されましたよぉ、私の切り札なのにぃ!!」
「ツギハ オレノ デバン」
カーコ=イ=シーザがその巨躯に見合わぬ身軽さで大地を蹴り上げ、巨大なボールのように宙に浮く。
「エイイ カイホウ 『絶槌』」
大槌が鞭のようにしなると、ゴッという鈍い衝突音が響き、アルシラの体はゴムまりのように弾け飛び、そのまま石壁に叩きつけられた。押せば崩れそうなほど脆くなっていた遺構の壁がガラガラと崩れ、アルシラに積み重なっていく。
「クリ ティ カル」
カーコ=イ=シーザの着地により大地を揺るがすほど衝撃が走り、再び何カ所かで崩落が起きる。
「まさかこれで終わりってことはないだろうね?」
周囲の視線が瓦礫に下敷きになっているであろうアルシラに注がれる。
「カーコ=イ=シーザ、屈め!!!!」
「オッ オウッ」
ドールゾールの言葉に身をすくめたカーコ=イ=シーザのすぐ上を空気の刃が通り抜け、兜が抉れる。
「なるほどねえ、認めたくはないが良い連携だ。やたらと大技ばかり使うと思ったら、砂埃を巻き上げて削られる空間を認識しやすくしてたんだね、気づかなかったよ。それに時空間魔法のリキャストタイムの長さも把握してるみたいだねえ。先に魔法を打たせてから数で畳みかける、理にかなってる戦法だ。認めるよ、このアルシラ様が甘かったことをねえ!!そして、今からは一方的な殺戮になると宣言しておくよ!!あんた達のとっておきを喰らおうがこのアルシラ様は無傷も同然、埋めようのない実力差があるんだ、それを思い知らせてやるさ!!」
「ちっ、種がバレたようじゃ。もう迂闊に近づいてはこんぞ、遠距離からチマチマと嬲り殺しにする気じゃ」
「誰がそんなセコイことをするって!?一撃で皆殺しだよ!!『超重力波砲』!!」
アルシラの両手を前に突き出し、大砲のように魔法を射出する。
「皆さん、私の後ろに来てくださいぃ、岩よ重なり層となり、頼れる砦を築いておくれ『ストーンウォール』!!」
「キャハッ、ココロトと合作ってのが気に入らないけど、重ね掛けすればちょっとは耐えれるかもね。『マジックバリア!!」
詠唱に呼応し出現した岩壁の表面を魔法の障壁が覆う。
次の瞬間、アルシラの放った魔法が二重の障壁にぶつかり、一呼吸ごとに岩壁が削れ薄くなっていく。
「もう無理ですよぉ!!破られますぅ!!」
「少しでも上に逸らすよ、全員伏せな!!」
ドゴオオオォォォというとてつもない轟音とともに遂に障壁が突破され、強力な重力波が旭日の師団を襲う。壁という壁が一瞬で消し飛び、砕け散った岩は真っ白な砂埃となり遺構を覆った。
「ハハハハッ、これ終わりだ!!!!まったく奥の手まで使わせやがって。ミザイごと竜燐の騎士を塵にしてやるつもりだったけど、まあいいさ、もうアイツは孤立無援。全員で囲んでじっくり時間をかけて削り取ってやればいい」
空気中に飽和するように立ちこめる微粒子となった岩の欠片が、その重みに耐えかね地面に降り注ぐと、霧が晴れるように視界が広がった。
 




