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いもうと無双は異世界転生と共に〜38才こどおじの異世界英雄譚〜  作者: 蒼い月
竜のねぐら

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十字の贖罪

 メッセージが終わるとワカナは天高く舞い上がる。


「うーん、なんかレアなモンスターっぽいから残念~。ウグちゃん一緒だし、武器使って近接攻撃するのはやめた方がいいよね…じゃあ、魔法でチクチクいこっと。とりあえず『ホーリーアロー』」


 ワカナが居酒屋でビールを頼むような適当さでそう唱えると、周囲に浮かんだ光球から光の矢が放たれる。『ホーリーアロー』は第3位階に属する基本的な攻撃用神聖魔法ではあるが、100レベルのワカナが使えば低レベル帯のモンスターを一掃できる威力を有する。


「やった!?」


 ワカナは一人フラグ立てに勤しみながら、粉塵で遮られた視界の向こうに浮かぶ敵の動向を追う。


 瞬間、ヒドラの一本の首が伸び、ワカナを一飲みしようと牙をむく。


「お姉ちゃん、ぶつかる!!」


 ワカナはウグが叫んだと同時に羽を大きくはためかせ、急上昇することで攻撃を避けた。


「ハズレ~。でもホーリーアローあんまり効いてないみたい…どうしよ、神聖魔法はあんまり攻撃用のやつないんだよね。うーん、じゃあ次はこれで。『セイクリッドウェイブ』」


 空間が歪み、津波のような光の層がヒドラを押しつぶす。第5位階の神聖魔法だ。アンデッドやカルマ値がマイナスな敵に特効となる呪文だが、属性による効果を抜きにしても十分なダメージを与えることができる。

 その証拠に六本ある首のうち二本までもが折れ曲がり、動くことをやめている。


「今度こそやったかな………うわっと『プロテクション!!」


 動きを止めたかのように思われたヒドラの一本の首から毒霧が放たれ、ワカナは咄嗟にその一撃を魔法で防ぐ。

 ワカナにとってはどうという事のない攻撃ではあるが、ウグであれば一呼吸で死に至る猛毒となる。

 六本の首はそれぞれ独立しているようで、残る四本の首は押しつぶされた二本の首など最初からなかったかのように次々と攻撃を繰り出してくる。


 ウグは恐怖に怯えているのか、口を真一文字に固く結び、眉間に皺を寄せながら必死に目を瞑っている。


「怖い思いさせてゴメンね、ウグちゃん。もう怒ったよ~、ちょっと本気出すからつかまっててね。神王の御名において不遜なるものに裁きを与え給え!!極位『グランドクロス』!!」


 ワカナの周囲を眩いばかりの光の粒が覆い、次の瞬間それは十字架の形をなし、天空からヒドラに降り注ぐ。

 光は鱗を貫き、肉を消し、骨を灼き、地表にヒドラがいた痕跡だけを残し全てを消し去っていた。


 その荘厳な光景に比して、周囲は心臓の鼓動が聞こえるほどに静まり返り、葬列を思い起こさせる。


「…終わったの?さっきの化け物はもういない?」


 ウグがゆっくりと目を開ける。

 そこには大地を呑み込まんばかりに存在していた大蛇の姿はどこにもなかった。


「あーっ!!」


 突然ワカナが大声をあげる。


「どうしたの、お姉ちゃん!?」

「忘れてた…」

「なにを?」

「お土産用の鱗とっとくの忘れてた~、ウグちゃん今から降りるから一緒に落ちてないか探して!!」


 ウグは呆れるような安堵するような曖昧な表情を浮かべた。

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