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いもうと無双は異世界転生と共に〜38才こどおじの異世界英雄譚〜  作者: 蒼い月
もう一人の転生者

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不快な記憶

「終焉は誰にも等しく訪れる。葦を啣めば即ち雁とならん」

「え~とっ………今のは流石の私にも分かりません~。きっと、疲れてるんだと思いますぅ」


 ゼライアスが敵に突き立てた槍を引き抜くと、それに合わせて全員がタイミングを合わせたかのようにため息をついた。


「どれだけ敵を倒せばあの性悪女の下に辿り着けるんじゃ。このままでは戦う前に魔力もスキルも体力もまるっと全部干上がるぞ」


 ドールゾールは頭部から毛皮を伝い滝のように零れる汗を拭い、空になった水筒を逆さにし最後の一滴を飲み干そうと舌を伸ばす。


「さっきから遭遇する奴ら全員が相当な手練れだねえ。いったい、どこにこんな戦力を隠し持ってたって言うんだい」

「ゼンイン ジュウジン ナノモ キニナル」

「キャハッ、コプト教団は異種族の信者が多いとは言っても、ここまで獣人に偏るのは不自然なんだけど。まさか、どっかの虎頭が、仲間を引き寄せてるんじゃないよね」

「はんっ、それなら同族のよしみで加減して貰いたいもんじゃ」

「オリハルコン級の私達でこの状況ですぅ、竜燐の騎士を除けば、突入部隊が全滅しててもおかしくないですよねぇ」


 ココロトの言葉に一同が声を失う。

 竜燐の騎士が既に来ているのであれば敵の本体を挟撃しうるが、もし突入が遅れているのであれば旭日の師団は敵地に孤立していることになる。


「やっぱり、ノリで転移なんてするもんじゃないねえ」

「愚痴は後回しじゃ、新手が来たぞ」


 ドールゾールがクナイを握り、壁際に隠れ身構える。


 コトリ


 小石が転がる音につられるように、敵に向けクナイを投げつける。

 カキンとそれを弾く音が既に天井を失った狭い一室に広がり、ドールゾールの頸動脈には鋭い切っ先が突きつけられていた。


「………オマエハ リュウリン ノ キシ」

「旭日の師団の皆さん、どうしてココに?」


 カーコ=イ=シーザとフィーネの声が重なり反響する。


「重ねられし罪に導かれ、時空を旅したまでのこと。良識は常に偏見という悪友から逃れられない。真を知るには虚を思うことだ」

「『四罪』を追って相手が開いた転移門を通ってきましたぁ、一緒に戦ってくれると心強いですぅ。って言ってると思いますぅ」

「我々も『四罪』のひとり『虚空』のアルシラと交戦し、追っているところだ。奴は何者かと魔法で連絡を取っていた。恐らく合流する気だろう。『四罪』を二人以上同時に相手にすることになると思うが大丈夫か」


 ハイリッヒは端的に状況を説明し、旭日の師団に問いかける。


「はんっ、竜燐の騎士と共に四罪を一人倒しても、報酬の増額が関の山じゃ。それよりかは、それぞれが四罪を一人ずつ倒した方が、実入りが良いというものじゃろう」

「いよいよアタイ達も竜燐級冒険者の仲間入りってとこだね」

「イミョウ タノシミ」

「キャハッ、さっさと行こうよ、せっかくの獲物を取り逃がすのも間抜けだし」

「そうと決まれば、儂が先行しよう。雑魚の掃討は竜燐の騎士殿に任せてもいいか?」

「ハイリッヒで構わない。奴は足に傷を負っている。時空間魔法で一時的に距離を稼いでいたとしても、戦闘のために極力魔法は温存しているはずだ。血の跡を見つけられれば追いつけるだろう」


 ハイリッヒの言葉をうけ、ドールゾールが目を瞑り鼻を鳴らす。遺構に満ちるむせかえるほどの血の臭いから、パズルを組み合わせるように記憶のピースを埋めていく。海馬に漂う無数の情報を整理し、もっとも悪辣で、もっとも不快な臭いを嗅ぎ分ける。


「………こっちじゃ」


 ドールゾールは地を蹴り駆けだした。

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