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家族の定義

「なにいまの?ウェアキャットのお姉ちゃんの声がした。魔法?」


 ウグが驚きの声をあげる。


「聞こえるんだ、流石ウェアウルフだね、地獄耳~。」


 ワカナはウグの耳をツンツンとつつく。


「そうだよ『メッセージ』っていう遠くの仲間と話すことが出来る魔法。さあ、ちゃんと連絡もしたし、もっと森の奥まで探検だ~。」

「うん!!絶対たくさん白寿草を採って、ラグさんタグさんを楽させてあげるんだ。」

「ねえねえ、聞いていい?なんでウグちゃんはラグさんダグさんって言うの?他の皆はお父さんお母さんって言ってるのに。」


 ワカナの言葉にウグの表情が変わる。


「…だって僕オークじゃないから。」


 消えいりそうな声。


「ウェアウルフだよね。耳モフモフで可愛い。」


 ワカナの能天気な反応とは裏腹に、ウグの表情は森に落ちる影よりも暗い。


「種族が違うから僕は家族じゃない。だからちゃんと受けた分の恩返しはしないといけないんだ。」

「種族が違うと家族じゃないの?なんで?」


 ワカナが首をかしげる。


「だって、血が繋がってないし、見た目だって…」

「ラグさんとダグさんだって血は繋がってないけど凄く素敵な家族に見えるな。それにウグちゃん含めて皆。」

「でも種族が違う…。」


 泣きそうな声。


「私達だって皆種族違うけど仲良しだし、誰よりも大切な家族だと思ってるよ。」

「え!?皆種族が違うって、ウェアキャットのお姉ちゃんとエルフのお姉ちゃん以外人間じゃないの?」

「ふっふーん、違うんだなぁ。良い女には秘密がたくさんあるんだよ。」


 何故か自慢げなワカナの声。


「血も繋がってないの?」

「もっちろん。」


 ワカナは薄い胸をこれでもかと張る。


「それなのになんで一緒にいるの?どうやって家族になったの?…それって本当に家族なの?」

「うーん、あんまり小さい頃のことは覚えてないんだけど、多分最初は寂しかったんだと思う。寂しくて誰かと一緒にいたくて、いっちゃんとお姉ちゃん達と会って、旅してるうちに楽しくなって、大切になって、知らないうちに家族になってたんじゃないかな。多分?」


 その答えにウグは困惑の表情を浮かべる。


「ふふ、お子ちゃまには少し難しい話だったかな~?」


 終始上から目線のワカナをよそに、ウグは何かを決意するように首を縦に振った。


「…僕も、僕たちも家族になれるかな?」

「もう家族だよ。きっとずっと前から。ラグさんもダグさんも皆も絶対そう思ってる。だから恩返しなんて言わない方が良いよ、みんな寂しくなっちゃうから。」

「僕が家族でいいのかな…。」

「もちろんだよ!!だからさ、恩返しのためなんかじゃなくて、皆をビックリさせるために探しに行こう、白寿草。」

「うん!!」


 木々の隙間からこぼれる陽光がウグの顔を照らす。そこには先ほどまでの影はなかった。


「じゃあ、もっと森の奥に行こう~。」

「さっき皆種族が違うって言ってたけど、お姉ちゃんは人間なの?」

「ふふーん、これ本当は言っちゃダメなやつなんだけどな~、どうしようかな~。知りたい?」

「大事な秘密なら別に…」

「そっか~、ウグちゃんがそんなに知りたいなら止むを得ないか~、回避不能か~、絶体絶命か~。仕方ないなぁ、ウグちゃんだけだよ?」


 一方的にまくしたてられ呆気にとられるウグに見せつけるようにワカナが指輪を外すと、その背中から4枚の純白な羽が現れ、その一枚一枚が孕む眩いばかりの光は薄暗い森を優しく照らした。


「…キレイ。天使みたい。」

「わかる、圧倒的なビジュアルだよね!!可愛さパーフェクトスマイルだよね!!わかるよ~、エンジェルスタイルの私見ると皆そう言うから!!そう、ワカナは天使だよ。大天使ワカナ!!じゃあ、つかまっててね、行くよ。」

「え、え、なに?」


 ワカナは混乱するウグを抱き、フワリと宙に浮くと、鬱蒼とした森を抜け一気に森の奥に向かって飛び立った。


「凄い、凄い!!飛んでる!!飛んでるよ!!」

「気持ちいいでしょ?ゆっくり歩くのも楽しいけど、こうやって空を散歩するのも好きなんだよね。飛べばすぐに皆の所に戻れるし、もうちょっと奥まで行ってみよ~。」


 ワカナがスピードをあげ、ウグはワカナの細い身体をギュッと掴んだ。

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