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いもうと無双は異世界転生と共に〜38才こどおじの異世界英雄譚〜  作者: 蒼い月
もう一人の転生者

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ゲートが示す未来

「クゥッ、次から次へと!!ミザイ、ゲートは!!」

「お待たせしました、完了いたしました。しかし、私の技量ではゲートを安定させることは出来ません。転移のさい座標が少々ずれるのはご容赦の程を。それでは健闘をお祈りしております」


 メッセージが途切れると、アルシラを包む空間が膨張し、ゼライアスは槍とともに吹き飛ばされる。高速度で膨れ上がる空気の波が建物を揺るがし、残りの仲間も強かに壁に打ちつけられる。

 わずか数秒の隙、アルシラはその一瞬を攻撃には用いず、一目散にゲートに向かい駆けだす。


「くっ、逃すかっ!!」


 壁に叩きつけられ呼吸すらままならないジグニはそれでも懸命に弓矢を番え、逃げるアルシラ目がけ矢が放ち行手を遮る。


「キョクジツ ノ シダン カラハ ニゲラレナイ」


 足が止まったアルシラの前に通路を覆い隠さんばかりのカーコ=イ=シーズの巨躯が立ちはだかり、背丈ほどある巨大な戦鎚を廊下もろとも崩す勢いで薙ぎ払う。床に幾重にも折り重なったスケルトンウォーリアの骨が砕け散り、微細な粒子となって舞い上がる。


「木偶の坊が、死ねえ!!」

「死ぬのはお前だ」


 アルシラの意識に聞きなれない冷たい声が差し込まれ、それと同時に再度脇腹が深々と槍で抉られる。


「トドメだ」


 アルシラの視界に槍を高々と振りかぶるゼライアスの姿が映る。


 なんだ、このアルシラ様が、負ける?


 ………ふざけるな、どいつもこいつも馬鹿にしやがって!!!!!!!全員殺す、このアルシラ様を舐める奴は、一人残らずぶっ殺してやる!!!!!!!!!!


「カーコ=イ=シーズ、離れろ!!!!!!!」


 アルシラを包む透明な膜が歪み、流れ、のたうち回り、壁、床、空気、生命、ありとあらゆる物を飲み込んでいく。


「その空間に触れるな!!!!!!」


 死に際の大蛇が身をくねらせるように、不規則に行き来する次元が世界を削り取っていく。数秒すると透明な大蛇は姿を消し、かわりに静寂が訪れる。


「みんな、生きてるかい」

「大丈夫ですぅ、幸いまだ首と胴体はお友達みたいです………多分ですけど」

「………ニゲラレタ ノカ?」

「窮鳥は竜をも飲み込まん。ましてや竜なれば我らの臓腑がその供物足らんことは奇跡。………すまない、私の判断が甘かったせいで、全員を死に追いやるところだった」

「………キャハッ、ゼライアスらしくないね、あのヒス女の弱点は掴んだんだ、ならこう言うべきでしょ、次会う時はボクの右手のお礼をさせてもらうってね」

「そうですよぉ、私達は生き残ったんですぅ、それにユウ・リューさんの腕も私にかかればちょちょいのちょいでくっついちゃいますよ………多分ですけど」

「そこはもっと自信をもって言って欲しいもんだねえ。それにアタイの身体も治してくれ。叩きつけられた時に羽根が折れちまったよ、これじゃ飛べやしない」

「………落ち着くのはまだ早いぞ。ゲートがまだ空いておる、閉じきっていない。いま追えばあの女を追えるかもしれん」


 ドールゾールの言葉に旭日の師団の面々の視線がゼライアスに集中する。


「土は土に、星は星に還る。ならば我らが肉体が還るべき場所はただの一つ。行こう、いるべき所へ、そこで彼らも待っている」


 全員が互いを確認するように視線を交わし、一度だけ首を縦に動かす。

 ゼライアスの前で不安定なまま消滅と生成を繰り返すゲートは、これから起こりうる全ての未来を内包しているように思えた。

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