その時オレに電流走る
「ワカナと誘拐犯さん達かなり仲いいんだよ、仲良しなう。あれだよ、コンコルド効果」
「ストックホルム症候群な。怪我はないか?」
「ないよ。二人とも意外と紳士。紳士的誘拐犯だよ。ワカナのこと『天使みたいに可愛いからきっと高く売れる』『ここら辺じゃお目にかかれない上玉だ』ってメチャクチャ褒めてくれるし。超お姫様扱いなう。ちょっと嬉しいなう」
「何嬉しがってんの、お姫様はズタ袋に詰められて馬車に放り込まれないでしょ」
アツコの剃刀のようなツッコミ。鋭い、鋭いぞ、アツコ。
「みんなも褒めていいよ。褒めないと誘拐犯さん達の子になっちゃうかもよ??」
「ワカナ、貴方は売られるのよ、家族になる前に売られるの。あなたの扱いは家族枠じゃなくてどっちかというと家畜枠よ、目を覚ましなさい。………ちなみにディナーのメニューはなに?」
お腹が空いているのか、アツコが間の抜けた質問をする。自由だな、ワカナのぬるぬるな雰囲気に毒されて皆自由になってきてるな。
「硬いパンとぬるいお酒。ワカナ未成年なうって言ったら、困ってた。知ってた?こっち世界じゃお酒より綺麗な水のほうが安いんだって。勉強になった?ワカナに感謝してもいいよ」
なんかメチャクチャほのぼのしてる。もう誘拐じゃないんじゃないかな、これ。寂しい中年男性が食事を共にしてくれる美少女を連れ去るために計画した………いや、やっぱりそれ純度100%の誘拐だな。
「おいっ、何をぶつくさ言ってる、誰かいるのか!?」
「ワカナは喋りながらするタイプなの、もうちょっと待ってて!!」
「おっ、おう、そうか。逃げるなよ」
「逃げないからパン残しといてね………行ったなう。レディーのトイレまでついてくるとかマナー違反だよね、後から厳重抗議しとくから、カード出すよ、イエロー」
点数制兄妹以外にも適用されるのか。汎用性高いな。
しかし、この時間に食事をしているってのはどういうことだ?少なくとも普通の酒場が空いているような時間でもないし、深夜に宿屋に入ったとも考え難い。そもそも明け方にならないとある程度の都市なら門兵に止められるからな。裏金を渡せばこっそり入れて貰えるらしいが、犯罪を犯している身でそこまで危ない橋を渡るとも思えない。だいたい犯罪者なんだから人混みの中で一緒に行動なんてするわけがない。
ということは………オレは枝分かれしていく思考の糸を丁寧に解きほぐし、一本の線へと紡いでいく。その線は徐々に肉付けされ、ひとつの推理となりオレの脳内に電流が走った!!
「ワカナ、わかった、すぐに助けに行くからな。待っててくれ」
「うん、お土産よろしくね~」
「兄様、どうされたんですか?」
アツコが心配そうな面持ちでオレを見つめる。
しかし、オレのなかにはある確信が芽生えていた。




