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いもうと無双は異世界転生と共に〜38才こどおじの異世界英雄譚〜  作者: 蒼い月
もう一人の転生者

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四罪

「国王陛下が病に臥せっているうえ、後継者争いが激化してそれどころじゃないとよ。頼みの大貴族様は次期国王への反逆を企てたとかいう冒険者を捕まえておこぼれに預かろうと必死だしな。自分の城の土台が崩れようってときに随分呑気なもんだぜ」


「いつ内乱が起こるともしれん状況で、自らの虎の子である正規軍をすり減らしたくないというわけじゃな。時代が移り変わったというのに、上が考えることは変わらんのう」


 バオウエルバは薄い顎髭を指でこよりながら、楽しげな笑い声をあげる。


「相も変わらずアタイ達冒険者は都合のいい使い捨ての安い駒でしかないってわけだね。まっ、下手に本音を隠して英雄扱いされるよりかは、よっぽどわかりやすいさ」


 誰に言うでもないジグニの独り言に、幾人もの冒険者が静かに頷いた。


「分かりました、独力で教団を殲滅せよということであれば、力を尽くしましょう」


「早とちりするな。斥候から荷物の運搬、補助魔法から治癒に至るまで、最低限の援助はある。まったく、権力からの独立とかいう冒険者ギルドの崇高な使命はどこに行ったのかねえ、国がやるはずの仕事を押しつけられるなんざ、情けない話だぜ」


 エーガーの乾いた笑い声。


「問題ありません。我々がやらねば、幾つもの命が生贄として犠牲になり、それにより引き起こされる災厄は更に無数の命を飲み込んでいくでしょう。誰の指示であろうが、そこに救いを求める人々がいるのであれば私が為すべきことはひとつです」


「誰もがお前みたいに死に急ぎたがる馬鹿ばかりじゃねえさ。お前ら言っておくぜ。今回のヤマ、情報によると『四罪』が絡んでいるって話だ。眉唾だがな」


「四罪!?そんな馬鹿な、もう全員死んだはずじゃあ!!」


 四罪という言葉を聞くや否や、一人の冒険者が叫び声をあげる。

 ほかの冒険者達も、信じられないといった表情を浮かべる者、青ざめヘナヘナと膝から崩れ落ちる者、興奮か恐怖かカチカチと奥歯を鳴らす者まで反応は様々だが、平然としている者は竜燐の騎士と旭日の師団を除いて存在しない。


「『破獄』『落星』『虚空』そして『神喰』。懐かしいのう、いまだコプト教団と繋がっておるのか。奴らとは大陸を股にかけ何度もやりあったが、遂には決着がつけられなんだ。風の噂ではみな死んだと聞いていたが、しぶとく生き残っていたのか、それとも首を挿げ替えられたのか………いずれにしても一筋縄ではいかぬだろうな」


 バオウエルバの飄々した態度に幾人かは冷静さを取り戻したものの、『四罪』という二文字が歴戦の冒険者達の精神を侵食し、普段は胸の奥底にしまい込んであった恐怖心に火をともす。


「恐怖とは生み出されるものに非ず。自らの内に潜む物。鏡に向かえば己が見え、目を瞑れば恐怖が見えるだろう」


「うーん、たぶん四罪に怯えるのは仕方ないけど、一旦落ち着こうって言ってるんだと思いますぅ」


「キャハッ、普段はデカい顔してる癖に、ちょっと名の知れた敵が出てきたらすぐ浮足立つとか、雑魚雑魚カーニバルかな?冷静になってから、よくよく今回の依頼を受けるのか考え直した方がいいんじゃない?いざアジトに突入って時に怖気づいて逃げられてもリアクションに困るからさ」


「ザコザコ カーニバル イミフメイ」


「アタイ達は受けるよ。『四罪』ってやつらを倒せばいいんだろ。話が単純で助かるってもんさ」


「手柄の摑み取りじゃな」


「威勢がいいな、頼もしいという事にしとくぜ。他の奴らはどうだ、逃げるなら最後のチャンスだぜ」


 エーガーの問いかけに頷く者は一人もいない。


「なら決まりだ。ここにいるバカ共でコプト教団を潰すぞ。報酬は思いのままだ、張り切って稼げ!!」


 エーガーの檄に応えるように冒険者達は声をあげ、恐怖を押し殺し自らを鼓舞する。

 恐怖と狂騒の入り混じった空間のなかで、ハイリッヒだけは一人顔を伏せ、思案の沼にその身をひたしていた。

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