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憧れの冒険者ギルド

 激闘?から一夜明け、オレ達は村で教えてもらったエルバスという町に来ていた。


 オレ達とは言ってもメンバーはオレ、アツコ、ミカヅキ、サヤの四人だ。

 サヤはラグさん達と森に行くはずだったのだが、賑やかなところに行きたくなったということで、急遽こちらに合流することとなったのだ。

 やっぱりサヤも若い女の子だし、オークの村よりかは町でショッピングとかしたいんだろうな…でも、今のオレ達はこの世界での通貨の持ち合わせはゼロで何も買うことはできない。


 一文無しの素寒貧なのだ。


 昨日妹達と改めて試したところ、ミッドカルドで持っていた武具やアイテム、金貨などはレアアイテムや期間限定の物も含めすべて魔法で出し入れすることが出来たのだが、日常的な買い物で金貨を使えば否が応でも目立つこと間違いないうえ、金貨に刻印された絵や文字からどこの金貨かと怪しまれること請け合いだ。

 そのリスクは銀貨や銅貨にも同様に付きまとう。

 ミッドガルドの通貨が使えない以上、早く職を見つけてこの世界のお金を稼ぎまくり、妹達に不自由のない暮らしをさせなければ!!


 現実世界では『ザ・こどおじ』という感じで、親と同居して半ば養ってもらっているような状態だったから、自分が誰かを養う立場にたつのは初めてだが、妹達はオレを頼りにしている。


 …頼りにしていると思う。


 ……多分、頼りにしているんじゃないだろうか。


 ………頼りにしていてくれると嬉しい。


 とにかく頼れる兄として頑張らねば!!


「兄様、どうやらあそこが冒険者ギルドの建物のようですね。」


 アツコが入り口にドラゴンをモチーフにした紋章が掲げられた建物を指さす。

 若干実写寄りというか、中世ヨーロッパの貴族の家紋に使われて良そうな、いかついデザインだ。


 なぜ冒険者ギルドのマークにドラゴンが使われているかというと、創設者が竜退治に向かうために仲間を募ったのが冒険者ギルドの始まりということで、その功績と人々のため戦いに赴いた気高い精神を称え竜の紋章の使用が許されたことに起源があるらしい。


 仲間とともに竜退治…まさに冒険って感じだな!!


「何してるの、ここに来るために町まで出てきたんでしょ。」


 ミカヅキは看板の前で感慨にふけるオレを小突いた。

 そう、今日のオレ達の目的は冒険者ギルドに行き冒険者となり、大なり小なり依頼をこなしてこの世界での生活基盤を作ることだ。

 行きがかり上ラグさんの家に泊めてもらっているが、オークではないオレ達がいつまでもラグさんにお世話になっているわけにはいかない。

 ラグさんはそんな素振りは見せないが、いくら命の恩人という理由があるにしろ異種族のオレ達を村に招き入れていることをよく思っていない村人も多く、長居することとなれば一層ラグさんの立場を悪くしてしまうだろう。


 元から人間との交易やウェアウルフの孤児を育てている事で問題視されているラグさんの立場を、これ以上悪化させるわけにはいかない。

 いまは一刻も早く自活できるようになり、出来れば少しお礼を渡したうえで生活の拠点をこの町に移したいのだ。


 …かといって、冒険者ギルドなぁ。


 正直個人的には冒険者ギルドという場所にかなりビビっていたりする。


 そもそもオレは私立文系大学卒のしがないファミレスチェーンの店長。


 中学こそ陸上部に入っていたもののほぼ幽霊部員だったうえにゆるゆるな部活だったため、体育会系のバリバリの縦社会を経験したこともなければ、陽キャ独特のイケイケなノリについていくこともできない。

 ましてや体育会系を超えたところに位置する不良グループとの交流は皆無で、目も合わさないようひっそりと生きてきたクチだ。

 まあファミレスは若干体育会系な雰囲気があるが、ブラック要素が強いうえに横の連帯も希薄だから体育会系とはまた別の世界といえるだろう。


 一方で冒険者になるような人間は、間違いなく体育会系イケイケ人間か、ヤンキー系オラオラ人間の二択であることは疑う余地もない!!(偏見)

 オレのような文科系キョロキョロ人間は扉を開けることすら戸惑う魔境といっていい。


 …ただ昨日の戦闘を思い返す限り、オレ達の実力はミッドガルド同様かなりの高レベル帯にあることは間違いない。

 本気を出せばオレ一人で訓練された軍隊相手に無双する程度の実力はあるわけだ!!

 そう考えると田舎町の冒険者ギルドであれば、オレ達はぶっちぎりで強い可能性が高いんだよな…というか、そうであって欲しい!!


 一番強いオレ達が気後れする理由は、どこにもないはずだ。


 よーし、開けるぞ~。


 開ける、あと10秒で開ける。


 よし、整った。タイミング整った気がする。


 いくぞ、じゃあ今すぐ開ける………


「早くしなさい!!」


 ミカヅキに頭をはたかれ、自分が思っていたよりも勢いよくガンッと扉を開ける。


 その音に冒険者ギルドのなかに屯していた輩達の視線が一斉にオレ達に注がれた。

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