表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いもうと無双は異世界転生と共に〜38才こどおじの異世界英雄譚〜  作者: 蒼い月
王女と人狼

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

178/464

勝利か矜持か

「さっきからコイツらはなんなの!?次から次へと鬱陶しい!!」


 ミカヅキが前方にウインドカッターを放ちながら文句を言う。


「もう10匹目くらいだよね、ヘルハウンド。ここら辺の名物なのかな?あるかな、ヘルハウンド饅頭とか」

「こんな物騒な名物あるわけないでしょ!!」

「識別用の首輪が見えます、恐らく障害物として用意されたものかと。でも様子がおかしいですね、こちらの攻撃にまるで怯みません」

「バーサクのような精神魔法でもかけられてるのか。それにしてもこの密度、先頭を行く者には簡単にはゴールをくぐらせたくないみたいだな」


 オレは後方を振り返る。

 既に後を追いかける戦車は数えるほどしかない。しかも、その多くは相次ぐ戦闘で息も絶え絶えといった雰囲気で、オレ達が迫りくる敵を露払いする形となっているため何とか進めているが、単独での走行となればモンスターに阻まれすぐさまリタイアとなるだろう。


 しかし、そんな状況のなかでも意気軒高な者もいる。ケンタウロスが率いる戦車だ。彼らは自前の弓や槍を巧みに用い、狩りでも楽しむかのようにモンスターを始末している。

 他の戦車を妨害するために用意された支給武器は持っておらず、他者にちょっかいをかける様子も見られない。純粋に闘争やレースを楽しんでいるようだ。


 ミッドガルドでは、ケンタウロスは気が荒く闘争心が強すぎるという欠点こそあるものの、強者に対して敬意を抱き、弱者を不必要に痛めつける事のない武人気質な種族として設定されていた。どうやらこの世界でもその性質は受け継がれているようだな。


「それにしても数が多すぎる、まるで何かに追い立てられてるみたいだ」

「あっちゃんに追いかけられてた人達もこんな感じだったもんね」


 ワカナの言葉にオレはあの光景を思い返す。そうだ、圧倒的な脅威にさらされた者が見せる狂騒、ただ前だけを見据え逃げ惑う姿、たしかに似ている。


「………ナナセ、コイツらが来た方向の様子を探知できるか?」

「轍の音とヘルハウンドの気配があるので自信はないですが………やってみます」


 ミカヅキの言葉にナナセが答え、目を閉じる。

 頭部に燦然と輝く猫耳がピクピクと動き、なんともカワイイ。やはり猫耳は正義だな!!


「………兄さん、はっきりとは分からないですが、凄く大きな気配を感じます。敵、それも巨大で、多くの人を巻き起こんでます」

「巨大な敵?バカ兄、どうする?別の道を進んでる戦車がトラップにハマってるだけなら、むしろ好都合。罠にかかったのが旭日の師団の戦車だとしたら、このまま進めば優勝だってあるかもしれない。でも………」

「もし違えば、レースの参加者だけでなく一般市民にも多くの犠牲を出す可能性もある、か」


 ミカヅキの表情に影が差す。


「………風の噂で聞いたことがある。グランファレ商会の野郎共は、自分たちが負けそうになった時のためにとんでもない化け物を飼ってるっていう、大酒でもかっ喰らってなきゃ笑いとばしちまうような、くだらない噂を。でも、いまはアイツらがトップなんだ、そんな馬鹿げたことするわけがない。このまま進んで優勝を目指すべきだ」


 サイラスの言うことは最もだ。確証もないなかコースを変えることは勝利を放棄することに等しい。それに大型のモンスターが出たからと言っても、シュトライトヴァーゲンブルグほどの大都市であれば十分な防衛体制が取られているはずだ。


 しかし、アバドンのような敵が現れていたとしたら?


 数時間もしないうちに都市は壊滅し、住民は皆殺しにされるだろう。


 杞憂かもしれない。しかし…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ