栄光への架け橋
「キャハッ、もうあの耄碌ジジイ倒して、サクッとゲートくぐっちゃえばいいんじゃないかな?なんならボクがあの鳥ガラボディーから出汁とって食べちゃうけど?」
「テジュンガ メンドウ ヤルキニ ナラナイ」
「アタイの弓なら10数える間に全ての鳥を堕とせる。でも無益な殺生をする趣味はないね」
「ふっ、愚か者ほど、自ら賢さを誇る、というやつか」
「神よ哀れなる迷い子に慈悲と毛髪を…」
「天使の導きは奈落への手招きに似ている。怖れを知る者は必ずしも怯懦にあらず。ただ真実を望むものこそ賢からん」
旭日の師団も流石にこの最終関門には文句があるようだ、相変わらず何言ってるかわかんないけど。
「さぁ、なぜ進まん!!最初の一歩こそ、栄光へとつながる唯一の架け橋だというに!!」
奇傑皇の言葉に誰もが尻込みするなか、一人の少女が近づいていく………っていうかあれミカヅキか、いつの間に。
「確かに一見魅力的な謎かけね。最終関門のテーマ自体も悪くないけど、致命的な欠陥がある。このルールでは誰も苦労して神器のヒント探すわけがないじゃない!!特に鳥なんて追いかけるだけ無駄でしょ。結局最後はそこら辺にいる動物探しと、湖のなかで宝探しをしないと、グリフォンから鍵貰えないんだから。私だったら漁夫の利狙いで湖のヒントだけ見つけて、後は誰かが謎を解き終わるの待つんだけど」
ミカヅキが冷静にこの企画の問題点を指摘する。
そう、オレもちょうどそこを指摘しようと思ってたんだよね、やっぱり兄妹意見があうな。
「だいたい鳥も獣も本当にこの周辺に留まってるの?鳥とかさっき見た時より明らかに数減ってるんだけど、もしかして逃げたりしてない?ヒント持ってる鳥」
ミカヅキのツッコミを受け奇傑皇が側近らしき人物に耳打ちをすると、運営本部がにわかに慌ただしくなる。あっ、あれだ、これ絶対リハーサルしてなかったやつだ。鳥とか逃げてない前提でヒント作ってるやつだ。
「………誰もここにいる鳥だけが対象だとは言っておらんじゃろうが!!逃げたんじゃないぞ、お前らに捕まえらないよう自分の持ち場に散ったんじゃ、それでいいじゃろがぃい!!」
なんかメチャクチャなこと言い出した!!
逃げてるの?鳥逃げてるの!?
「せめてヒントを持ってる鳥の目印位はあるんでしょうね。遥か上空を飛んでる鳥が小さな紙をつけてるかどうかなんてわからないから、色とか視認できる目印が無いと片っ端から撃ち落とす必要があるけど」
再び側近に耳打ち。
すっごいミカヅキ睨んでるよ、超睨んでる。
「………ない」
「はぁ?聞こえない」
「目印はないって言っとるじゃろうが!!いちいちいちいち、グチグチグチグチ、次々次々次々次々うっさいんじゃあ!!いいから黙ってルール通り進めればええじゃろうが!!」
奇傑皇は地面をダンダンと踏み鳴らし、腹いせに周囲の調度品を杖でなぎ倒す。
あの爺さん本当に聖職者なのか!?
「無関係の鳥まで巻き込むなんて可哀想です。だいたい、大司教ともあろう方が奉納レースのために鳥や動物の命を軽んじるなんて間違ってます。あまねく生命との調和を示し、その実りを神に感謝として捧げる、それこそが奉納祭なのではないですか?今すぐ最終関門の内容を変えるべきです。それに今のルールでは一つのチームしか突破できませんが、それじゃあ単勝以外の賭けが成立しません。少なくとも3連単の払い戻しができるよう、3台は突破できるようにするべきです!!」
「そうだそうだ~、ハゲてるからって調子のるな~、両サイドも剃り落とすぞ~」
ナナセとワカナの援護射撃。ナナセの言葉からは隠し切れない私心を感じるが、それは見て見ぬふりをしよう。
あとワカナ、髪型が不自由な人を煽るのは良くないと思うぞ、本当に良くないからなそういうの、戦争ってそういう些細な罵り合いから生まれるからな、気を付けよう。




