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冒険者ギルドの存在

 一方で冒険者ギルドについての情報は、自称村の情報通から得た『この街道を真っ直ぐ進んだ所に定期的に市場が立つエルベスという大きな町があるから、そこで聞けばわかると思う。』という程度で、やはり町に出ないと詳しい事は分からないようだ。


 ただ村人が『狼による被害が続くようであれば大金を払って冒険者ギルドに依頼しなければいけなかった』と言っていたので、どうやらこの世界にも冒険者ギルドは存在するのは間違いなさそうで一安心といったところだ。

 冒険者ギルドがないとそもそも路銀を稼ぐ手段がないからなぁ。


 しかし、美少女に囲まれながら剣と魔法の世界で冒険者ギルドに殴り込み無双する…まさに男の夢とロマンがこれでもかというほど詰め込まれた展開だ!!

 楽しい、楽しすぎる!!

 早く冒険者ギルドに登録してクエストを受けたいぞ!!


「食べ物も一杯貰えて良かったね。これだけあればお子ちゃま軍団もお腹一杯食べられるよね。」

「そうね、みんな大喜びよ。」


 ワカナが言うように馬車には食糧がこれでもかと乗せられている。たしかラグさんの家には子供が5人いたが、家族7人で食べても悠々1ヶ月は持つだろう。

 村の人達は毛皮は加工し、キノコや薬草や香油はそのまま町の市場に持っていき主に塩や酒、チーズなどの乳製品と交換すると言っていたが、ラクさんが直接市場に売りに出せば今馬車に積んでいる食糧の数倍のものが手に入るはずだ。まあそれはそれで余計な軋轢を生むことになりそうだから、一度村人を通す今のやり方がベターなんだろうな。

 ラグさんへの村人の対応が、亜人に対するものにしては思いのほか悪くなかったのは、やはり明確なメリットがあってこそなのは間違いない。

 利益ばかりを追求すると手痛いしっぺ返しを食うのは現実もこの世界も同じだ。


「でも、この食糧は私達だけじゃなくて村の皆にも分けるわ。もっと少なかったらウチだけで食べても良かったけど、これだけ多いと食べきれないしね。」

「なんで?村の人達いじわるするんでしょ?分けてあげる必要なんてないよ。」

「せっかく保存がきくのですから、将来に備えて備蓄されたほうが良いのではないですか。」

「バカね。ただでさえ人間に関わって煙たがられてるのに、利益を独占したらますます孤立するし、最悪交易の邪魔をされかねないでしょ。村で平和に暮らすための必要経費だと思うしかない。」


 ワカナとナナセの言葉にミカヅキが返す。


「ふふ、手厳しいわね。確かにそういう理由もあるかも。私達が嫌われるだけならいいけど、子ども達まで仲間はずれにされちゃ可哀想だもの。ただ、それだけでもないのよ。」


 ラグさんが続ける。


「私はね、村の皆が、いえ出来るなら私の村に関わる全員が幸せになって欲しいのよ。ほら、争いって不満があるから起きるわけでしょ?皆が幸せなら余計な諍いは起きないと思うの。うちの村だと食糧問題かしら。皆がお腹一杯食べられればギスギスした空気もなくなると思うし、私達の方法で手に入れた食べ物で幸せな気分になれば、きっと外の世界にも興味を持って、変わってくれると思うのよね。」

「楽観的で都合が良い考え。」


 ラグさんの言葉にミカヅキが水を差す。


「ミカヅキちゃん本当に厳しいわね…たしかに都合の良い考えだわ。でも私はあの村が結構好きなのよ、意外に思うかもしれないけど。だから飢えの辛さでお互いを憎しみあったり、家族や仲間ですら捨てるような姿は見たくないのよね。近隣の村との交易が本格化すれば飢えに苦しまずにすむわ。もう少しなの、もう少しで皆わかってくれると思う。」


 ラグさんの言葉には、どこか自分自身に言い聞かせるような響きがあった。

 たしかにミカヅキの言うようにラグさんの考えは都合が良いものだろう。交易を継続すれば供給過多になり相対的に値がさがる可能性もあるし、そもそも需要を満たせるだけ資源が続くかもわからない。森の奥の資源に価値がある事が分かれば、さらに人が森の奥深くまで侵入してくる事だってありえる。


 上手くいくかは半々…いやそれ以下かもしれない。

 しかし、現実世界で日々目的もなく漫然と生きていたオレにとっては、自分のため、家族のため、仲間のため、そして関わる人々すべての幸せを願い、何かを成し遂げようと懸命に生きるラグさんの姿は眩しすぎるものだった。


 オークの村に滞在するのも今日で最後だが、その僅かな時間だけでもラグさんのため協力したい、そう思える人徳…この場合はオーク徳か?そういったものがラグさんにはある気がする。

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