第二チェックポイント
森林を抜けると、数分も経たないうちに第二チェックポイントが見えてくる。
「兄さん、旭日の師団です」
どうやらまだチェックポイントをクリア出来ていないようだな。
最初の障害物が水だったことを考えると、次は火か………たとえ待ち受ける試練がどのような物であっても、オレ達は正義のためにまかり通る!!
「フォッフォッフォッフォッフォッ、第一の関門がお主たちの『力』を試すものだったが、第二の関門は『知』を試させてもらおう」
どこからともなく聞こえる奇傑皇の声。なんか昭和の視聴者参加型クイズ番組みたいなノリだな!!わざとらしく崖の上でお茶してるし!!
あれが奇傑皇の考えるイケてるボスキャラの在り方なのだろうか………でも確かにちょっとカッコいいかもしれなし。
そんなくだらないことを考えながら前方に視線を向けると、川にかかる橋の真ん中に位置するゲートが見える。
「なんだ、なんの障害物もないじゃないか、あの位置ならすぐに通れる…」
「バカ兄黙って、なにか書いている」
ミカヅキの言う通り、橋の脇に立て看板があり、そこにはこう書かれている。
『このはし、渡るべからず。※ゲートに触れたり、ゲートを動かしたり、橋を壊したりしたら失格だよ』
「橋を渡ることなくゲートを通過しろってこと?難問ね」
「ゲートの高さも戦車の車高ギリギリに設定されています。魔法で車体を浮かしてくぐるにしても、繊細で高度な技術と一発で失格になるプレッシャーに打ち勝つ胆力が必要になりますね。他に方法があるのでしょうか」
「こんなの無理ゲーだよ、絶対ムリだし、答え教えてもらうおうよ~」
妹達の言う通り、正攻法で通過するのは至難の業だろう。
しかし、これって、あの………例の『アレ』だよな。日本人であれば小さい時に一度は目にするだろうトンチというか、屁理屈というか、一休さん的なアレだよな?
「渡れないのであれば、渡らなければいい、それだけのことだ」
「ソレ、カイケツニ、ナッテナイ」
「キャハッ、あの朦朧ジジイぶっ殺して、その隙に渡っちゃえばいいんじゃない?」
「アタイも同感だね」
「ふんっ、お前たちはどう渡る、その軽薄な脳みそが、ひねり出した答えとやらを、見せてもらおうか」
「神のお導きのままに」
隣で同じく頭を悩ませている旭日の師団は、段々と考えることが面倒になってきているのか、それとも奇傑皇の相手をするのに飽き飽きしているのか、明らかにオレ達待ちの状況だ。
ここにいる人間のなかで答えに辿り着いているのはオレだけというわけか………みすみす敵に塩を送るようで癪だが、後続に追いつかれる前にサッサと渡ってしまおう。
オレはサイラスに耳打ちをすると、妹達を見据えニヒルな笑みを浮かべる。
「ナナセ、ミカヅキ、ワカナ、これが答えだ!!」
オレが言葉に呼応するように戦車がゆっくりと動き出す。
「はあっ?橋を渡るなって言ってるのになに堂々と進んでるの!?」
「甘いな、ミカヅキ、発想を逆転させるんだ!!ルールはあくまで『このはし、渡るべからず』。つまり、橋の端をではなく、橋の真ん中を渡ることは許されているんだ!!そうだろう奇傑皇!!」
オレは車体の縁に足をかけ、崖の上の奇傑皇に向け言い放つ。
決まった、完璧すぎるほど決まった。
勝利を収めた英雄が凱旋門をくぐるが如く堂々とゲートを通過する戦車、崖の上から余裕の表情で見下ろす悪役、それに宣戦布告する主人公、完璧な構図だ。
これだ、このベタベタな展開を求めていたんだろう、奇傑皇!!!!!




