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いもうと無双は異世界転生と共に〜38才こどおじの異世界英雄譚〜  作者: 蒼い月
王女と人狼

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王位継承権

 リーゼロッテ様を制したのは国王陛下の弟、ノーチェス侯ティベリウス・フェリックス・ウィプサニア。リーゼロッテ様、そしてネロの叔父にあたる人物だ。


 リーゼロッテ様のお父上であられる現国王スッラ・ユリウス・カエサル・ケルキア様とは30近く年の離れた異母兄弟で、母の身分が低いこともあり幼少期は辺境の貴族に預けられていたという。

 そんな弟を不憫に思った国王陛下が即位後に王都に呼び寄せ、所領を与えノーチェス侯爵位に封じたのだ。


 性格は冷酷にして狡猾との噂だが、政治的な手腕に優れており、中でも王宮における権謀術数においては並ぶものが無いと口さがない貴族たちから揶揄されている。しかし、ライバルと目される人物が次々と失脚、もしくは不審死を遂げ、それに反比例する形で彼の影響力が大きくなっていったのだから、陰口をたたかれる程度で済んでいるのが不思議だというものだ。

 そのようなこともあり、ティベリウス候は今では病床の国王陛下になりかわり国政を一手に担っていると言われている。


 ティベリウス候は女性のように繊細な美貌を持ち王宮の侍女などからは、『辺境の王』という際どい二つ名で呼ばれているグレンツァ・アウフシュテルン・インゼル侯爵や『教皇の特別な寵愛を受けし者』という不名誉な噂をたてられているパナメーラ大神官とともに『三美貴』などと持て囃されているらしい。


 抜きんでた美貌は、とかく凡夫のいらざる詮索と下卑た妄想の的になるのが世の常なのだろう。

 しかし、アタシなどから見れば、その薄笑いが癪に触ってしょうがない。これも凡夫の嫉妬なのだろうか。


「では、改めてご挨拶を。本日のホストを務めさせて頂きますティベリウス・フェリックス・ウィプサニアと申します。本日は私の招待に応じて頂き感謝いたします。竜燐の騎士殿とは初めてお会いいたしますね。同じく国の未来を憂うものとして、幾久しく御交誼を賜りますよう伏してお願い申し上げます。たいしたおもてなしは出来ませんが、心ゆくまでお楽しみください」


 そんなアタシの心を見透かすように、王弟は慇懃無礼な態度で食事を勧める。


「ふんっ、人狼のまえで食事をすることになるとは、誇り高きケルキア王家も地に落ちたものだな。そうだ、竜燐の騎士よ、この宝剣を貸してやろう。人狼といえば騎士に刻まれるのがお決まりの英雄譚。お前の武勇伝に一小節書き加えてやる。嬉しいだろう、王宮内での人狼退治。観衆は王族、手にするは宝剣。斬り殺す相手が駄犬というのがやや面白みにかけるが、詩人にもウケる物語だ。我ながら天才だな!!褒美は弾むぞ、ハッハッハッハッ!!!!」


 凍り付いた空気のなか、抑制の効かない馬鹿笑いだけがこだまする。


 やはりアタシが来て正解だった。

 ネロ、いや、このバカはアタシがいるだけで、自らの言動で自らの評判を勝手に地に落としてくれるのだ。


 現在ケルキア王国には3人の王位継承者がいる。

 第一王位継承者であるリーゼロッテ様、第二王位継承者であるネロ、そして第三王位継承者である王弟ティベリウス候。

 しかし、この王位継承順というのは曖昧であり、絶対な物ではない。


 200年にわたる歴史を持つケルキヤ王国において、正統なる王位継承者は『王の実子にして直系男子』と定められている。


 もちろん王が必ずしも実子に恵まれるわけではなく、また無事に子を授かったとしても女子に偏ることもあるため、常にこの慣例に基づき王位が継承されてきたわけではないが、直系男子がいない場合は誰を次の王とするかで、有力貴族も含め水面下で暗闘が繰り広げられるのもまた慣例となっている。


 そんな不名誉な慣例が支配する王位継承レースにおいて、リーゼロッテ様の地盤は脆く、その立場は水面に揺れる笹船のように不安定だ。


 まだ14歳という若さ、いや王という重責を担う事を考えれば『幼さ』とも取られかねない年齢であり、成人前であることから、自らの領土も有してはいない。

 現王の唯一の実子であるため、暫定的に第一王位継承者となっているが、王位継承に必要とされるケルキヤ王家伝来の3つの秘宝も継承されておらず、母君も市井の生まれでリーゼロッテ様が幼少の頃に亡くなられているため後ろ盾もない。


 ただ国王陛下の愛と信頼だけが頼りという心細い状況なのだ。

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