シュトライトヴァーゲンブルグ
「わぁ、すごーい!!ここが………なんとかブルグ??」
「シュトライトヴァーゲンブルグ!!でもワカナが驚くのも納得の規模ね。ここまで高い石組の城壁を見たのは初めてかも」
「これだけ大きい都市なら宿も料理も期待できそうだね~。お風呂、お風呂っ」
「ギルドで受けられる依頼の量もエルベスとは段違いでしょうね。楽しめそうだわ」
妹達が一斉に感嘆の声をあげる。
それもそのはずだ。ケルキア王国で五指に数えられる大都市シュトライトヴァーゲンブルグは、まさに中世ヨーロッパの城塞都市を彷彿とさせる堅牢な出で立ちで、高さが優に10メートルを超えているだろう数キロにわたる城壁は、鎧のように都市をすっぽりと包み込んでいる。
鉄板や鋲によって補強された城門はトロールであっても悠々と通過できるほど大きく、並の攻城兵器ではこゆるぎもしないだろう。城門には数十名の衛士が詰めていて、門をくぐる旅人の通行許可証を確認したり、馬車の荷物をチェックしている。
「想像以上に栄えてるな。とにかく中に入って宿を取ろう」
オレ達はエルベスの発行してもらった通行許可証を提示し城門をくぐると、そのまま都市の中心部を目指し歩を進めた。
目抜き通りは石畳で舗装され、両脇には3~4階建ての建物が所狭しと立ち並んでいる。建築物の外観や高さが一定の規則性を保っているのは、何らかの規制がなされているためだろうか。統一性があって美しい街並みだ。
「兄さん、冒険者ギルドはここからしばらく奥に行ったところにあるようです。今日は着いたばかりですし、冒険者登録は私一人で大丈夫ですので、兄さん達はのんびり散策でもしてきてください」
「さんせーい!!すっごい色んなお店あるし、ワカナ色々見てくるね~」
「持ち合わせがないのに品物みてどうするつもり?ミッドガルドの通貨を使うのだけは止めなさいよ。とは言っても、これだけの広さの都市だと位置関係を把握するだけでも一苦労だし、興味のある店を回りながら頭に叩き込むのも悪くないかも」
「ウィンドウショッピングしながら将来何を買うか考えるだけでも楽しいしね。出世払いってことで片っ端から買いこんじゃうのもありかもしれないし」
「しばらくはここを拠点にするつもりなんだから、厄介事を起こすのは止めなさい!!」
「じゃあ、一度ここで解散しよう。待ち合わせは………そうだな、あの教会の前に正午くらいでいいか?」
オレの言葉に妹達は頷く。
「兄様はどこに行かれるんですか?」
「当面泊まれないとは思うが、宿を見て回ろうと思ってる。サヤじゃないが、イメージトレーニングみたいなものだな」
「それなら、私もご一緒してもよいですか?これだけの大都市になると危険も多いかもしれませんし、お供させてください」
「アツコがいてくれると心強いな。よし、ブラブラ散策しながら宿を探すか」




