ポンコツ蒟蒻店長
「そんなすぐお金貯まるわけないじゃん。おーぼーだー、どくさいしゃだー、はつじょうエルフだ~!!」
「だからそれ止めなさい!!」
ミカヅキが顔を真っ赤にして怒る。
ワカナの言葉に反応しているというよりかは、オレ達の金銭感覚が緩すぎることに腹を立てているんだろうな…。
「ずっと野宿じゃお肌に悪いよ。お兄ちゃんも嫌だよね?」
「そうよ、良い仕事をするためには心身を万全にする必要があるでしょ。ただ切りつめればいいってわけじゃないわ」
「でも、お金がないのは確かだよね。お金がないとギャンブルで増やすわけにもいかないし、ある程度貯まるまで我慢するのも大切なのかも。兄さんはどう思われますか?」
このタイミングでオレ!?
ミッドガルドに散財しまくってきたオレとしては、徹底した節約生活には忌避感があるが、ここでアツコ側に加勢するとミカヅキが孤立しかねないからな………ミカヅキの発言がオレ達の今後のことを思ってのものなのも確かだし、ここはミカヅキの顔を立てよう。
「緊縮財政は辛いが、ミカヅキの言うように安定した生活基盤を整えるのは最重要事項だからな。しばらくは冒険者ギルドで依頼を受けながら、安宿でなるべく無駄遣いしないように過ごそう。金が貯まってきたら風呂付の宿に移ればいいわけだしな」
我ながら皆の意見をまとめたいい調整案だ。ポンコツ蒟蒻店長としてバイトの子達から慕われていたオレの面目躍如だな。
「なんか中途半端~、それだとデザートビュッフェいつまでも食べられないよ~」
「お兄ちゃんらしい優しい意見だね。現実的だけど誰の希望も叶わないところが玉に瑕かな~」
「ちょっと貯まったところで大勝負しましょう、兄さん。そうすれば皆満足です!!」
「賭けに勝てればでしょ、負けたらどうするの!!大体安宿に泊まるお金はどこから出てきたの、私にはないけど」
うう、なんかメチャクチャ評判が悪い………そんなにダメだったか?
「兄様は貴方達全員の顔を立てて下さったのよ、まずはその優しさに感謝しなさい」
落ち込むオレを見かねたのか、アツコが妹達を諭してくれる。しかし、その口調は出来ない子をフォローする先生のようで、優しさが余計に辛かったりする………。
「それにお金ならあるわよ」
そう、お金ならあるんだ。
お金ならある。
………………え、あるの、金!?いったいどこに!!??
「どこにあるの。ちなみにミッドガルドの物を使うのは厳禁だから」
「ここよ」
アツコは革袋を取り出し、ポイっとミカヅキに投げる。
「なにこれ。ちょっと待ちなさい………はぁ!?金貨換算で100枚以上あるじゃない!!こんな大金どこで手に入れたの!?」
「拾ったの」
「拾った!?どこで?」
オレとミカヅキの声がシンクロする。
「神様のお導きってやつじゃない?詳しくは聞かない方がいいと思うな~。そんなことより、ミカヅキちゃん待望のお金がこんなにたくさん手に入ったんだし、素敵な宿を探そうよ」
「さんせ~い!!ビュッフェ、ビュッフェ!!」
「サヤとワカナは黙ってて!!アツコ、どこで拾ったの?」




