決着の刻
「気持ち…いいですか?」
オレは無言でコクリと頷く。
ここで耐えきれば『アツコ色仕掛け作戦』は失敗に終わり、妹達のオレへの信頼は鰻のぼりだ。いや、もうウナギライジングだ!!
徐々にストロークが早くなり、思わず呼気が漏れる。確実に………確実に最後の刻が近づきつつある!!
「最後はコレで………」
不意にマッサージを受けている部分が温かい感触に包まれる。湿り気を帯び、溶けるように温かく、とても心地よい感触。
そう、生まれて初めての感触。
あ、これは負けるかも、もうダメかも。いや、むしろ負けて本望かもしれない。
というか、もう負けたいけど、いいかな………いいよね!?
「バカ兄いる!?アツコが見当たらないんだけど、一緒??」
楽園で放心状態となっていたオレの鼓膜に、ミカヅキの怒鳴り声のような問いかけが響きわたる。
「あ、ああ、少し待っててくれ!!いま、立て込んでるんだ!!」
「邪魔が入っちゃいましたね、続きはまた今度」
オレがしどろもどろになりながら答えると、アツコはそう言ってオレの衣服をただし、顔にかけた布を取る。アツコが満面の笑みを浮かべると、その口の端には光る物が見えた。
「ここにいるわよ、兄様と明日以降の計画について話してたところ。今行くから部屋で待ってて」
………助かったのか?
残念ではあるが、紳士的な態度を崩さず耐えきったということは『アツコ色仕掛け作戦』に負けなかったと言えるのではないだろうか!!
偉い、偉いぞ、オレ!!!!!
「兄様、今日はいかがでしたか?」
「ああ、その………とても良かったな。お互い『マッサージ』で身体を癒せたしな。『マッサージ』をしあうのも悪くないな」
「あの、上手くできていたでしょうか?」
「ああ、最高だったぞ!!特に足をほぐすテクニックはプロ以上だった。立ち仕事で疲れた身体をマッサージで復活させるべく、週1ペースで『てもみん』に通ってたオレが言うんだから、間違いない!!」
オレはなるべく会話がそっち方面にいかないよう『マッサージ』に重点を置く。そう、今日のは全面的にマッサージだったからな。健全さマックスだ。
「また、お部屋にうかがってもよろしいですか?私も兄様にまた『マッサージ』をして頂きたいですし」
「んっ?…ああ、もちろんだ!!」
「何回でもよろしいですか?」
「ああ、何回だってお願いしたいさ」
「ありがとうございます、それではまた日を改めて伺いますね。それでは、私は妹達のところに戻ります」
嵐のような時間が過ぎ去り、部屋にはアツコの残り香と、膨張した身体の火照りだけが残っていた………やっぱりオレの負けだな。




