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呪厄令嬢は幸運王子の【お守り】です!〜外堀陥没で溺愛ルートのできあがり〜  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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療養中

 

「けほ、けほっ」

「ま、まあ! お嬢様、そろそろお休みになってください」

「でも、まだお手紙を書き終わっていないから……」


 私がお手紙をサボったら、イングリスト様が寂しい思いをされるかもしれない——なんて、思い上がりも甚だしいかもしれないけれど。

 せめて一枚書き終わるまでは……。


「っ……」

「お嬢様!?」


 眩暈がして、危うくインクをベッドの上でこぼしそうになってしまった。

 すぐさまノリガがインクと羽ペンを私から取りあげ、書きかけの手紙はミリィが非難させてくれたから無事。

 さすが、長年私の呪いに対応してきてくれただけはある。


「お嬢様、もうお休みください!」

「過労にはしっかりとした休息が必要ですわ」

「……でも、私……もう三日も淑女教育や妃教育を休んでいるし……イングリスト様への手紙までサボるわけには……」

「いけません! ローズレッグ様からもお嬢様は女神様との戦いで、強い魔術をいくつも受けたからくれぐれもゆっくり休ませるよう仰せつかっております!」

「うぐぅ」

「それにお嬢様が女神様より授かった『賢者』の祝福は、国内外でも例がありません。お嬢様がイングリスト様の婚約者を継続となったのは、その祝福のおかげでもあるのですよ。しっかりとその祝福を受けたお子をお産みになれるよう、お身体は大切になさってください!」

「そうです! 国王陛下やお妃様からも絶対死守と仰せつかっております!」

「うううう」


 ——ということも理由らしい。

 私が女神フリーデ様に与えていただいた祝福、『賢者』。

 未だかつて、それこそこの国だけでなく他国でも例を見ない新種の祝福。

 その名前から魔術に特化した祝福なのではないかと、最近他国からも問い合わせが来ているらしい。

 呪いもなくなり、イングリスト様の婚約者を解消するのであればぜひ我が家に嫁いできてはくれないか、という縁談話が実家に殺到しているという話も父からの手紙で知った。

 あまりに実感がなさすぎて、「へえ、そうなんだぁ」としか思わないのだけれど。

 でもそんな新種の祝福を国王陛下が手放すわけなかろう、と力説なさり、私とイングリスト様の婚約続行を確固たるものにしたとかなんとか。

 祝福は自分ではなく、その子に与えられるもの。

 つまり、私の産む子どもだ。

 一度祝福を与えられた親を持つ子は、一番初めに生まれてくる子どもにその名称の祝福をそのまま授かる。

 私が産んだ最初の子が、その『賢者』となるのだ。

 二人目、三人目にも『賢者』に準ずる祝福が発現する。

 イングリスト様は次男だけれど、国王陛下は試練をスティーラ様が二人目を妊娠したとわかるやいなや、再び試練に挑んで祝福を得たというから驚きだ。

 妻の無事の出産と我が子への祝福を得るために、あの過酷な試練に再び挑むなんて……。

 国王陛下は本当に家族思いな方である。


「少し横になって、体調がよくなったらお手紙を書けばいいのです」

「……わかりました。そうします。イングリスト様には、どうか私の心配はなさらないで、と伝えてください……」

「多分無理だと思いますけど……そう伝えますね」

「はい」


 イングリスト様、私が体調不良になったことを気にしておられないといいな。

 私の体調不良はただの過労。

 あなたの祝福のせいではないのです。

 早く元気になって、イングリスト様と一緒にナジェララ様のところへ行かないと。

 ナジェララ様のところへ行ってイングリスト様に呪いをかけてもらえば、イングリスト様は自由になれる。

 サイドテーブルも没収されて、横たえらた私に毛布が被せられた。

 ずるりと意識が沈んでいく。

 こんなに、疲れていたなん、て……。




 ***



 それからどれほど眠っていたのだろう。


「……きなさい——……きろ! おいこら!」

「ふぁ……」

「やっと起きたわね! いつまで待たせるのよ!」

「ナ、ナジェララ様……!」


 目の前にはナジェララ様が浮いておられる!

 起き上がって辺りを見回すと、夜?

 カーテンは閉められているし、天蓋も閉じられていた。

 天蓋の外にランプが弱めにつけられているけれど、それ以外の明かりはない。


「けほっ、けほっ!」

「……! あらやだ、体調悪いの?」

「も、申し訳ありません……過労のようだと、お医者様に言われました……。それで、大事を取ってなかなかお伺いできなくて……けほっ」

「ああ、なるほどね。人間の小娘にあの試練はきついものね。いくらあたしの魔術でサポートしてても、アンタが雷撃喰らったのもマジだし」

「申し訳ございません……」


 ああ、やはり待ちきれずに来てしまわれた。

 本当に申し訳ない。

 こうなる前に会いに行きたかったのに……。


「イングリスト様にも、きっと私の体調はご自分の祝福のせいだと思われてしまいますから……早くよくなりたいのですが……」

「…………。はぁ! 仕方ないわねぇ」


 そう言って、ナジェララ様があのセクシーな衣装から突然可愛らしいパジャマ姿になる。

 理解が追いつかない。

 なぜ、パジャマに?

 と、頭に疑問符を浮かべていたらぼふん、と私の横にナジェララ様が横たわる。


「ええええ?」

「ほら、寝るわよ。明日の朝、あたしも一緒に王子のところに行って呪いをかけてやるわ」

「え、ほ、本当ですかっ」

「本当よ。だから寝るわよ」

「は、はい!」


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