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萌える日

今日もいい天気だな。

駅からの街路樹の道、一番好きな道だ。


「おはよー」

「おはよ、たまきー、遅刻するよー」


環、私の名前だ。

自転車に乗って登校する友人にすれ違い様に声を掛けられる。

この道で良く会う丸々と太った野良猫も大あくびをしながらこちらをチラリと見てきたので元気よく声を掛ける。


「モッチ、今日ももちもちだね」


モッチはニャアと一鳴きしたあとに、テクテクと歩いていく。

その様子を笑顔で見ながら学校を目指す。

街路樹を抜け、この交差点を渡ればもう少しだ。

ふと足元を見ると虫がいた、それを確認した私は横にずれる。


「わぁぁ」


そんな声が聞こえたと思ったら後ろから衝撃がきた。


「いたた」

「ごめん、大丈夫かな」

「大丈夫なわけな、、、」


腰を抑えながら相手を見る、めちゃかわいい顔の女の子だった。


「ごめんね、走ってたら急に前に来たから」


伏し目がちに申し訳なさそうな表情、今にも涙がこぼれそうな大きな瞳。


「全然元気よ、マッサージかと思ったもの」


立ち上がると同時に腰に手をあてながら私はそう答えた。

泣かせてはいけない。そう思った。


「そ、そう?ほんとにごめんね」


彼女ははにかんだ笑顔でそういった。

口元には八重歯がきらりと光る。

ショートボブの髪の毛はサラサラと音が鳴るようだ。

付け加えると朝日が路面の水溜りに反射し、彼女に後光が射している。


「ま、まぶ、か、かわい…」


私は不意に意識が飛びそうになった。

クラッてしてしまうってこういうことを言うんだろう。


「あ、血が出てるよ!」

「え!」


彼女から驚きの声が聞こえたので目線を追って下を見るとワイシャツに赤い染みができていた。

どこかケガを・・・血が出ているところを急いで探す。

身体、腕、足、と確認しながら下を向いた時に地面にポタリと血痕が。


あ、私の鼻血だ。


「あ、頭でも打ったかな、あはは」

「え、本当に大丈夫?」


彼女は右手を私の左手に絡ませ、自身の左手で私の頭を撫でてくる。


「あっふ」

「わ、鼻血がもっと出てきた」

「だだだ大丈夫だから!上向いてれば止まるから」

「そんなボクのせいなのに」

「大丈夫大丈夫、私は冷静よ。遅刻しちゃうし、学校に向かいましょう」


なんてこと、ボクっこ…同じ制服だし、こんな子が同じ学校にいたら私が覚えてないはずがない。

彼女と歩きながら鞄から出したポケットティッシュをちぎり、鼻に詰める。


「て、転校生かしら??」


そして鼻から白い布を見せながら質問をする私。


「すごいね、今日転校してきたんだよ」


かわいい子は輝く笑顔を見せながら答える。

やはり転校生か、これが素なら仲良くなれるだろうし、ぜひ仲良くしたい。


そんなことを考えていると、彼女の左斜め後ろあたりにトラックが見えた。

黄色信号になった交差点をスピードが上がった状態で右折してきたのだ。

そしてトラックの前に飛び出した猫、モッチが目に入る。

それに気づいたのかハンドルを思いっきり切りつつ、驚いている女性の運転手が見えた。

そのままトラックはゆっくりとこちらに向かってくる。

まばゆい笑顔のボクっこの彼女、鼻に詰め物をしながら驚いてる私。

キーーーー!ドカ!


「はい、これが亡くなる直前の出来事だよ」

「事故死、ね」


事故前の記憶が無くなるって聞いたことがあるけど、本当だったみたい。

ショックだからか、記憶領域の欠損なのか。

ボクっこに萌えてしまった羞恥心から来る記憶の封印ではないはず。


「え、私だけがここに?あのボクっこは・・・」

「あー、僕とは違う担当になっちゃったんだ」

「担当って、同じ世界にいけるの??」

「そうそう、君たちは同じ世界に行けるよ、だから気にせずにいこう」


ヲタク神は暑いのか、額に汗をかきながら早口で話す。


「なんか嫌な感じね、でも担当ってことはちゃんと転生はするのね」

「そうそう、さ、こっちの転生の件に移ろう」


本題が出てきたので気分を切り替える。

両手を腰にあて、ヲタク神を上から見下ろす私。


「私はどんな星に行けて、どんなスキルを貰えるのかしら?」

「飲み込みが早すぎるよ、転生後の人間を地球に再転生してからおかしな話が広まってるって聞いたけどほんとみたいだね」


ヲタク神はうんうんと一人頷いている。


「で、どうなの?」

「あ、星はね、地球で言うところの西暦1000~1200年ぐらいの文明力かな、あと魔法と魔物がいる」

「うんうん、その世界感よね!公爵令嬢かお姫様でいいわよ、もしくは大商人の娘!」

「あっと、、、それなんだけど、君は劇団の団長の元に生まれる予定なんだ」

「え…劇団…?」

「それでね、転生時に授けられる能力、スキルの数は限られていて、この中から選んでほしい」


そういうと私の目の前に透明なディスプレイのような物が現れ、文字が羅列される。


「言語理解、体力増加、魔力増加、テンプレから見たことないものまであるし、いいわね。それで数が限られてるっていくつなの?」

「転生で授けられるスキルは基本から3つ、応用から3つの合計6つかな」

「わかったわ、色々と話を聞いてからでもいいかしら」

「もちろんだよ」

「それとおまけとかないの?」

「転生スキルは6つ以内って決まりがあるから難しいけど、神の加護が付与されるのと何か質問があれば答えるよ」


そういわれたので私はラノベやアニメなど前世の知識をフル活用して、思い出せる限りの質問をした。

スキル、ステータスの成長要因、生まれる国、その星の情勢。

そのあとにスキルを選ぶ、ヲタク神が不思議がっているものと深く頷いているもの、色々だ。


「それじゃ、これでいいかな」


ヲタク神は横ピースポーズで目をパチクリさせている、きもい。


「えぇ、あ、そういえば私は転生したあと何をすればいいのかしら?」

「当面は自由に生きてていいよ、あ、でも出来ることなら前世で好きだったことを転生先で流行らせてほしいかな、それじゃ萌えて燃えてきてね」

「なにその言い方、何かあるのかなって思うじゃない」

「気にしない気にしない、君が取ったスキルも面白いし、楽しみに見てるよ。あ、他の神には負けないようにしてね」

「ちょ、他の神に負けないって、絶対それ大j…」


言い切る前にヲタク神は消えた、というか私が消えた。

そして私は転生した。


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