決戦?
呼ばれたからには無視は良くないと来てみたが、何の要件なのだろう。
「どうしたの?クリス」
「ちょっとね…。君の話を聞こうと思って。」
「話?話なんて特にないけれど…。」
意味がわからず首を傾げる。すると、
「君はシアリカに無理矢理友達でいるよう言われていたんだろう?」
また意味がわからないことをクリスは言い出した。
「何でそんな、意味が分からないことを言うの?」
私が疑問をそのまま口に出す。
「何でって?君が無理矢理、シアリカの友達に虐められている所を見たよ。」
シアリカの友達。その言葉に驚く。恐らくクリスが言っているのは、私を虐めていた女生徒のことだろう。だけれど、シアリカはいつも私を助けてくれていた。クリスが駆けつけることの出来ない時だって。だから、彼女達とシアリカは、
「私を虐めてきた女生徒とシアリカは関係ありません。クリス。」
私の言葉を聞いたクリスは鼻で笑った。
「きっと君は知らないんだろう。シアリカが全て裏で糸を引いていたんだ。」
「そんなわけないです。」
私はシアリカを信じている。
「実際は王妃になるための全て、演技だったんだよ。」
クリスは優しく言う。まるで諭すように。それでも…。
「シアリカは私の親友です。また傷つけるような事を言わないでください。」
クリスは私の言葉を聞くと
「まぁ信じたいなら信じればいいよ。ただ…。」
そこでクリスは一旦、言葉をきる。
「利用されるだけだよ。」
クリスはそれだけ言うと踵を返して行った。
「違うわ。絶対に…。」
だって…。シアリカは友達が出来たと心から喜んでいるようだった…。
私の呟きは1人残されたこのカフェテリアに響いていったのだった。
欠伸をしながら起き上がる。昨夜はあまり眠れず、寝不足だ。
「寝不足ですか?」
侍女のユーリナが心配してくれる。
「ええ。少しね…。でも、大丈夫よ。」
「そうですか…。でも、今日は休日ですし!ゆっくりしましょう!」
「リーナ様、第一会場にお越しください。」
身支度も終えた頃、騎士の様な、男性の声が聞こえてきた。
「わかりました。」
なんの事かは分からないが、全部屋を回っているような足音が何個も聞こえてくるので、行ってみる方がいいだろう。そろそろ卒業だ。その事についてかもしれない。やはり、寮のみんなも呼ばれていたみたいで、会場へと向かう廊下は人で混んでいた。
「どうしたのかしらね?」
「卒業式の打ち合わせかしら?」
「でも休日よ?」
所々で人の話し声が聞こえてくる。中には私と同じように卒業式の打ち合わせかと言っている人もいる。
辺りを見渡してみると、どうやら、私たち上級生しか呼ばれていないようだ。振り返ってみると、寮の扉を開けて顔を覗かせている1年生もいた。
「どうしたのかしら?」
その1年生も疑問を口にしている。
会場に入ると、椅子が均等に並べられていて皆入ってきた順番で座っているようだ。
私も座ると、会場のステージから声が聞こえてくる。
私の座った席は後ろの方だったので、少し背伸びをしてみるとクリスがステージ上にいた。
「皆さん。今日は重要な話があり、お集まりいただきました。」
重要という言葉に周りがざわつく。私はその言葉に昨日のクリスとの会話から、嫌な予感がよぎる。
「リーナは、シアリカに本当に虐められていたのです。」
その予感は当たった。もうそんなことはどうでもいいのだが、クリスがしつこい。
「シアリカ様、あんなに、リーナさんと仲良さそうに話していたのに?いつも一緒にいたじゃない。」
そのような言葉が会場中に広がる。
「シアリカが指示して虐めさせていたのです。虐めていた人はグリス・ローレン男爵令嬢、カダリタ・ルローゼ子爵令嬢など他2人です。」
その言葉に再度ざわめきが起きる。
「ローレン男爵家って商売上手で有名の…。王族御用達じゃなかったっけ?」
「しかも、ルーロゼ子爵家って繰り上がってきたリーナ様を恨んでいたって…。」
そんな声が聞こえてくる。それと、
「出鱈目な…。」
そう呟いている声も聞こえる。そんな中、一際大きい声で
「シアリカは彼女等との交友関係があったのです。証拠もありますよ。」
クリスがそんなことを言う。
「し…。証拠があっ、あるなら言ってみなさいよ。」
シアリカが抗議をする。
「酷い慌てようですね。まるで、図星をつかれたようですよ。まぁ。いいでしょう証拠を映します。」
すると、白い幕のようなものが降りてきて、そこにひとつの写真が映し出された。
「え…。」
驚きの声が所々で聞こえてくる。
「この写真は十分証拠になり得る。」
そう。写真にはシアリカとグリス男爵令嬢達が映っていた。その姿はまるで仲良く話しているようだった。
「ち…。違いますわ。私は…ただ…。」
「ほら。狼狽えていますでしょう。これも証拠です。」
クリスの言葉に泣き声が聞こえてきた。驚いてその声の方を見ると、シアリカが目に大粒の涙をうかべ、泣いていた。
その光景を見た瞬間、私の怒りは暴発した。
「クリス。嘘をつくのはやめなさい。」
私のいつになくきつい言い方にクリスは驚いた表情をしたあと、
「言わされているのでしょう。」
と素っ頓狂な意味のわからない言葉を告げる。
「は?」
思わず、変な声が出た。
「意味が分からないな。私は実際、シアリカは疑ってもいないし虐められてもいない。なぜそう思ったんだろうな。」
怒りで口調が荒くなる。
「…。えっでも…。」
クリスがなんだか驚いている。こんなに私が怒るのは初めてだからだろう。
「それに、その写真だって、なにか理由があって会っていたのでは?それも聞かずに証拠、証拠と。正直言って…。」
そこで言葉をきって、
「うざいです。」
その言葉を言ったあと、私は少しスッキリした。
「すっきりです!」
思わず言葉を漏らしてしまうと、会場中に笑いが起こった。
「あはは!そうだね。」
「そうだな。」
ふと会場のステージに目をやると、クリスが顔を真っ赤にさせて怒っていた。
その瞬間ある考えがよぎる。これはもしや…。不敬罪と言うやつに当たるのでは?と。
「やば…。い」
私が焦っていると、ふたつの足音が近ずいてきた。
「聞かせてもらったぞ。クリス。」
近ずいてきたのは…。