翌日の朝 閑話
走り去ってしまったシアリカの後を追うかと教室の入り口の前で考えていると、私の後ろから声が聞こえた。
「リーナさん凄いわね」
その後から私への賞賛の声が上がった。
「凄いね!シアリカ様は悪くないのにそう言っていたクリス様が悪いんだよ。」
それからはクリスへの罵倒などの声に変わっていった。
「皆さん。私の言葉を信じてくれて、ありがとうございます。」
感謝の気持ちを伝えると、皆さんは
「いいんだ。」
「こちらこそ。私たちは何も出来ていなかったのに、見ていただけだったわ。」
「いいえ。私の言葉を信じてくれただけで充分です。」
私が皆さんが自分を責め始めてしまったから、急いで言葉を返すと皆さんは微笑んでくれた。
翌日。休日だった為と、昨日は色々とあったので、疲れてぐっすり眠ってしまっていた。
時刻は9時に回っていた。
「眠い…。」
そう意味もなく呟いたあと、声が聞こえてきたのか、ドアをノックして、ユーリナが入ってきた。
「起きましたか?リーナ様。」
「うん。昨日は疲れちゃって…。」
「噂は聞きました。大変ですね。」
ユーリナは眉を下げ、その後はリーナの髪をゆったりとしてくれた。
「朝食に行きましょうか。」
「うん。そうね。」
ユーリナと2人、教室の少し行ったところにある場所だ。
食堂へ行くと、少しだけ人がいて、私はあまり人がいないので、 今日はユーリナと食事を食べることにしようと、質問するとにした。
「ねぇ。ユーリナ。今日はあまり人がいないし、一緒に朝食を食べない?もしかして、もう食べてしまったかしら?」
「いいえ!私はまだでございます。ご一緒しても宜しいのですか?」
すると、ユーリナは目を輝かせて、
「ええ!もちろんよ。」
と言ってくれた。私たち2人は同じものを頼んで、一緒の席で食べることにした。
「でね…。」
と、2人で楽しくユーリナと話していると、カタンと朝食のトレーを置く音が聞こえてきた。
音が聞こえてきた方向を見ると、シアリカがいた。
「シアリカ…。」
「親友…。なんでしょ。これくらいいじゃない。」
親友…。シアリカから告げられたその言葉に私はなんだか、胸がいっぱいになった。なんだかツンデレみたいだなとは思いながらも笑ってしまう。
「そうね。私たちは、親友ね。」
認めてくれて嬉しい。そんな気持ちは伝えるのが恥ずかしくて言えなかった。だけれど、私達は親友。その事実は変わらないのだから。
その後私たち3人は一緒に楽しく食事を食べたのだった。
「なんでだ!」
寮の部屋に戻った俺は独りごちる。なんでなんだ。その疑問しか俺には浮かばない。
「リーナは俺が好きだったはずだ。だって…。俺と話している時はいつも笑顔で…。」
そこまで考えて更に怒りが増し、俺はベットの上の枕を叩きつけた。それでも怒りは収まらない。なんで?その言葉と怒りしか頭には浮かんでこない。そこで部屋からノックの音が響いた。
「入れ。」
いつもより不機嫌な俺の声に驚いたのか、部屋に入ってきたメイドはいつもよりたどたどしい足取りで部屋の前に来て、
「どうしたのでしょうか。声が聞こえてきましたので…。」
「シアリカが誑かしたんだ。」
「はい?」
俺の突然の言葉にメイドは素っ頓狂な声を上げた。
「許さない…。どん底に突き落としてやる。」
そこでやっと俺が怒っているのを感じ取ったのか、メイドは慌てて
「すいません。なんでもありません。」
と言って部屋を後にした。そんなメイドに舌打ちして決意を新たにする。
「絶対に許さない。俺が受けたこの苦しみをお前にも味あわせてやる。」
月の見える窓の下で、俺は決意を新たに眠りについたのだった。