学園への道を
このセリフがシナリオだとわかった私は、王子の従者との会話を聞いておくことにした。
「王子殿下がですか.......。狭いところですがよろしければ。」
「はい!ありがとうございます。」
しばらくすると会話が終わったようで、カテリアが、こちらへ向かってきて、
「使っていない部屋が2部屋あったわよね。そこを片付けてきてちょうだい。」
と、言われた。そして、アサールと、ルーナと、空いている部屋の片付けをすることになった。
小説だったとしても、部屋の位置までは、正確に表されておらず、場所がわからなかったので、先をゆくアサール達の後を着いていくことにした。少しだけ歩くと、そこまで汚れてはいないが、蜘蛛の巣などがある部屋に着いた。同じような部屋が二部屋並んでいて、そのふたつの部屋を掃除するようだ。「僕とルーナが右の部屋で姉さんは、左の部屋ね!」
アザールが元気にそう言って、部屋の掃除を始めた。部屋の汚れは少なく、あっという間に掃除は終わり、王子殿下と、従者の人などを迎えることが出来た。
カテリアは、突然の王族の訪問だったため、あまり、王族を迎えるには、食材などが足りなかったため、掃除をしている間に、昼食まではと急いで買出しに出かけていたようで、カテリアの出かける前、掃除の途中カテリアの独り言が聞こえてきていた。
掃除が終わった頃には帰ってきていて、食材を保存する棚に入れていた。
掃除をしてから気づいて、2部屋では、女性の侍女や、従者などがいるし、足りないのではと聞いてみたが、車輪を直すため、交代で休む時や、一時的に必要な荷物を載せる時だけに使うようで、大丈夫だとカテリアが言っていた。
掃除が終わり、飲み物を飲んで、一休みしていると、
「リーナ。王子殿下に挨拶していきなさい。」
そこでふと気づいた。泊まらせてもらっているとはいえ、この国の王子殿下、王族だ。挨拶もせず、飲み物を飲んで休んでいるなど、不敬にならないだろうかと。
少し不安になり、急いでカテリアに聞いた王子殿下の部屋まで行き、扉の前で深呼吸して、ノックをした。すると、すぐに入室の許可を知らせる声が聞こえてきた。
「失礼します。王子殿下。」
扉を開けると、小説の挿絵や、ゲームなどで見た金色の綺麗な髪に、青い瞳の王道派イケメン.......。の、少し小さめの男の子が荷物を片付けていた。
「どうしたのかな?」
まだこの時だと、私と王子殿下は11歳のはず.......。あまりに優しく、子供のような無邪気さではなく、大人のような対応に驚いてしまった。このままで行くと、緊張してまともに話せているか自信の無い前世も合わせると年上の自分の方が、しっかりしていないような感じがして恥ずかしくなる。と、そこまで考えた後、なかなか話しの続きを話さなくなっていた私を見て、首を傾げる王子殿下を見て、慌てて続きを話した。
「リーナです。王子殿下にとっては少し狭いと思いますが、どうぞごゆっくりして行ってください。」
「この国、マトガーザ王国の第1王子、クリス・マトガーザです。僕にとっては狭くなんかありません。むしろ、今日泊まるところを用意していただいたことに感謝しています。」
「いえいえ.......」
と、しばらく雑談を交わしたことで、少しだけお互いのことをしれた。小説やゲームで憧れた、いつか会ってみたかった王子様、クリスに会うことが出来て、話すことが出来て、幸せだった。
そして、あっという間に車輪を直すまでの3日間は過ぎ、別れの時間になった。
あれから私とクリスは仲が良くなり、お互いに呼び捨てで呼び合うくらいに仲が良くなっていた。ストーリーと同じなら、また会えると思うが、それでも寂しい気持ちがあった。
「今回はありがとうございました。後日、お礼の品をお送り致します。」
「はい。気をつけて言ってください。」
カテリアにお礼を伝えたあと、クリスは振り向いて、
「またね!リーナ!」
と、無邪気に伝えて馬車に乗り、去っていった。
寂しいなと考えていると、アザールがからかい気味に、
「ねぇ!ねぇ寂しいのー?」
と、言ってきた。約3日間過ごして、この家族にも慣れてきていたので、からかわれた私はアザールを軽く叩いておいた。
アザールは、いってー、と言いながら笑っている。生意気な10歳である。そんなこんなで、それから3日がたっていた。
3日後の朝、カテリアの驚く声が聞こえてきた。部屋で着替えをしていた私は急いで着替え終え、声の聞こえた方へ向かう。そこはリビングで、綺麗な白い封筒を持ったカテリアが驚いていた。そして、私が近づいているのに気づくと、方を思いきり掴まれた。そして、告げられたのは、
「リーナ!学園へ行けることになったわ!王子様から手紙が来て、リーナを学園へ行けるように、公爵の位を授けて、行かせて貰えるようになったのよ!」
学園へ行けるように公爵家の位を貰える。というゲームのストーリーだった。まさかこんな早くに進むなんて.......。
と、私が別の意味で驚いていると、アザールやルーナが出てきて、同じように驚いていた。
そして、改めて私宛に来ていたという手紙を、見せてもらうとゲームや小説では1部しか書かれていなかった内容が全てあった。
簡単にすると、王族のクリスを周りに民家がが無い中、車輪が壊れて、このまま、野営道具もないまま、魔獣などの危険があるかもしれない外にある馬車で過ごすことになるはずだったところを家に泊まらせてもらったお礼というようなことが書かれていた。お礼にしては大袈裟では?とは思ったが、相手は王族だ。命の危険をなくしたので、当然?なのだろうか。
その後は、王族に用意された公爵邸で暮らすことになり、5000ゴルドまで支給され、平民だった私たち家族は一気に貴族の、しかも頂点の方に登り詰めたのだった。
それからの暮らしは穏やかで、平民でそんなに予算がなく、文字の読み書き程度しかできなかった私たち家族はしっかりと教育を受けられるようになり、羊などの家畜などを飼うことで経済的にも安定だった。学園への入学は、15歳からのため、私は11歳だったので、入学はまだだった。
そしてあっという間に4年がたち、私は15歳になった。
学園への入学当日。学園は寮生のため、その日の前日は荷作りに忙しかった。寂しがるカテリアや、アザール、ルーナを、置いていくのは少し寂しかったが、手を振ってまた会えるからと別れた。しばらく森の中の小道を馬車で進むと、綺麗な舗装された道路に出た。その舗装された道路をしばらく行くと、レンガでできた綺麗な、私がこれから暮らしていく学園が見えた。
「わぁ.......」
目の前に広まった光景に思わず声が出てしまう。学園の前に広がる道の隣には綺麗な桜の木が咲き誇っていた。
学園の道の脇に馬車を止めて、侍女のユーリナと、学園の道を歩いていく。
ここが今日から通う学園。ここで、シナリオが本格的に始まる。私は希望を胸に、学園に向かって歩き出したのだった。