第5話 絶望のどん底
今回の話は結構なグロ表現が出てきますのでそこら辺が大丈夫な方は見てください
「大変なことになっているな。」
白髪のフードを被った男性が雅狩町の東側の自然溢れる森の中に立っている。その男性の目には燃え盛る業火で火事になっている町の様子が見えた。幸い東側の森には火は来ていないが西側の町は地獄のような景色が見える。
「この町には確か………!!業と冥華がいるのか。別にあの二人がいるなら大丈夫な気がするんだがな。一様行っておくか。嫌な予感がする。」
町の状態を見ながらその男性はつぶやく。
「あまりここにいることはバレたくないが……軍人だし、人命救助はしないとな。まあこんな大切な人を守れなかった俺が人々を助けられるのかは疑問だがな。」
その男は少し悲しそうな目をしたがすぐに切り替え、男性は自分のいる場所から燃え盛る町へ急ぐのだった。
翔と心は全力疾走で山をかけ降り息を切らしながらも町へやってきた。やってきてしまった。その町の光景は分かりやすく地獄である。誰のか分からない焼死体、左腕を吹き飛ばされ死んでいる人もいる。建物は崩壊しているものしかないようなも感じになっている。それを見てしまった心と翔は絶望した。よもやここまで酷いことになっているとは思わなかったのだから。中学生である2人はこの光祖景を見て精神的に参ってしまった。だが助けられる人がいるかもしれないそう信じ精神的に参ったのにも関わらず2人は無理やり身体を動かす。
「なんだよ……これ!!!まるで……地獄だ……」
「なんでこんなことを……」
2人はほぼ同時に叫び町の光景を見ながら
「「こんなことをしたやつは絶対に許さない!!!」」
そう激昂し、憎しみを込めた目でこの町の光景を見て走っていく。
男と女その2人は5人相手にして戦っていた。その男と女2人は神木 業と神木 冥華が5人のフードとコートを来ているものたちと戦っているそのフードには“印”が付いている。
それに気がついた業は戦闘中ながらも敵に聞いた。業は3人の相手をしながら。
「!!お前ら、まさか狂乱師団!?」
疑問を口にした業を見て1人が口元を歪めながらフードを外した。
「ああこの国の最重要危険組織に選ばれている狂乱師団だ。俺はその称号A、ムアイって言う名前だな」
ムアイは業を警戒しつつ業を見る。業もそのムアイをじっと見つめる。そして刹那、業は攻挙の構えになりそのまま地を力いっぱい蹴った。その瞬間周りに衝撃が走る。ムアイとの距離が一気に近づき、気づけばムアイの懐に一瞬にして入っていた。
「は?」
ムアイは脳で理解することも出来ないまま業に腹を殴られ、ボキッと鈍い音を立てムアイはその場で気絶した。
「流石にムアイじゃ勝てないか。」
気絶したムアイを冷たい目で見る黄緑色をした髪をしている男がそう告げる。
「お前は?」
業が問うと相手は答える。
「狂乱師団、称号J礼斗だよ。」
目も黄緑色で異様な雰囲気を出してるその礼斗と名乗った男はさっきのムアイとは比べ物にならないぐらいの気力量であることは業も気づいた。
「冥華ーー。【封印】解除するぞ?いいか」
2人相手にしている冥華は何も言わずただ頷いた。
業はその意図をくみ取り、再度礼斗と向き合った瞬間、冥華と業の身体は青白い光に包まれ冥華と業の身体にオーラのようなものをまといそのオーラはやがて消えた。だがその【封印】を解除したことによりさっきよりも大幅に気力量が増加していた。
「元の状態に戻っても能力はあまり使えないんだな。流石にあの“天才”が作った薬のせいで本来の能力の2割ぐらいしか使えないのか。治す薬貰えばよかったな」
周りを見ればさっきまで拮抗していた冥華は敵である2人に一撃ずつ入れた。ラーサには腹に1発を入れ気絶し、もう1人の女、メリッサには足払いをしてメリッサの体制を崩させ腹に1発入れて地面に叩きつけた。背中を痛めたのか起き上がれないようだった。
「そこそこめんどくさかったよ。女子2人組」
ラーサとメリッサを見ている冥華は目を細め2人を見る。メリッサは能力を発動しても冥華には一切効かず憎々しげに冥華を見た。
「あなたの能力と私の能力は相性が悪すぎる。だから効かないよ。」
冥華の目は完全に格下を見下している目だった。
「うるさいですね!!まあ貴方の言う通り私と貴方の相性は最悪ですのでここは引かせていただきますね。礼斗様も急いで撤退を。これはメインではなくサブの任務なので。では」
「待て!!」
倒れているメリッサが苦し紛れに発した後、何かケータイのようなものを取り出し、画面を押すとその場から一瞬で消えてしまった。冥華は歯ぎしりをしメリッサが消えたところを睨んでいたが気持ちを切り替え、業の所へ向かった。
業と礼斗はお互い睨み合いが続いていたがやがて戦闘を終わらせた冥華が走ってきた。
「もうお前、勝ち目ないだろさっさと引いてくれないか?」
「まあそうですね、勝てない戦闘はしない主義なので。」
その礼斗がメリッサと同じケータイのようなものを取り出した瞬間冥華は声をかけた。
「貴方、お仲間さん連れていかなくていいの?」
そう聞いた冥華に振り返り、答える。
「別にあんな道具なんてどうでもいいですよ。」
「なっ?!」
「お前、仲間なんかどうでもいいのか?!」
「能力の関係上本当にどうでもいい。」
狂気的な笑みを浮かべる礼斗の殺気に業と冥華は少し後ずさってしまった。
「ああそうそう1つ言いたいことがあります。」
「「?」」
業と冥華は礼斗が何を言っているのか理解していないような感じである。
「後ろに気をつけてください」
「「?!」」
礼斗が告げた瞬間その意図に気づいたのかすぐに回避行動をとろうとしたが回避が間に合わず2人の腹は後ろにいるフードを被った男、コードネーム捕食者ことイルザによって貫通した。
「が、がはっ!!な……んで」
「気配なんて……感じ……なかった…のに」
辺りには鮮血が飛び散り2人の腹や口から血が溢れ出る。
「ラーサの能力、音だけじゃなくて1日1回だけだが気配も消せるってマジで使えるなアイツは持って帰ってもいいかもな。」
「そうですね。捕食者。後で回収しときましょうか。あとアルタークラスの2人組は食わなくていいのですか?」
「無理だな、倒せたのも奇跡だ。気力量が多すぎる。俺が食ったら気力の限界値を超えちまうしな。」
「なるほど」
その場から立ち去ろうとしている2人を見てどんどんと意識が薄れていく。業の身体は冷たくなっており冥華はもう目を閉じてしまっていた。
「………冥華……喋ってくれよ……なぁ?……俺は…何も守れないのか…何も……」
涙を流しながら意識が消えようとしていた……その時遠くから声がした。よく知っている声だった。
「(翔、なのか?)」
薄れゆく意識の中頭の中は大きな悲しみと1つの希望、翔の存在があった。
「誰かぁーーいませんか〜!」
町中を心と翔は別々で行動していた。翔は心から【熱遮断】という技で温度を操る能力を使った技で文字通り熱を遮断することによって炎などは熱く感じないようになっている状態である。
「誰かぁーー……ん?あれ身体が焼けてない人がいる!大丈夫で……………あ……れ?お父………さん?お母………さん?なんで…………血だらけ……なの?」
翔はそこへ走っていた。認めたくない認めたくないと思いながら、そこへ走りそして辿り着いた。認めたくないその考えが……現実になった。
そこは鮮血が飛び散って、地面はとんでもないぐらいの量の血があり、その血は目を閉じ身体が異様に冷たくなった冥華とまだ目を開けているが出血が多く助からない量の血を出している業から出ているようだった。この光景を見てしまった翔は絶望し声にならない声を出しながらパクパクと口を動かしている。
「あ、ぁぁ、あぁぁ」
「翔ごめんな、お母さん……守れなくて」
息を切らし、目はどんどんと光を失ってきているが確かな声で、とても悲しそうな、悔しそうな声で、翔に言った。
翔は業の手を握り「でもお父さんはまだ生きてる。すぐに治療すれば!!」翔は業に引きつった笑顔でそういうが業は首を振る。
「翔も……気づいて……いる…んだろ?俺はもう……長く生きれ…ない。だから……翔にある物を………託したい。」
業は自分の首につけている首飾りを翔の手に渡した。ネックレスのようになっているが真ん中の部分には袋のようなものがあった。
「これは……命の恩人から……お願いされた物だ。これを翔が守っていてくれないか?俺はもう長くないしな。」
「本当に……いいの?………貴方」
目を瞑っていたはずの冥華がはぁはぁと息を切らしながらとても辛そうにしながら言った。
「冥……華?」
業の目から涙が溢れやがれそれは頬につたう。
「泣か……ないで、後で…一緒の場所行くでしょ?」
「あぁそうだな」
2人は仰向けになりながら話す。翔もお母さんが目を覚ましたことに気づいた。
「お母……さん?」
「えぇ………いつも元気で………うるさいお母さん……ですよ。」
業よりも辛そうでもう死んでいてもおかしくないはずの怪我なのに目を覚ますことができたのは息子の声が聞こえたからなのかどうなのかはわからない。
冥華は翔の手に握られているものを見て少し目を見開く。
「その……お守りは………団長から………貰ったもの……でしょう?」
「あぁ……だが団長の言っていた……“未来の架け橋となる存在”……と言うのは翔だと俺は……思ってる」
全然理解が追いつかず、頭の中がごちゃ混ぜになりながら頑張って情報を整理しようとする翔を見て業は話しかける。
「なぁ翔……俺から言うことは……1つ……俺らが死んでも復讐しようだなんて……考えるなよ?相手を……憎んでもいい、恨んでもいいだが一線は……超えるな……人を殺すなどということは……負の連鎖を引き起こす……だがらそんなことはしないでくれ……まあお前は優しい。そんなことはしないだろうがな……。」
笑顔で頷いている冥華が翔に話しかける。
「貴方は優しい。だからこそ人を救う軍人にとても合っているわ。………その姿を見たかったけどね……」
涙を流しながら笑いかける冥華。だがこんな時間は終わりを迎える。
2人はまた吐血し、一瞬、完全に意識が途絶えようとした。だが何とか持ちこたえ、自分達の息子へのメッセージ、それを伝えるために声を出す。
「「もっともっと………一緒にいたかったけど……最後に…これだけは……伝えたい。私(俺達)の………息子として………生まれてきてくれ……てありがとう。」」
2人は翔の頬に触れ、言った後力なく崩れ、目を閉じ、もう二度と起き上がらなかった。
「お父さん?!!!お母さん?!!!目を………開けてよ……目を……ぅ…うぁぁあぁぁぁァァァァァァ!!!!!!」
父と母を失い、深い、深い絶望に飲み込まれこれが夢だとずっとずっと頭に覚えさせようとするが父と母が倒れているのを脳が認識する。夢だと思ってもこれが現実だと言う現状を叩きつけられ翔はそこから1歩も動けなくなってしまった。すると業から貰ったネックレスの袋のようなものからどす黒く、何か瘴気のようなものが出ている球が袋の中から浮いて出てきた。それは翔の胸元に近ずいて行き翔の胸元に入り込みやがて翔の体内に入ってしまった。
翔は両親を失ったショックにより周りが一切見えていなかった。だから今起きたとんでもないことにも気づくことは無かった。
雅狩町爆発直後
町にある大きな鉄塔の1番上に3人の人影が見える。下にある町は燃やされ大変なことになっていたがそんなことは気にしていない。そんな連中で3人中2人はフードに“印”が付いていた。
「いやー流石にここまでの範囲を爆発させることがなかったからめちゃくちゃ疲れたぜ。まあ俺1人でやったら気力不足で気絶してたかもな。」
身体がごつく顔には傷があり筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)大男が横の2人を見る。
「相当な気力持ってったな」
「まあ俺は気力量に関してめっちゃくちゃ多いって言われているからそんな疲れてないな!!」
「能天気の筋肉バカが気力量に関しては俺より多いって言うのが気に食わないがいいか。」
干夜と怪莉が筋骨隆々の大男を真ん中に右に干夜、左に怪莉がいた。
「ここまでの爆発を俺の能力でやったんだ。報酬が出るとか言っていたが?」
大男がそう聞くと怪莉が大男にさっきから持っていたショーケースを渡す。その中には金の束がギッシリ詰まっていた。
「本当に助かった!!私たちの計画にはお前の協力が必要不可欠だったからな!!」
にこやかな笑顔を浮かべる怪莉。こんな顔をするやつが犯罪者だと思うものはあまりいないだろう。
「じゃあ俺はもうここからトンズラさせて貰うぜ。」
大男がそういうと干夜はポケットから何かを取り出す。それは銃。ハンドガンのようでその大男の頭を後ろから狙いそしてドスンッと耳が痛くなるような大きな音が辺りに響きその大男は動かなくなった。
「利用できるものは利用する犯罪者だったら当然だ。お前はバカ正直に協力してくれた。本当にありがたかったよ。」
「良し!!捕食者が“核”の回収が終わったそうだ。今、元アルタークラスとプラチナクラスの神木業と神木冥華殺害のサブ任務の場所に向かってるらしいぞ!!」
「まあ鎮魂奏者はともかくムアイとラーサ、メリッサは絶対に勝てんからな。でも捕食者でも勝てないと思うんだが。」
「大丈夫だ!!ラーサから1日1回だけ使える奥義的なやつ?で音と気配も消しているから暗殺出来ると思うぞ!!」
「……まあ一様俺らも向かおうかね。」
話が終わり干夜と怪莉は町へと向かうのだった。
第5話を見ていただきありがとうございます。作者の山下 海です。今回は絶望的なお話でしたね。ここまでして大丈夫かなーと思う自分もいたんですけど、この話は物語内でも結構重要なので今回は辛めの話となりました。後、翔の中に入ったドス黒い球。アレはなんなんでしょうね?謎が深まりますね。
では次回、お会いしましょう。