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「なんだ、そういうことだったのか俺はてっきりアレックスに馬車の中で調教されたのかと」


「人聞きの悪いことを言わないでください。ゼン」


「私も綺麗な顔だけが取り柄の男の毒牙がついにお嬢様に…と、思ったらいてもたってもいられず…お嬢様がご無事で良かった。」


「ミリヤ、僕はそんなに信用がないのですか?」


「ご自分で考えればわかるでしょう?」


あれからゼンとミリヤの誤解が解けて二人の乗ってきた二頭の馬にアレックスとイリアーゼ、ゼンとミリヤで別れて乗って追放先の教会を目指している。


「あの、話の途中で申し訳ないのだけれど二人はどうしてここに?」


そう、誤解は解けたがゼンとミリヤがここにいる理由はその場では聴くことが出来なかったのだ。


「そうですよ、二人がどうしてこちらに?森の入り口で二人いるとは僕も気づきましたがゼンとミリヤだとまでは…」


どうやらアレックスも知り合いの二人だとは気づいてなかったようだ。


「ああ、俺は公爵様の命令でな。急に馬車を降りるから探すの大変だったぜ」


「!お父様の?なぜ?…私を殺しに?」


私の発言に二人が驚いたのか声をあげた。


「はあ!?なんで公爵様が自分の娘を殺すように命令すんだよ!?お嬢達家族は仲がよかっただろ!?」


「そうですよお嬢様!」


(確かに仲がよかったわ。だからこそ)


「卒業パーティの時にお父様いらっしゃらなかったわ…それに好きなように振る舞ってきて最後は王子様への不敬罪で追放された娘は厄介者よ。利用価値なんてないでしょう?」


「お嬢、あんたの父親の公爵様は利用価値があるかないかで動く人ではないのは知っているだろ?…それに卒業パーティに居なかったのは王子の妨害だ」


「え?王子様の妨害?」


「お嬢の母親は元王女様だろ?公爵様は王子にとって義理の叔父になる。王さまとも学生時代の同級生で仲がいいし政の方針も共に決めている人物の一人だ。魔法を使う力の格が違うとはいえ元平民の男爵令嬢と婚約したい王子様の意見に反対する声をあげる可能性が一番高い権力者の公爵様をあの場に置いとくのは不味いだろ?」


「でも、私のことをそんな娘は知らないって言ってたって…此方に向かう前も面会すらできなかったわ。他の家族とも」


「それも王子の妨害だ。実際は最後の面会を強く希望した公爵様達が面会を城で行うと聞いて待っていたのに結局お嬢は会場を連れ出されてから牢に一日入れられて朝直ぐに馬車に乗せられたろ?」


知らなかった。お父様達が私と話をする事を希望してくれていたなんて


「ご丁寧に王子の奴は公爵様たちにもお嬢が話をしたくないと言ったって嘘を聞かせてきたけどな」


「そうだったの。」


「ああ、それで公爵様も色々あってお嬢が混乱しているだろうから少し時間を置いてから俺にお嬢宛の手紙を届けるように言ったんだ。」


(少し時間を置いてからって一日も経ってないけれど…?)


なぜ?とゼンを見るが彼は手紙を持っているわけではないようだ。


「お嬢様、続きは私がお話いたします。」


ゼンと一緒に馬に乗っていたミリヤが話し出した。


「私はお嬢様が教会に持っていくという物のリストのメモを受けとりまして、内容がその、とても教会で使うとは思える品々では無かったのでゼンに公爵様に伝えてもらうよう頼んだのです。それで公爵様からの急ぎの命でこちらに二人で来たのです。」


「ミリヤが私の荷物を詰めてくれたのね」


「ええ、…その」


なんだかミリヤが言いにくそうにしている。


(どうしたのかしら?…ん?荷物を詰めた?ミリヤが?私の荷物って)






ナイフ、縄、睡眠薬






イリアーゼは先程まで姿を見ながら話をしていたゼンとミリヤから顔を背けて目の前を見る。


森はどこまでも続いている。どこまでも、どこまでも




イリアーゼはまたゼンとミリヤの方を見て


「お父様には内緒にしてくださる?」


笑顔で聞くと二人の従者に


「「そのお父様の命で来ています。」」


と、返されてしまった。



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