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3

門の音が聞こえなくなった頃に目の前の男はアレックスと名乗り追放先の説明を終えると私に話すよう促したので話した。


最初は面白そうに聴いていたのに途中、終盤から少し…いやかなりドン引きされているような気がする。


アレックスの綺麗な顔が途中から能面のように無表情なのだ。


それもそうか、元貴族の令嬢の好きなように振る舞ってきたという最後の自慢話に付き合おうと思っていたら、ただの夢物語だ。別の世界の前世での出来ごとなんて特に訳がわからないだろう。


(さすがにここはゲームの世界ですよーなんて言えないから夢で何度も何度も見たってことにしてるけどね…前世を含めて)


「…つまらない話を聴かせて悪かったわね、その、怒っているの?」


2時間くらいで話終えてしまったため追放先の教会に着くまで時間がまだ余っている。そんな状況で綺麗な顔だけに無表情でいると怖い男(今は女に見えるが)と二人きりは困る。


(着くまでに私は死ぬけれども…ん?私、死ぬのよね?アレックスは?馬車の操縦している人は?)


どうなるの?







死ぬの?私と一緒に?










「イリアーゼ様その」


「アレックス!ごめんなさい自分のことばかりで気付くのが遅れたわ!このままじゃ貴方達が巻き込まれる!」


アレックスが話し出すのを聴かずにイリアーゼは立ちあがり叫んだ。


(好きなように振る舞うって決めていたって死人を出すなんて冗談じゃないわ!)


「え?…うわ!、イリアーゼ様!ん!」


アレックスが聴き返そうとイリアーゼを見るとイリアーゼはアレックスの後ろにある御者と話すための窓をめがけてアレックスを下敷きにするように押し退けると胸がアレックスの顔に当たった。


「ごめんなさいアレックスこの馬車狭いの我慢して!ねぇ、御者さん!御者さん!」


窓をイリアーゼが叫びながら叩くと馬車が止まり御者のおじさんが顔を出した。


「なんだぁ?俺はあんたと口を聴くなって言われてんだが、急病か?」


「急病じゃなくて緊急事態よ!この先に盗賊がでるのよ!迂回してほしいの!」


「なんだって!?…いや、そんな話はこの数日聞いたことがない。そう言ってあんた逃げる気じゃ」


「親にも勘当されてるのに逃げても生きられるわけ無いでしょ!」


「いや、あんたぐらいの身体つきなら稼ぐ方法はいくらでもある…っておい、あんたの胸の下敷きになっとる女兵士は大丈夫かぁ?」


御者のおじさんはイリアーゼの顔と身体つきを馬車の窓から覗いていると羨ましい状態で窒息しかけているアレックスを発見した。


「へ?きゃあ!ごめんなさいアレックス!」


「アレックス?男みたいな名前の女だな」


(アレックスまさか御者の人に事情を話してなかったの!?)


元とはいえ公爵令嬢だったイリアーゼに気づかって女装までしてくれたアレックスに恥をかかせてはいけないと急いで言い直す。


「間違えたわ!アリスだったわね!アレックスは家で飼っていた猫の名前だったわ!似た名前だったから間違えてしまったわ!ごめんなさいね、アリス!」


イリアーゼはアレックスの手を取り、恐らく下敷きになったであろう場所の頬を労るように撫でる。


「…!い、いえ」


「ふーん、まあ、なんにせよ盗賊がいたなんて話は聞いたことがないから迂回はしない」


「そんな!」


「あの、本当です。私が、門で聞いたので間違いはないかと」


撫でてくるイリアーゼを手で大丈夫だと合図しながらアレックスは呼吸を整えながら御者に話しかける


「な、本当かい!?」


「ええ、ですが先の道なので大丈夫ここは隠れる場所がないくらい見晴らしがいいですし」


「そ、そうか安心した。でもどうしたらいい?迂回しちまうとかなり時間がかかる。」


「教会に着くのは馬車であと一時間くらいですよね?私とイリアーゼ様をあの森に入る前に下ろしてください。」


アレックスは馬車の進む先にある森を指差した。


「あんたら女二人で森に入るのか危険すぎるだろ?!」


「いえ、実は森の入り口から迎えを頼んでいるんです。だから大丈夫ですよ」


「なんだ、それなら安心だな」


「ええ、イリアーゼ様に伝え忘れていたので驚かせてしまったようです。貴方にも伝えるのが遅くなりすみません。あ、盗賊が出たのは急だったので途中で降りますが、今回の馬車業務の給金は無事に送り届けたぶんと同額お支払いします。」


「いいのかい?ありがとな。さあ、また動くから座った座った。」


イリアーゼとアレックスが座ると御者のおじさんは森に向かってまた馬車を動かし始めた。


「ちょっと、アレックス!貴方何を考えているの?」


イリアーゼは馬車を一緒に降りると言うアレックスに心配になり問いかけるとアレックスはイリアーゼから目をそらしながら話し出した。


「僕の業務はイリアーゼ様を教会に無事に送り届けて数日間生活指導を行い、また門に帰ることです。業務を途中で放棄する訳にはいきません。例えいるのかわからない盗賊が出ようとそれは変わらない。万が一に備えて御者の方には無事にお帰りいただきますが」


「森に迎えが来てるって言ってたけど」


「流石に今盗賊が出るかもと聞かされて迎えの手配は無理です。…イリアーゼ様、足腰は丈夫ですか?」


「ダンスを長時間踊れるくらいには健康的ではあるけど森を歩くのは初めてね」


「森と言えど道は補強されているので大丈夫でしょう。」


(つまり盗賊がでる可能性が高い森を二人で歩くのね…私が馬車で死ぬことは無さそうね)


今までもゲームとは少し違う展開になることはあった。これもその一部だろう。でも、少し違う展開になったからと言って結末は変わらないのが殆んどだった。


(変わらないのならせめて、アレックスから離れて巻き込まないようにしなくちゃ)

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