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15

「お嬢様、先に私が参りますので後から離れず着いてきて下さいませ」


「わかったわ」


ミリヤがドアの隙間から周囲を見渡して誰もいないことを確認するとイリアーゼと共に部屋を出る。廊下は不気味なほど静かだった。ミリヤとイリアーゼは先ほどいた部屋からすぐ隣の部屋へ移動する。

部屋の前に来るとミリヤが先に部屋の様子を伺う。イリアーゼはミリヤの指示を待った。


(静かすぎて緊張する)


自分の手を握りしめているとミリヤから手招きされミリヤの後に続いて部屋に入る。ミリヤが廊下を確認してからドアを閉めた。


「どうやら今は誰もいないようです。」


「よかった。」


二人でホッと一息ついた。

しかしまだ油断は出来ない。

ミリヤが机をドアの前に移動させてバリケードを作る。


「一先ずこれで様子を見ましょう。」


ミリヤはそう言うと部屋の窓に異動し外から姿が見えないように様子を確認していた。


「何か見える?」


「お嬢様の言っていたように男たちの仲間がいますわ。こちらから見えるのは3人です。」


イリアーゼも窓に近寄り確認する。男たちは何かを待っているようだった。


「ミリヤ、あの男たちはどうすると思う?」


「このままお嬢様が来ないとわかれば入ってくる可能性があります。または、仲間を見捨てて逃げ出すかと」


「入ってきたらどうしましょう?」


「窓から来た場合は私が戦いますわ。ですが、ドアから来た場合は、衝突は避けて窓から逃げましょう。それで時間が稼げるはずです。」


「わかったわ。」


イリアーゼは窓から離れて窓の見張りをミリヤに任せ部屋の外からの音に集中する。


(特に足音、話し声は聞こえない。)


部屋に静寂が訪れる。イリアーゼもミリヤもその場から動かず集中する。












カタンッ…


「!…、」


先程から数分経った部屋の外からの音にイリアーゼはミリヤを見る。ミリヤもイリアーゼを見て口元に指を当てて静かにするように合図を出す。

イリアーゼは頷き様子を伺う。


コツ、コツ、コツ


足音が聞こえる。どうやら一人のようだ。…最初に来た男たちは走っていて騒がしかったのでこちらに向かっているのがすぐにわかった。しかし、今度の相手は掴みにくい。それに1つ気になることがあった。


(この部屋に向かってる?)


来るまでに部屋はいくつもあったはずだ。だけど歩く音だけでドアが開く音は一度も聞こえない。

イリアーゼはゆっくりミリヤのいる窓へ向かう。が、なぜかミリヤはイリアーゼの方に来た。


「ミリヤ?」


ドアから来た場合は窓から逃げると決めたはず、とイリアーゼは言おうとしたがミリヤに耳元で囁かれた。


「お嬢様、窓の方にも。」


「!?」


イリアーゼが耳をすますと窓の外の洋瓦が軋む音が聞こえた。

挟まれてしまう。先ほどいた部屋と同じ作りのこの部屋には隠れられる場所はない。


(どうしたらいいの?)


「お嬢様、私の後ろに」


ミリヤはそう言うとナイフをかまえ直して窓と扉の中間に移動する。イリアーゼは言われた通りにミリヤの後ろについた。


「同時に来るかしら?」


「窓から来る者が先のようです。恐らく建物の中にいる者がこちらに真っ直ぐ向かっているのも窓の外にいる者からの指示があってのことかと思われます…私が相手をしますので、お嬢様はもしもの時はこちらを」


イリアーゼはミリヤがポケットから取り出した小型爆弾を受け取った。


(これってミリヤが森で持ってた爆弾じゃない!?)


「ミ、ミリヤこれ…」


「お嬢様が危険だと判断した場合は私のことは気にせず相手に勢いよく投げて下さい。」


「え、ええ」


(衝撃で爆発するのコレ?)


絶対に落とさないようにしようと心に決めたイリアーゼは少し緊張している手で爆弾を握る。


「…!、お嬢様きます!」


ミリヤの声と同時に窓ガラスが勢いよく音を立てて割れる。ミリヤは音が聞こえると同時にベットからシーツを引きぬいてガラスの破片をある程度払い落とした。イリアーゼにはミリヤが盾になってくれたお陰で破片は届かなかった。


「ミリヤ!」


ミリヤは払い落としきれなかったガラスの破片を腕でガードしたのか袖が赤く染まっていた。それでもイリアーゼを守るためにナイフで窓からの侵入者と応戦する。

相手は外にいた男達と同じような風貌だが実力的には先ほどミリヤが倒した者より上のようだ。ミリヤはイリアーゼを守りながら戦っているのもあり、二人とも部屋の中央にいたがドアの方に追い詰められて苦戦している。


「くっ、…」


「おとなしくしやがれ!」


男の持つ剣がドアに設置したバリケードの前にいたミリヤとイリアーゼに向かうが二人が左右に避けたため当たらなかった。

しかし、バリケードに使っていた机が真っ二つに割れてしまった。


(嘘!?そんなに力があるの!?)


ミリヤが男のふくら脛に向けてナイフを突き立てるのを確認すると驚きながらもイリアーゼはその隙に男の横を通り抜けて窓側の方に向かう。


「ぐああっ!?」


叫び暴れる男の横をミリヤが通りイリアーゼと合流するとドアから男の仲間が来た。


「な!?おいどうした!」


(今なら!)


イリアーゼはミリヤから預かり握りしめていた小型爆弾を男達に勢いよく投げつけた。


「お嬢様!」


イリアーゼはミリヤに後ろから引っ張られて窓の外から下に落ちる。部屋から完全に身体が出た頃には部屋の中から破裂音と共に尋常ではない程の煙が舞っている。


(爆弾じゃなくて煙玉だったの?)


2階から落ちているのに意外と冷静に考えていたイリアーゼはそろそろ地面に身体が当たるだろうというところで






「イリアーゼ様!」







自分を呼ぶ声が聞こえると同時に何者かに受け止められた。

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