プロローグ
悪役令嬢のその後の話が書きたくて
乙女ゲームの世界で生きて早18年
6才の時に前世の記憶を思い出してから今まで長かった。
卒業パーティの今日この日私は断罪される。
追放された後には追放先の教会につく前に馬車の中で盗賊に襲われ行方不明になる。もっとも襲われた後なんて死んでいるに決まっているが
え?未来は変えられたかもしれない?
「嫌よ、私は私が好きなように振る舞うわ」
発言したその先の目の前にはゲームのヒロインと私の婚約者の王子様そして攻略対象達
「ふざけるな!!よくもエミリアにそのような戯れ言を!」
「王子様、私、うう…」
私の婚約者の王子様に人目も憚らず抱きつき泣いているヒロイン、エミリア
「エミリアが可哀想だ早くこの女を」
「ああ、証拠はあるんだ」
エミリアに寄り添うように攻略対象達が集まる。
(あら、このイベントスチルってことは全員攻略したのね)
「我が婚約者イリアーゼ・クロース公爵令嬢!今をもって貴女との婚約を破棄する!」
王子様が声高々に宣言すると周りからざわめきが起こる。
「…」
私は王子様とエミリアを見上げる。
「そして私はエミリアと婚約をする。エミリア」
「王子様、ん」
大勢の前でキスをする二人
(…よそでやってくれないかしら、攻略対象達も攻略された後だから複雑な顔してるわね。ああ、そろそろ私が何か言わなくちゃいけないわよね)
近くを見渡すとテーブルに飲み物用の空のグラスがある。
これから断罪されて追放される私が主役だと言うのにいつまでもキスをしているアホ二人…ムカつくわね
「いつまでも私の婚約者の王子様に張り付かないで!卑しい女ごときが!」
一度言ってみたかった台詞を言いながら二人の足元を狙ってグラスを投げつける。
「うわっ!」
「きゃあ!」
「「「エミリア!」」」
(あ、攻略対象達王子様の心配してない)
グラスは足元を狙いすぎた為か二人には届かず少し破片が飛ぶ程度だった。
「王子への不敬罪だ!あの女を捕縛しろ!」
攻略対象の一人がここぞとばかりに大きな声をあげて警備達を呼ぶ
ぞろぞろと待機していたもの達に取り押さえられた。
「離しなさい!私を公爵令嬢と知ってこのような!?」
「残念だが貴女の父は貴女のような娘は知らないと言っている。」
「そんな!お父様!」
周りを見渡すが父の姿はない。
(すごいわ、今までと一緒で全部ゲーム通りの展開だわ)
自分が縛られていると言うのにイリアーゼは吐く言葉とは違い心の中は冷静で少し他人事のように感じていた。
「王子への不敬罪及びこの学園の身分関係なく過ごす校風に逆らい元平民の女子生徒である私の!婚約者のエミリアを侮辱したその罪によりイリアーゼ・クロース元公爵令嬢は追放とする!」
王子様の宣言に周りから賛同の声が巻き起こる。
(王子様さりげなく私の!婚約者って強調して…うわ、攻略対象達が私の断罪なのに王子様を穴が開きそうなくらい見てる)
成功したように見えた全員攻略だと思ったけどそりゃそうよね…なんて考えていたイリアーゼの頬に鋭い痛みが襲った。
「…っ!」
ポタポタと垂れる血
(え!?なんでイリアーゼはここでは死なないはず)
見ると至近距離に取り巻きだった一人が私が先ほど投げたグラスの破片を持って立っていた。その破片には血がついている。
「貴女は…」
「私はエミリア様を虐めるのはやめましょうと、イリアーゼ様に言いました。でも、言うこと聞かないなら私の家に報復すると…う、うう」
「私も同じことを」
「私も…」
次々と私の取り巻きだった令嬢が声をあげる。私が言ったこともないことを言いながら
すべてを聞くと王子様が顔を歪ませて私を見下ろしながら
「悪魔のような女だなお前は」
と、吐き捨てるように言った。
「…ええ、私は好きなように振る舞うって決めたもの」
会場から連れ出される前に出た私の声は好きなように振る舞ってきたイリアーゼが出した声のなかで一番小さかった。




