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絆〜18年前の悲劇〜  作者: 柿崎零華
3/9

第3話~異色の出会い~

67階に着き、降りる二階堂と野崎。

二階堂は、エレベーター前の窓に釘付けとなり


野崎「何してるんですか課長」


二階堂「景色が綺麗だぞ。何せ1年ぶりだからな」


二階堂が振り向く、すると遠くの隅で怯えている野崎。


二階堂「何してるんだ?」


野崎「僕高所恐怖症だって知ってるでしょ。怖いんですよ」


二階堂は微笑み


二階堂「相変わらず怖がりだな」


そう言いながら、平成製薬ウォールストリート支店の受付に向かう。野崎もその後についていく。

一人の受付嬢に


二階堂「すいません。午後1時にそちらの製薬部長の大倉さんに予約した、ミッドタウン支店の二階堂と申します」


受付嬢「あっ承知しました。少々お待ちください」


受付嬢が内線を持ち、話始める。

二階堂は黙って待っていた。

しばらくして、内線を置き


受付嬢「しばらくそちらでお待ちください」


二階堂「ありがとうございます」


二階堂は後ろを振り向くと、そこにはまだ震えている野崎が立っている。


二階堂「お前何してるんだ?」


野崎「揺れてるように感じます。地震じゃないのかな」


二階堂「考えすぎだ」


しばらくして、ウォールストリート支店製薬部長の大倉と、見知らぬ女性が一人付いてきた。二階堂は最初、誰だと思いながら笑顔でいた。

だが、女性はとてもじゃないほど美人で、つい何回も顔を見てしまうほどだった。


大倉「いや、遅れてしまって申し訳ない」


二階堂「いえ、大丈夫ですよ」


野崎が笑顔になり、女性の方を見て


野崎「そちらの方、どちら様なんですか?」


二階堂「こら野崎」


叱る二階堂。大倉は笑顔で


大倉「いいんですよ。こちらの方を紹介しましょう。こちら東京本社からこちらに来た、新製薬副部長で製薬アドバイザーの、前崎香織さんです」


香織「前崎です。よろしくお願いいたします」


香織は頭を下げる。

二階堂と野崎も、頭を下げる。


大倉「それじゃあ、応接室に」


長い廊下を進み、4人は中の応接室に入る。

4人が座ると


大倉「えっと確か、新たな薬の商品登録を、ミッドタウン支店で行い、それの協力にウォールストリート支店がということですよね」


二階堂「はい。もし本社に薬を送ってしまったら、すべての手柄は本社のものになってしまいます」


大倉「わかります。過去には、私たちも同じ目にあってますからね」


笑顔を見せた大倉。終始思い顔で書類に目を通している香織。

二階堂はたまに気にしながら、大倉と話していた。


二階堂「どうかお力添えお願いいたします」


大倉「えぇもちろんです」


二階堂「ありがとうございます」


すると香織が話の腰を折るように


香織「ちょっと待ってください」


3人の目線は一気に香織の方に集中する。


大倉「前崎君」


香織「二階堂さんでしたっけ?」


二階堂は戸惑いながら


二階堂「そうですけど」


香織「あの、この薬は抗がん剤ですよね」


二階堂「えぇ」


香織「副作用はあるんですか?」


二階堂「えぇ、少し倦怠感や髪が抜けるなどの、副作用が出る場合があります」


香織「それでは、協力は出来ません」


二階堂「え?」


二階堂と野崎は驚きの表情を受かべる。


大倉「前崎君、なんていうことを言うんだ」


香織「私は、本当のことを言っているまでです」


大倉「でもな君」


二階堂が間に入り


二階堂「大倉さんいいんですよ。どうしてダメなんですか?」


香織「理由は一点だけです。本社からどのような形でご報告がいっているかわかりませんが、本社からの要望は副作用がない。もしくは副作用が弱い薬を求めています」


二階堂「そうなのか?」


野崎の方を見る。野崎は戸惑いながら


野崎「いえ私は知りません。本社担当は重沢ですから」


二階堂「あいつか。あっ続けてください」


香織「はい。ですから、今回ミッドタウン支店が開発した薬だと、副作用が強すぎます。最近の患者さんのデータによると、副作用をとても嫌っていて、抗がん剤を使用しない人たちが増えています。そんな患者さんたちの要望を無視して、薬を開発することは出来ません。申し訳ないですが、協力は出来ません」


大倉「前崎君。いいじゃないか」


二階堂「いいんですよ。我々の情報収集ミスでしたから。申し訳ないです」


野崎「課長」


二階堂が野崎に一言


二階堂「よし作り直すよう、工場に言っておけ」


野崎「あっ分かりました」


二階堂は大倉らに


二階堂「申し訳ないですが。もう一回作り直して、また出直します」


大倉「本当申し訳ない」


大倉が頭を下げる。


二階堂「頭を上げてください。こちらが悪いわけで、大倉さんたちが悪いわけではございません」


すると、ノック音が鳴り、一人の男性社員が入ってくる。


大倉「なんだ。会議中だぞ」


男性社員「本社から緊急のお電話です」


大倉「本当か?今すぐ行く」


大倉が立ちあがり、残りの3人も立ち上がり


大倉「すいません。ちょっと用事が」


二階堂「大丈夫ですよ」


大倉が部屋を出ていく。3人だけになった空気は軽くもなく重くもなかった。

二階堂は野崎を見て


二階堂「私たちもそろそろ行くか」


野崎「そうですね」


香織「では、お見送りします」


二階堂「あっすいません」


3人は部屋を出て、長い廊下を進み、ウォールストリート支店の玄関まで来た。


二階堂「ではありがとうございました」


二階堂と野崎が礼をする。

香織も礼をして、そのまま社内へと入っていく。

野崎が、エレベーターのボタンを押し


野崎「綺麗だな。あの人」


野崎が振り向くと、二階堂が重い顔をしながら社内を見ていた。


野崎「どうかしましたか?」


二階堂は社内を見つめながら


二階堂「野崎」


野崎「はい」


二階堂「先戻っててくれ、俺ちょっと忘れ物」


野崎「えっ、ちょっと野崎さん」


二階堂は走って社内へと入っていく。

野崎は黙って立ちすくむしかなかった。

長い廊下を進んでいる香織。すると後ろから


二階堂「前崎さん」


香織が後ろを振り向く。そこには走ってくる二階堂の姿があり、驚きながら


香織「二階堂さん?」


二階堂が息を切らしながら、香織の前で止まり


二階堂「ここレストランありましたよね?」


香織「えぇ、106階と107階に」


二階堂「一緒にご飯食べませんか?」


香織「はい?」



~第3話終わり~


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