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絆〜18年前の悲劇〜  作者: 柿崎零華
1/9

第1話〜2019年〜

2019年12月の寒い時期の夜、ニューヨークマンハッタンミッドタウンに位置する日本企業「明治製薬ミッドタウン支社」の社員は外の雪を見ていた。外の景色は街が雪に覆われていた。冬になると当たり前な景色だが、とある会社員だけは外を見ながら18年前のことを思い出していた。その男の名は二階堂義文、彼は長年この会社で働いており、今年で30年と長いキャリアを持った人物である。だが彼は、一切出世をせずに今も営業課長止まりである。そんな彼も、今年でこのニューヨークを離れ、フランスのパリ支社に移動になる。このニューヨークを離れることは彼にとって辛いことだった。その理由は妻の香織の事だった。彼は香織の写真を見ながら外を見ていた。すると、彼を呼ぶ声が聞こえた。振り向くと、誰もいなくなっていたオフィスに香織の姿があった。


二階堂「香織…」


気づくと香織の姿がなく、他の社員が帰る支度をしていた。


二階堂「幻覚か」


彼はそう呟いた。そして夜が明け、彼はいつも通りに出社した。そして朝会で部長である野崎彰男から移動の報告を行った。


野崎「みんなも知ってる通り、明後日から二階堂君はフランスにあるパリ支社に移動となった。そして今日は二階堂君から挨拶を行った後の夜に、送別会を行うことにした。欠席者は受け付けいない、全員参加だ」


周りが笑いに包まれる。そして野崎から話を二階堂に振った。


二階堂「ただいま、野崎部長からもお話があった通り、私は明後日付でフランスのパリ支社に勤務となりました。このニューヨークで30年働き、ニューヨークが第二の故郷として暮らしてきました。今去るとなると不安と悲しみが大きいです。でも頑張っていきます。皆様どうか応援の方よろしくお願いします」


社員の拍手の音が壁や天井を突き破って行った。夜、勤務を終えた社員は、近くにある日本人行きつけの居酒屋「蛍」に立ち寄った。そこの大将の尾澤道久は長くこのニューヨークにいるベテランである。野崎も二階堂も明治製薬の社員はほとんど大将の顔を知っている。そのため野崎は二階堂の送別会には最適な場所としてこの居酒屋を選んだ。


尾澤「いらっしゃい、あれなんだい、みんな引き連れちゃってさ」


野崎「この二階堂君が明後日からフランスのパリ支社に移動となったんだ」


尾澤は少し顔を暗くした。そして二階堂に近づき


尾澤「そうか、君がこのニューヨークを離れるのか、もちろん香織ちゃんも連れてか」


二階堂「はい、もちろんです」


一気に居酒屋の空気が悲しくなる。明治製薬で唯一の平成生まれで3年前に東京から移動してきた新人の大井雅也はその尾澤と二階堂の会話が理解できなかった。それもそうだ。3年前にこのミッドタウン支社に移動されてからも、二階堂の過去話は一切聞いたことがなかった。今までずっと聞きたかったが聞けずじまいでこの日を迎えてしまった。今がチャンスだと思い、


野崎「それでは二階堂君の幸運を祈って、乾…」


大井「待ってください!」


みんなの視線が一気に大井に集まる。


野崎「どうした大井」


大井「俺、この際だから聞きたいです。さっき大将さんと話してた内容を細かく知りたいんです。もしかしたら過去の話と何か関係があるんだと思うんです」


野崎「大井!、あんまりその話はするな」


二階堂「いいんだよ部長」


野崎「でも」


二階堂「そうか、大井君には話してなかったっけ?」


大井「えぇ」


二階堂「確か話したのは、野崎部長と大将ぐらいかな」


大井「え?みんな知らなかったんですか?」


他の社員が頷く


二階堂「よし、この機会だ、話そう、俺の妻は死んだんだ。アメリカ同時多発テロ事件で」


大井の目が大きく開いた。この事実を知っていたのは大井だけだからである。他の社員は亡くなったことは知っていた。


二階堂「俺と妻との馴れ初めから話そう。そしたら繋がるからな、あれは事件の5年前の1996年だった。





第1話終わり

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