第六話 冥界神の宝
私は、英雄ライオス、騎士アドニスの二人が相手でも、技量では、優っていた。
守護天使長クリムの強化と防御魔法、亜神マキナの予測不能の攻撃が加わり、形勢が変わった。
寄ってたかって、ズタズタに削られ、最後に瀕死になっても、念押しと首を切断された。
神と、長い長い寿命を生きたのに。終わった。
あ・・・?
死ぬと、魂となる。
気付くと、冥界神の元にいた。霊を感知出来る彼は、指先で虚空をスライドし、丸い緋緋色金の宝珠に私の魂を移す。
ケルベロスちゃんもいた。美しい顔で、沈痛に見つめる。
二人が、低く、高く、場を埋め尽くす異常な魔力を音声で操作しだす。透き通る輝き。
この魔法は、『復活』の魔法。
肉体を完全復元出来る代わりに、対象の存在に比例して、魔力を大量に消費する。
神話にも登場した超高位神級魔法。
術後は、身体の復元に時間がかかる。無防備だ。
その為、オリハルコンに入れてくれたのか。
語りかけられた。
「・・・エイダ、こんな目にあわせて悪かった」
「ごめんね!」
涙を浮かべる二人。
震える。
(私は、この方達を置いて行けないの)
宝珠は、瞬間、透き通る水晶の様に光、中で、身体の再生が始まった。
槍が刺さり、血に染まっていく冥界神メティスに、ケルベロスちゃんの目が恐怖に見開かれ、悲鳴が響く。
「冥界神・・討ち・・取った・・」
虹色、転移の光。冥界神と眷属神が異世界に消えた。莫大な宝も宝物殿ごと主人に従った。
私は宝では無い。置いていかれると思いました。
再生中のこの身体は、宝の一部である緋緋色金の中。
黒猫を抱いたあどけない少女と、赤子を抱いた黒髪の少女の出会いも、悲壮な妊婦のお腹に、赤子が吸い込まれるのも見届けた。
(守護竜王エイダ。どこまでも、お連れ下さいな)
地球に、移動して来た宝物殿。その中に有る一つのオリハルコンが、使命に駆られ輝いている事に、まだ誰も気が付いていなかった。