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第三十話 甲斐 蛍

 甲斐 蛍は、東京都の生まれ。当時は土岐とき姓で、保育園児の時、神奈川県の幼稚園に転園した。


 若い女性の先生が紹介した。


「○○幼稚園から転園して来た土岐ときほたるちゃんです。皆んな、仲良くしてあげてね」


「○○保育園だよ?」


 と蛍が訂正すると、


「保育園だって〜!」


 周りの園児達に失笑された。


 保育園が馬鹿にされるとは思っていなかった蛍は、神奈川県に来て早々悲しくなった。


 蛍は、生まれつき身体が弱い。排気ガスの多い都心から、比較的、空気の良いここに移ったのも、両親の愛情なのだが。


 保育園には、優しい先生や、年下の可愛い友達もいたので尚更惨めだった。


 身体が弱く、皆んなの様に活発では無かった蛍だが、その頃から美貌の片鱗が有った。


 幼稚園の先生達は、蛍に目をかけ、可愛がってくれた。同じクラスの園児も、特に蛍を攻撃したりしなかった。


 でも、運動の出来ない蛍とは、卒園迄、距離が有った。


 身体の不調や、人との距離を縮められない蛍は、そのまま小学校に入学。


 集団登校の班で、地域が同じで1学年先輩の甲斐 秋一と出会った。


 どんな出会いだったか。


 元気に皆んなと挨拶していた秋一は、初めて蛍を見た時、じっと見つめて驚いた顔をしてしまった。


 初めて母親以外の異性を、可愛いと思った。


 それだけで無く、何か感じる物も有った。


 異性の先輩に変に見つめられ、その時は不安になった。でも、秋一が優しい子だと直ぐに分かる。


 学校通学は、教材、荷物が色々有る。最近は、軽いランドセルが有るがこの頃の物は、まだ重かった。


 辛そうに、荷物を背負う蛍の体調を察して、まだ小さな少年は、登下校時、蛍の荷物を運ぶのを自ら率先して手伝ってくれた。


 見かねて上級生達が、手伝ってくれる事も有った。


 申し訳ない。彼は、自分の荷物も有るのに。それは、とても頼もしかった。


 彼と会える。学校に行くのが楽しみになった。


 この頃から幼馴染おさななじみの先輩と後輩。秋一は、変わらず蛍を守ってくれる。


 やがて成人し、2人は結ばれた。


 空を身籠みごもり、出産に恐らく蛍が耐えられないかも知れないと知った時。秋一は泣いていた。


 蛍を抱きしめてポロポロと涙の雫が落ちた。


(ああ、愛されている。死にたく無い。この人をこれ以上悲しませるなんて)


 蛍も泣いてしまった。


 神様に祈った。毎日、毎日。


 その祈りに、巫女ファウナが気付き。肉体を失い、この世界に神霊として転移していた冥界神メティスに選ばれた。


 お腹の子と、メティス神の魂が融合。蛍に恩恵が与えられた。初めて蛍は健康になれたのだ。


 秋一の妻。空の母。そして今。ゲーム〈ソーサリースフィア〉の画面上。


キャラクター作成。


容姿:

種族:貴神(先祖返り)

名前:甲斐 蛍

性別:女性

年齢:

職業:


 ファウナは、それを見て微笑む。


 蛍は。


「私、人じゃ無い?」


 種族が人族で無いなんて。


「「貴神」」


 秋一と空が呟く。とうとい神という事か。亜神でも無い。


 空は蛍が、神の系譜なのはファウナから聞いていた。


 でも、秋一の神剣ソハヤノツルギにしろ、蛍の神性にしろ、これまで気付けなかった事に、空は感知能力がまだ回復していないと焦りを覚えた。


「おば様! 神様だったんですか?!」


「おじ様もおば様も神様に!」


「ええ?! 私に聞かれても分からないわ。私、人じゃないのかな? 空君」


「母さんの祖霊を、見て見ます。失礼します」


 空が呪文を唱えると、右手人差し指と中指の先に紫色の光が灯る。光が軌跡を描き、その指を母の額に当てる。


 目を閉じる。温かい温もりを互いに感じた。


 事の成り行きを、見守る一同。


 蛍。その父母、祖父母、曾祖父母、どんどんさかのぼって行く先祖達の姿が、空には見える。


 昭和、大正、明治、江戸、安土桃山、室町、鎌倉、平安、奈良、飛鳥・・・・・・蛍の家系、土岐氏は貴族の家系。藤原氏?


 歴史上の人物、藤原不比等ふじわらのふひと中臣鎌足なかとみのかまたりの姿が現れたのに驚く。更に遡る。


(月。女神。僕と、母さんに似ている。だからか)


 指を母の額から離し、目を開けると魔法が解ける。


「空君」


 不安気な母に、笑顔で。


「はい。母さんの祖先に神様がいました。日本神話。古事記、日本書紀に登場する3貴神の1柱。月読命つくよみのみこと。僕を生んでくれた事で、母さんは、その神性を取り戻した様です)


「「「!!?」」」


 月読命。日本人なら、名前位なら知っている人もいる。性別は伝わっていない。絵姿で、男神と伝わる事も有る、月と夜の神。


 天照大御神あまてらすおおみかみ、月読命、須佐之男命すさのおのみことの3柱を指し、3貴神と言う。


 位の高い神様なのだ。あの、聖徳太子が敬った神と伝わっている。


 皇大神宮の別宮である月讀宮つきよみのみや、豊受大神宮別宮の月夜見宮、山形県の月山神社、全国の月読神社、月讀神社に祭られているが、他の三貴神と比べると、祭る神社の数はかなり少ない。


「〜〜〜〜〜!」


 蛍は驚いている。突然、貴女は人では無くて神様ですと教えられれば、混乱するだろう。


「良かった! 私も秋一さんと同じになれたのね」


「と言うか、11年前からなってたみたいです」


 空を産んだ日からだ。


「蛍さんが、あの頃の姿のままなのがやっと分かりました」


 蛍が空に似ているのは、皆の知る所だが、その若々しさも失われないのだ。


「もしかして、僕も歳を取らなくなるのかな?」


「はい。亜神になった事で、歳を止める事も出来ます。それに父さんは、さっき、年齢20歳と入力してたから」


 秋一は以前より、少し若々しく見える。


「うん。僕の身体が、最盛期の年齢にしたんだけど、まずかったかな? その方が、皆んなの役に立てると思う」


「私も、皆んなの役に立ちたい! 空君、この後は職業よね」


 さり気なく、蛍は年齢を18歳と入力していた。


(〜〜〜大変な事になってる! これ良いんだろうか? 空君家族)


 桜は、姉、ケルベロスちゃん、ファウナ、詩歌を見る。


 同じ様な事を考えているなと、目で会話。


(良い・・・・・・のかな)


 空君家族は、とても幸せそうだったから。


 蛍の選んだ職業は。


「これ強そう。魔物使い。えい」


「「「ええええええーーー?!」」」


 皆んなが驚いた。すると、〈魔物使いの初期ボーナスが、お受け取りになれます。〉と表示された。


「まだ残ってたのね。〈受け取る〉♪」


 ボックスを開けると、ピコーンと効果音が鳴り、〈神和鏡 零式(ぜろしき)を入手した。〉スキル 月鏡つきかがみ、スキル 写鏡うつしかがみ、スキル 月天げってん、スキル 加護を覚えた。


 職業:魔物使いが、職業: 迦具夜かぐやになった。


「え?!」


 また驚きの声をあげたのは空。


「魔物使いの初期ボーナスに、僕が用意したのは魔法水晶アポクリファという幻獣使いに転職する為の宝物です。母さんの神性に影響されて、僕の知らない鏡に変化しています。魔物使いの上位版だと思いますが、迦具夜かぐやがどんな職業か調べないと」


「・・・・・・僕にも分かりません」

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