表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/41

第二十九話 伝家の宝刀

 ゴールデンウィーク2日目。同人ゲーム〈ソーサリースフィア〉内では告知が有った。


 冥界迷宮探索の、ランキング付けが開始され、それに伴い。現時点での順位にも報酬のアイテム、スキルが、プレイヤー各自に付いている迷宮妖精から、ランキング10位以内に入った者に授与された。


「冥界神メティス様からの、ご褒美ほうびですよ〜。おめでとうです♪」


 進出階層、順位、受け取った報酬は全てのプレイヤーの知る所となった。


 今、もっとも下層に進出しているプレイヤーは〈グレース〉、〈ストレイシープ〉、〈アシェラ〉で、共に地下78階層。


 同率首位。


 この3人には同時に、多方向から来る攻撃も12撃迄、完全自動防御してくれる〈イージスの盾〉と、それぞれに新たな武器が付与された。


 次いで〈結花〉、〈ロザリンド〉、〈幸村〉、〈聖〉の地下69階層。同率4位の4人には、魔力と力を倍増する〈栄光の指輪〉が。


 〈黒武〉、〈勇輝〉、〈マアヤ〉、〈美夜〉、〈晴明〉の同率8位の5人。地下63階層。それぞれ傷を時間経過と共に自動で癒してくれる〈ナイチンゲール〉と言うスキルを得た。


 残るプレイヤーは、13位以降になってしまい、トップ10のランカーを羨んだ。


「僕達は、地下58階層で13位でしたね」


「惜しかった」


 とそら、ケルベロスちゃん。甲斐かい家での事。


 ファウナ、真白ましろ、桜が微笑む。そして、新たに空に師事し、加わりたいと言う詩歌しいか


 学生が、勉学、家の手伝い等もこなしながらだから、かなり頑張った順位。


 逆に、トップ10のプレイヤーが、異常な進出をしている気がする。


 2台のパソコンを交代で使うしか無かったのだが、空の父、甲斐かい 秋一しゅういちがこの度、人数分のノート型パソコンを用意してくれた。


 過分な、好意に子供達は驚く。


 午前中、空は全てのパソコンのセッティングで、大忙し。


 お昼は真白の主導で、わいわいと分担して、子供達で料理を作る事になった。


 空の父母。秋一と、ほたるに何か喜んで貰える事が出来ないかと。話し合い、お小遣いで食材を買ってお料理を作ろうという事になった。


 JAZZジャズ喫茶が忙しい父母に代わって、簡単な料理を作る事が有るのは真白。


 責任重大と緊張しながら、指示を出す。


 お湯に玉子を入れ、温泉たまごをず作る。


(ファウナ担当)


 包丁で、ジャガイモ、人参、玉ねぎを一口大に切って。


(真白、ケルベロスちゃん担当)


「やっぱり、玉ねぎは目にみるね〜」


「本当」


 皆んなで涙目になって逃げ出したり。戻って来たり。


 海老のからいて、背わたを爪楊枝つまようじで抜く。器に入れ、塩水で軽く洗って、片栗粉をまぶす。


(真白、桜担当)


「海老の器は、ラップをして1度、冷蔵庫に入れて置こうかな」


「うん」


 お湯を沸かし、コンソメを適量溶かし入れたお鍋に、まず人参と玉ねぎ、しめじを投入し火にかけタイマーで20分強計る。


(タイマーは、詩歌担当)


 途中で、ソーセージを入れる。この辺はアバウトだ。


 タイマーが鳴ったら、ジャガイモを投入。


 火をかけたまま、再び7分計り、時間が来たら、海老と、缶詰めのスライスマッシュルーム、温泉たまごを投入。


 火は止めず、そこから3分計り、黒胡椒で味を整え、時間が来たら火を止め完成。


 丁度ちょうど、部活の朝練指導を終えた秋一が帰宅。玄関から、リビングにやって来る。


「ただいま」


「お帰りなさい。秋一さん♪ お疲れ様です」


「お帰りなさい。父さん」


「「「お邪魔してます。おじ様」」」


「いらっしゃい。皆んな。今日はありがとう。お昼、楽しみに帰りました」


「はい♪ 今、出来ました。ご用意しますね」


「ありがとう。手を洗って来るね」


 真白が、皆んなの分をお皿に盛り付ける。


 子供達も、人数分のお水を用意。炊いておいたご飯をお皿に盛って、席に着く。


 リビングテーブルは大きい。


 でも、8人も居ると流石に手狭。6人なら、無理に座れなくも無いが。空、ケルベロスちゃん、ファウナ、桜は、キッチンカウンターの椅子に座った。


「おじ様、おば様。どうでしょうか?」


 子供達が、期待して秋一、蛍を見詰める。


「ポトフなのね! いい香り。海老と、マッシュルームも入ってるわ。具沢山で、美味しそう♪」


「ポトフか。本当だ。これ、凄いな」


 子供達で作ったポトフは。


「「美味しい!」」


 人数分の声。


「皆んなで作ったからです♪ 藤林家では、ソーセージはポトフで食べるのが大好きで。私のお料理は、簡単な物ばかりで、レシピも割と適当なんですが」


「その年でお料理もしているのね。こんなに作れるのは凄いわ。皆んなも、ありがとう♪ 空君は幸せ者ね。こんなに可愛い子達と将来を約束して」


「だね」


「はい!」


 蛍、秋一、空の言葉に、皆んなで、ほんわかとはにかむ。


 甲斐家では、子供達の仲は公認になった。


 食後。食休みを挟んで。


「真白さん。霧谷きりや 詩歌ちゃん」


「「はい?」」


「僕は、立帝りってい中学校で歴史を。中学校と高校で、剣道を教える先生なんだ」


「え!? 立帝中学校の、甲斐先生なんですか!? 剣道部の顧問の、お兄ちゃんのいつも話してくれる日本一の先生!」


士涼しりょう君の!? おじ様が剣道を!」


「うん。僕も、先日、記憶乙女アーカーシャに記憶を見せて貰って、こんな偶然が有るんだね。2人には、話して置かなきゃと思ったんだ」


「偶然じゃ無いんです。お兄ちゃんが、立帝を選んだのは、甲斐先生が、日本一の剣道の先生がいるからだったんです」


 瞳を輝かせる詩歌。


 秋一が微笑む。


「じゃあ、空君も剣道を習っているんですか?」


 ワクワクと、嬉しそうに聞く藤林 桜。


「いや、まだ教えて無いんだ。でも空は、何か闘うすべを会得していただろう?」


「「?!」」


「お父さん。気付いていたんですか」


「うん。空と、ケルベロスちゃん。2人のまとう空気には、畏敬いけいの念を感じるんだ。戦わずに勝つ。達人の境地とは、こういう事かと思ったよ」


「凄い!」


 ケルベロスちゃんが、秋一の観察眼に驚く。


「ところで、機械神デウス・エクス・マキナは、この地球にやって来ると思うかい?」


「あちらで、神々はソーサリースフィアの損害を恐れて、機械神、魔族との全面戦争に踏み切れていない。人間の騎士アドニスに、四大精霊の力を宿す聖剣を託した様ですが、人類だけで、対処出来るとは思えません」


「うん。あちらからやって来るか、空自身、あちらに戻るつもりなんだね」


「はい」


「僕は、空の力になれそうかい?」


「はい。この上無い力です」


「そうか。教え子の、霧谷 士涼が、ここの所、急激に力を付けたのだけど」


 ゲーム版ソーサリースフィアのフィードバックだ。


「僕も、そのゲームに挑みたい」


「はい。お願いします」


「私も!」


 蛍が名乗り出る。空は戸惑とまどったが、これは秋一の予想通りだ。


 ノート型パソコンは、()()()用意して有った。


 スタート。オープニングアニメは、スキップする。


 キャラクター作成。

容姿:

種族:人間ヒューマン

名前:

性別:

年齢:

職業:


 容姿の所に、秋一の優しげな顔が入った。


「このゲームのシステム。パソコンのカメラを利用して、製作者本人の姿を映してキャラクターを作れます。ゲーム内では、〈魂映し〉と呼んでいます。」


「でも、これって」


「はい。本当に魂、身体をゲーム内に投影し、鍛える事が出来る魔法のゲームです」


「種族人間。名前、秋一しゅういち。性別、男性。歳。」


「歳は選べるの?」


「最初だけ、若くも年老いる事も出来ます」


「え!? そうだったの?!」


 実年齢を選んでいた子供達が驚く。


「職業は」


 選択肢に有るのは。


 剣士、戦士、双剣士、魔剣士、侍、槍使い、弓使い、忍者、武闘家、ガンナー、盗賊、学者、僧侶、巫女、モンク、魔法使い、召喚士、精霊使い、魔物使い、死霊使い、軍師。


「侍。かな」


「あ、でも侍の初期ボーナス武器は、もうお兄ちゃんが貰っちゃいましたけど・・・・・・」


「あっ」


 そうだ。銘刀〈千代童子〉は、霧谷 士涼が所有している。侍大将にジョブチェンジするきっかけだった。


「このゲームで手に入った装備は、実際に現れる。という事は。・・・・・・持ち込みも可能では?」


「ああ♪」


 蛍が何か意味深な声を。


「はい。持ち込みは可能です。でも、このゲームで与えられる武器は、国宝級を超えるかも知れません」


 それに、頷き答える秋一は。


「持って来る」


 と、リビングを離れた。そして、さほど掛からず戻る。


 その手に、西陣織(にしじんおり)きらびやかな刀袋を握って。


「父さん? !?」


(今迄、気付かなかったなんて!)


「「「神剣?!」」」


 ケルベロスちゃんと、ファウナも気付いた。


「これは、甲斐家に先祖代々伝わる大刀〈ソハヤノツルギ〉だよ」


 刀袋から出し、黒漆塗くろうるしぬりさやから抜いた刀は、美しい鋼の輝き。


「! 征夷大将軍 坂上田村麻呂さかのうえのたむらまろ佩刀はいとう?」


「うん。本物かは分からないけど、武田家滅亡前、甲斐家に下賜された。そう伝えられているよ。僕はこの大刀に、空とケルベロスちゃんに感じる様、畏敬の念を感じるんだ。・・・・・・つまり?」


真作しんさくです」


 真作とは、本物の事。父と子が頷く。


 ゲーム画面。


〈ソハヤノツルギの所持により、スキル 鳴神なるかみ、スキル 随神かんながら、スキル 剣禅一如けんぜんいちじょを習得した〉


 職業が〈剣聖〉になった。種族が〈亜神〉になった。


 と、続けて表示された。


 ゲームに投影される秋一の能力は、現時点、〈()()〉だった。そして、この能力は実際にフィードバックされるのだ。


 亜神。新たな神の誕生に、皆、秋一本人ですら驚きに包まれ、興奮冷めやらぬ内に、蛍の番になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ