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第二十七話 古着屋さんデビュー

 神奈川県に隣接する商業都市。百貨店、ショッピングモール、2つの路線の駅も在る大きな街。


 欲しい物が有った時や、ちょっとしたお食事で、この街に遊びに来るのは楽しみ。


 ゴールデンウィークの今日。私達は2人で、買い物に来ています。


 最近、髪を伸ばし始めました。


 私の隣に立つ、腰まで伸ばした艶やかな黒髪、白い肌、美しい容姿の少女の様に少しでもなれたらと。


 私の今日の装いは、ワンピースにデニムシャツを羽織り。トートバッグを肩に。


 ケルベロスちゃんは、グレーのVネックシャツに、カーキのカーゴパンツ。革のベルトをちょっと見せて。肩に、メッセンジャーバッグを斜め掛けに背負っている。


「視線が」


 若者の街と言われるこの街。綺麗な子も、お洒落な子もたくさん歩いている。


 だけど、歩いていると私達の動きを追う視線がどんどん増えて行く。


 流石、ケルベロスちゃんだ。


「桜ちゃん」

 

「あの人達、付いて来ました」


 早歩き。


「あの!」


 女の子が声を掛けて来た。


「お姉さん達、モデルさんですか?!」


「「え?」」


「その服どこで売っているか聞いても?!」


「ファッション誌のモデルに興味有りませんか?」


「可愛い! どこかの事務所の子ですか? 一般人?! う、ウチの事務所どうですか!?」


「サイン下さい!」


「こんな可愛い子達、初めて見ました! お名前聴いても良いですか?! 僕の名前は」


「?!」


 私達を中心に、人集りが出来て。


 困り顔になってしまう私とケルベロスちゃん。


 何これ!? どうしよう。


 今日は、ケルベロスちゃんのオススメの古着屋さんに初めて連れて行って貰うのに。


 私は、竜王エイダの記憶と能力を受け継いでいる。〈竜眼〉を使おうか?


「私達、買い物に来ているの。邪魔はしないでね」


 ケルベロスちゃんが、周囲を見る。


 道を塞いでいた人集りが割れた。


 え? どうやったの?


 脱出成功?


 歩きながら。


「桜ちゃん。これを」


「私の加護と、空様の力が込められているわ」


「お守り! 頂いて良いんですか?」


勿論もちろん、良い」


「ありがとうございます♪」


 凄い! ご利益有るよ! 神様から貰ったんだもん。


 早速、バックに取り付ける。


 そのビル。入口に、お洋服を着た2体のヘッドレスマネキンが迎えてくれた。


 階段を登ると、古着屋さん〈クロウ〉が在った。


「いらっしゃいませ」


「こんにちは」


「ああ、お久しぶりです。また、ミリタリー の新しいの入ってますよ」


 お洒落な店員さんと挨拶するケルベロスちゃん。


 レディースの服を見るのかと思ったら、先ず、メンズ服のコーナーに進んだ。


「本当だ。ミリタリー ジャケット。結構、新しいのが増えてるわね」


「ゆっくりして行って下さいね」


 生き生きと、洋服を見ている女神様。


「ケルベロスちゃん。昔は可愛い服着てたのに、最近はミリタリー が多いんですね?」


「軍物は、ミルスペックという基準を満たしているから丈夫だし。メティ・・・・・・空様を護るには、こういう服の方が。それに、か、カッコ良いから」


 語尾が小さく。この女神様は、なんて可愛いんだろう。


「あ、良いのが有った。これサイズは。うん、良さそう。試着して来るわ。桜ちゃんも店内見てみて?」


「はい」


 私も笑顔になる。


 店内には、数組のお客さんがいて、服を見ていた。


 あれ? さっき私達に、どこで服を買ったか聞いて来た子が、目をキラキラ輝かせて店内に入って来た。


 う〜ん。見なかった事にしようかな。


 私は、レディースコーナーに移動する。


 シャツ、ボトムス、バッグ、帽子と、それぞれコーナーが分かれている。


 あ、キャスケット帽。お姉ちゃんが好きそう。でも、帽子はかぶらないとサイズが分からないからなぁ。


 バッグもブランド物が有った。でも、ちょっと私には高いし。使用感が有る?


 シャツを見る。


 ブラウス。ワークシャツ。花柄の刺繍。デニムシャツ。ネルシャツ。ミリタリー シャツ。ドット柄。チェック柄。ストライプ。


 一点ずつどれも違う。


 見ていて楽しいけど。サイズが合わないといけない。


「あ」


 鴨の羽色の綺麗な青緑に、鴨のイラストが描かれたTシャツ。


「可愛い♪」


 タグは¥500。サイズも大丈夫そう。


「あ、良いの有ったわね」


「はい♪」


「状態は見た?」


「・・・・・・大丈夫そうです。このシャツ。私も試着を。あ、でも今日、私ワンピース」


「ボトムスも試着すれば大丈夫よ」


「なるほど♪ このシャツだと下は、ジーンズかなぁ」


「そうね。お兄さん。この子のお洋服見立てて貰えます?」


「このTシャツに合わせたいんです」


 店員さんが、売り場を見てくれる。


「そうですね。スキニージーンズが良いと思います。この辺りに確か。・・・・・・有りました。これ、どうでしょうか。サイズは」


「サイズ大丈夫だと思います。状態は。うん。¥700。試着して良いですか?」


「勿論です」


 試着室で着替える。カーテンを開けると、


「似合ってる♪」


「はい、とてもお似合いです」


 笑顔のケルベロスちゃんと、店員さん。そして、先程、見なかった事にした女の子が手を叩いて拍手してくれていた。


 私は、その2点を買い。ミリタリー ジャケットを購入したケルベロスちゃんと、お店を出た。


 あの女の子は、嬉しそうに店内を物色していた。面白い子だ。


 今日は、真白お姉ちゃんは、お家に霧谷 詩歌ちゃんを招いている。


 ファウナさんは、空君を独り占め出来るからと、残ったらしい。


 でも、楽しかった。ケルベロスちゃんとの記憶は、エイダから受け継いだ物が大部分だけど。


 とても可愛らしく。私を見る目は、とっても優しく。


 恋敵の私を受け入れてくれた。


 本当は、メティス様が愛していたのは、ケルベロスちゃんだったのに。


 甲斐 空君に転生した彼は、私と真白お姉ちゃん、ファウナさんも、ケルベロスちゃんと同列に扱ってくれる。


 私は空君と、ケルベロスちゃんの、ソーサリースフィア帰還の為に力を尽くす。


 あの神殿に、お2人をお帰しする。その時は、私も共に行く。お護りする。


「お昼にしましょう」


「はい。何か食べたいお店有りますか?」


「桜ちゃんは?」


「牛タン!」


「良いわね♪ 行きましょう」


 ショッピングモールに在るそのお店に行ってみると。値上がりしてた・・・・・・


「高くて食べられません」


 しょんぼり。


「上がったわね〜。他に行きましょうか。他にも色々有るわ。和食、洋食、イタリアン、インドカレー、タイ料理、カフェ、ラーメン、ハンバーガー♪ 何が良い?」


「そうですね。タンメンの美味しいお店なら、知っているんですけど」


「そこにしましょうか!」


 中華飯店で、私達はタンメンと、杏仁豆腐を頼んだ。


 店内は、昼時と有って賑わっていた。


「桜ちゃん。竜人になって、どう? 何か体調に障りは無い?」


「多分、運動は、本気を出したら世界新記録を軽々出してしまいそうで。たまに空も飛びたくなりますね」


「そうか・・・・・・桜ちゃんは、エイダをどう思ってる?」


「優しいヒトです。誰よりもメティス様と、ケルベロスちゃんの事を大切に思っている。私と、どんどん1つになって行く」


「うん」


「彼女は認めてくれた。永遠の寿命を私にくれた。空君との繋がりを確かな物にしてくれました。竜王を超える事を竜人わたしに託して。怖いけど、私は想いに報いたい」


貴女あなたの方が、優しいわ。桜ちゃん」


 2人涙ぐんでいると、タンメンの丼が運ばれて来た。


 お野菜と、豚肉の旨味が塩味の熱々スープに染みている。平打ち麺が、それをまとい、口に至福の時を運ぶ。


「「美味しい♪」」


 レンゲで、お箸で、美味しいね。と2人微笑み。


 タンメンを食べ終えると、丼が下げられ、冷えた杏仁豆腐がやって来た。


 白い杏仁豆腐。クコの実が飾られ、優しい甘さ、冷たく、滑らかな喉ごしが心地良いです。


「空様。今日は、ゲームのバージョンアップをするんですって」


「バージョンアップ。どうするのかな?」


 杏仁豆腐を食べながら。


「これから、迷宮最下層への挑戦を、毎週末ランキングするみたい。今日中に告知もするそう」


「順位! 何か特典を付けるんですか?」


「ん、多分、空様。相当奮発すると思う」


 わ〜。空君の奮発って、世界一豪華なんじゃ。


「桜ちゃんは、最近、絵はどう?」


「美術展、私もファウナも見に行った。桜ちゃんの、お社と、空様を描いた絵。素敵だった♪」


 とても、うっとりとした表情で言ってくれた。


 ケルベロスちゃん♪


 とても楽しい1日でした。

 藤林 桜ちゃんと、ケルベロスちゃんのお話でした。


 前回まで、作者が思っていた以上に真白お姉ちゃんの回になってしまい。


 この2人が、ずっと書きたかったので。書いていて楽しかったです♪

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