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第二十六話 ありがとう

 空と、寄り添う少女達のむつまじさ。


 ケルベロスちゃんは、長い時を生きているが、成長は止めた。見た目は15才くらい。


 真白ましろは中学2年生。13才。


 さくらは小学6年生。11才


 ファウナも、ケルベロスちゃん以上に長寿。見た目は10才以下に見える。


 1人の男の子に、4人の女の子。ハーレムルートに入った。



 阿刀羅あとら家は、2階建て4LDK。赤レンガ造りの西洋建築。


 ケルベロスちゃんの部屋は、2階に在った。


「ケルベロスちゃんのお部屋。可愛いです♪」


「うん♪ ピンクのお部屋〜。アンティーク調の家具もお洒落! ベッド、凄く大きいし。シャンデリアだよ! 外国のお洒落なお部屋みたいだね」


 落ち着き、部屋を見渡す藤林姉妹。


「出窓から、空様のお部屋が見えるの♪」


「「空君のお部屋が!?」」


 皆の視線が、出窓から見える景色に向く。


「良いね、桜ちゃん!」


「羨ましいです」


 わいわい言っていると。部屋の扉をノックする音。


「桜お嬢様? お帰りですか?」


「え?! あ、ケルベロスちゃんの事か」


 阿刀羅 桜。日本で、ケルベロスちゃんが名乗る仮の名だ。


「ええ。セバスチャン。空様と、ファウナ。お友達も一緒よ。紹介するから入って」


 扉が開く。


 黒のフロックコートを、着こなす上品な物腰。ロマンスグレーの髪を、オールバックに撫で付け。手入れされた口髭が素敵な老紳士。


「失礼します。お帰りなさいませ。桜お嬢様、ファウナお嬢様。空様、お友達の皆様いらっしゃいませ。阿刀羅家の執事しつじ、セバスチャンです」


「「「! 執事!」」」


 初対面の藤林姉妹、詩歌が、綺麗にハモった。


 渋く微笑むセバスチャン。


「ただいま。セバスチャン♪」


「セバスチャン。こんにちは!」


「はい。ファウナ様。空様も、ようこそいらっしゃいました」


「セバスチャン。こちら、藤林 真白さん」


「初めまして。藤林様」


「初めまして!」


「真白さんの妹の藤林 桜さん」


「初めまして。お嬢様と同じお名前なのですね」


「は、はい。桜です」


「霧谷 詩歌ちゃん」


「初めまして。霧谷様」


「! は、初めまして」


(セバスチャンさん。武術センス高いな。強い)


 真白は、それに気付ける様になっていた。


 桜も気付いた。


「皆様。今、お茶の支度を」


「! そうだった! 母さんがおやつを用意してくれてたので、僕達、戻るよ」


「詩歌ちゃんは、空間跳躍テレポート 聖杖が無くても使える?」


「使えないと思います。呪文が分かりません」


「杖が教えてくれるだろうけど、見てて」


 手で印を切る。


「神聖紋章の旗のもと 集え、福音ふくいんの使徒 諸王マギが告げる 不滅の扉よ 開け! 星の導き 我行くは賢者の道 アパテイア!」


 お辞儀する執事を残し。瞬間、見慣れた空の部屋に帰って来た。


 キラキラに瞳を輝かせて。空を見つめる詩歌。


 デスクの上、2台のノートパソコンが、端に寄せられ、フィナンシェの乗ったお皿と、ティーカップが7個ずつ人数分。


(人数分? 詩歌ちゃんと、アーカーシャの分迄?)


 部屋を出た空は、階段を降りる。リビングに、母、蛍がいた。


「母さん。おやつ、ありがとう!」


「はい♪ 空君。阿刀羅さんのお宅に行ってたのね。お帰りなさい♪」


(そうか。僕の部屋から、ケルベロスちゃんの部屋が見えたんだ。! あれを、見られたんじゃ!?)


「おやつ、7人分で良かった?」


「うん! でも、母さんの分は有ったの?」


「良いのよ」


「! 母さん、ごめんなさい。僕は良いよ!」


「食べて欲しくて焼いたの。空君とお友達で食べて♪」


「母さん。僕と半分個しよう?」


「空君♪ じゃあ紅茶淹れるわね。ここで食べようか」



 リビングに、呼ばれた少女達。


「私もおやつ食べていいの?」


 その子は、不思議な子だった。薄紫と緋色のグラデーションの、透き通る様な艶めく長い髪。闇と光を纏う様な不思議な装束。


 蛍が見つめ、幼女が見つめ返す。


「良いのよ。食べて♪」


 満面の笑みの幼女を、見つめる優しい顔。


「うん♪」


 楽しい時間。


 記憶乙女アーカーシャが、満ちた表情をしている。


 バターとアーモンドの風味のするフィナンシェも、アールグレイのミルクティーもとても美味しくて。


「ご馳走様でした♪」


 幻霊の身体が、薄れて。


「・・・・・・お別れです。また呼んでね」


 可愛らしく手を振った。魔法陣が現れ、明滅。


「ぇ?!」


 光が消えた時、記憶乙女アーカーシャは消えた。


「え、えっ?」


 蛍が、驚く。皆んなに動揺が走る。


 額に手を当てる空。


「・・・・・・詩歌ちゃんの魔力切れか」


(このタイミングで。・・・・・・僕も、覚悟を決めなきゃいけないね)


「ずっと言えなくて。母さんに、話さなきゃいけない事が有るんです」


「空君?」


 蛍と空。良く似た顔立ちの母子は見つめ合う。


 空は目を伏せて、自分をどうするかを母に託した。


「・・・・・・虚空よ。記憶乙女アーカーシャよ。世界のことわりを知る幻霊よ。甲斐 空の下に馳せ参じよ」


 再び魔法陣の文様が輝く。白く、青く、赤く、闇色に、明滅し、淡く照らす。


「?!」


 幻霊が現れた。にこやかに再登場した記憶乙女アーカーシャ


 口に手を当て、幼女と空を見つめる蛍。


 一方で、


「詩歌ちゃん。今日は、もう魔法使えないわよ」


「?」


 ケルベロスちゃんの言葉に、キョトンとし。


 聖杖を出す。振る。


 何も起きない。


「魔法が使えない。そういう事か。・・・・・・あの子ですか」


「そう。記憶乙女アーカーシャ。裏技みたいな召喚魔法だから、魔力消費量がね」


「レベル57だと、あれだけの時間しか召喚出来ないんですね」


「賢者の57は凄いよ。でも、杖に宿る分体だけの召喚じゃなく、本体が来ちゃったみたいだから。レベル200は欲しいね」


「分体と、本体で何が違うんですか?」


「本体は、宇宙のあらゆる記憶を持っているみたい。私も、空様もアクセス権限を持っている」


「分体は、私もよく分からないけど、本体と最後に繋がった時点で、記憶の最新版を受け取る感じなんだろうと思う」


「!」


 突然映像が、頭と5感に流れ込んで来た。記憶乙女アーカーシャの〈幻視〉が始まった。


 異世界創造。


 神々と魔族の戦い。


 冥界。冥界神と、加護の女神の日常。


(立派な神殿!)


(メティス様、美男子! まるで貴族様だよ!)


(阿刀羅 桜さんが女神ケルベロスちゃん!)


 竜王ドラゴンロードエイダとも、穏やかな時間が流れる。


 思わず微笑んでしまう。その記憶に和んでいると。


 ・・・・・・英雄一行がやって来た。


(っ!?)


 エイダ、メティスは討たれた。


 残酷さに、恐怖する。


 地球への転移。巫女ファウナの導き。


 転生。甲斐家と、阿刀羅家。


 大魔王の復活と大戦の始まり。


 空の成長。仲良し家族。小学校での日々。


 記憶乙女アーカーシャと、冥従神ハーデスを利用。ゲーム〈ソーサリースフィア〉。


 藤林姉妹との出会い。暖かい思い。


 プレイヤーに下賜かしされて行く武器、魔導具。


 エイダ、藤林 桜と竜人ドラゴニュートになる。ふるえる少女の気持ちが伝わる。


「「っ・・・・・・!」」


 アーカーシャがクルリと回って。動きを一度止めた。


 蛍、藤林姉妹、詩歌が泣いている。


 詩歌が、真白に抱き付く。真白が受け止める。


「これが、空君達の、桜ちゃんの抱えていた秘密なんだね」


 教えてくれた。


(・・・・・・空君は、桜ちゃんだけで無く、私も選んでくれた。私は、何をすれば良い? 何でもするよ?)


「空さんと・・・・・・桜さんと、同じ小学校でした。私、真白ちゃんの後輩なんだよ」


 幻視は、まだ終わらない。


 真白の初恋。思い出。士涼の拒絶と、悲しみ。


(真白お姉ちゃん!)


(お兄ちゃんの馬鹿!)


 弓道部。的に必中する矢。不安な思い。


 霧谷兄妹との再会。動揺。


 実体化する武器、装備。


 スキル〈誘惑〉の攻略。婚約。


((((〜〜〜〜〜〜っ?!))))


 こうして見ると身体が熱い。赤面モノだ。


 ここで、幻視が終わった。


 甲斐 蛍は、涙をぬぐう。空を見つめるその目は。


(こんなに優しくて、素敵な貴方達)


「空君! メティス様! 生まれて来てくれてありがとう! 大好き」


「っ、僕も! 母さん!」


 母子は、涙目でにっこり。


「空君。秋一さんにも、この事を伝えて欲しい。空君の力になってくれるわ」



 ◆


 空間跳躍テレポートで来ていた詩歌が、魔力切れで魔法では帰れなかった。


 魔力は一晩眠れば回復する。魔法で送ると言う空を止めて、真白が近いから送って行くと言う。心配された。


 失恋の痛み。


(もう、乗り越えるんだ。私には空君がいる。桜ちゃんが、皆んながいる)


 詩歌は、靴を履いて来なかったので、空がブーツを出した。くと、サイズがピッタリだった。


 夕方、真白と詩歌は手を繋いで歩く。


 詩歌は、本当に真白になついている。


「真白ちゃん♪ 真白ちゃん♪」


(詩歌ちゃん、可愛いなぁ!)


 短い時間、色々な事を話しながら。


 道は覚えていた。


 霧谷家の住むマンション。その前に士涼がいた。


「お兄ちゃん」


「詩歌。・・・・・・真白ちゃん。ごめんなさい」


「・・・・・・うん」


「本当に、ごめんなさい! 僕、真白ちゃんの事が好きなんだ!」


「!」


 5月の風が吹く。


 片想いでは無かった。


(・・・・・・あの時、そう言ってくれたらな)


 目を閉じ、開く。


「もう遅いよ?」


 左手の薬指。孔雀石の指輪を見せる。


「私、婚約したの。その男性ヒトの事が大好きです♪」


 士涼は、唖然。


 初恋は、実らなかった。


 でも。


 少女はあの時よりも、益々魅力的に。夕日の下。とても晴れやかに、微笑んだ。


 曇り空はもう晴れていた。

 今回、中々、文章が決まらず時間をかけてしまいました。


 何とか、形に出来てホッとしています。

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