表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/41

閑話 看板娘

 JAZZ(ジャズ)は、アメリカ、ルイジアナ州ニューオリンズで誕生したとされる。


 アフリカ系アメリカ人の音楽がルーツだ。


 その、スイングするリズム、即興演奏。独自のスタイルに、虜になった人は多い。


 JAZZ(ジャズ)喫茶トゥー・シスターズ。


 ここは、そんな人達が集う場所。


 カフェランプの、抑えた照明の中。黒いエプロン姿の少女が、トレーに、料理を乗せる。


 客席に、帆立のグラタンを運び、笑顔で接客。


 センスを感じる照明の光が、ウッディな店内を、橙色だいだいいろに優しく照らす。やや仄暗い店内。


 店内に有るグランドピアノは、週末不定期に開催されるミュージシャンによる生ライブの際、使われる。


 年季の入ったレコードと、大きなスピーカー。


 今、そのスピーカーからは、有名トランペット奏者の奏でる心踊るリズム。


 音楽雑誌が置かれた机、レコードのジャケットが壁に飾られ、カウンターに、楽器を演奏をしている姿の黒人人形達。人気漫画も少し置かれている。


 こんな仄暗い中で、読書って、目が悪くなりそう。あまり、本を読む人は見かけない。


 老人、おじさん、おばさん、若者、家族。男女問わず、幅広い年齢層のお客さん達が、音楽を聴きながら憩って寛ぐ空間。


 その、メニューは、軽食のサンドイッチや、ピザトーストの他。


 帆立のグラタン、スープカレー(牛肉or豚肉or鶏肉)。数種類有るパスタと、意外に豊富。


 食事とセットドリンクにすると、千円ちょっとで提供している。


 ケーキセットも有る。


 ヨーグルトケーキ、チーズケーキ、ガトーショコラ、パンプキンケーキ。


 ケーキは、フルーツ、ミント、クリームを添えて、お洒落なプレートになる。


 音楽と料理で愛されるお店。


 お客さん達が、SNSにお店の料理や雰囲気を写真で上げてくれてもいる。反響もちらほら。


「帆立のほぐした貝柱が沢山入っていて。マカロニと、ホワイトソースにも、帆立のコクが凄いよ! 美味しい!」


「このスープカレーも美味しいよ♪」


 嬉しいお客さんの声に、ウキウキと働く。


 最近、通い詰めている青年。給仕に動く少女の後ろ姿。カモシカの様な美脚に、目が行ってしまう。


 エプロン少女。その可愛らしさに。男性客達は、癒された。


「お姉さん、追加良いですか?」


「コーヒーのお代わり下さい!」


「はい♪ 順番にお伺いしますね♪」


 少女の名は、藤林ふじばやし 真白ましろ


 長く美しい髪は、背中へ届き。やや光に透ける様に、茶色みを帯びた黒。


 すらりと、まだ成長過程だが、均整の取れた身体。胸も、同年代の平均程は有る。


 スカートから覗く脚は、男性の目を釘付けに。美しい脚線美を。


 まさに美少女。


 そんな彼女は、喫茶トゥー・シスターズの看板娘の1人。


 まだ中学生。


 もう1人の看板娘。妹の桜との美人姉妹。


 トゥー・シスターズとは、2人姉妹と言う意味。


 土曜日の今日。桜は、朝から近くの並木道迄、スケッチに出掛けている。


(お昼だし、そろそろ戻って来るかな?)


 注文が増えて、厨房でテキパキと立ち働くパパと、ママは料理を受け取り、真白と分担して運ぶ。


 注文を受け、料理をテーブルに運び、空いたテーブルは消毒して拭き、コーヒーに、ミルクとシロップ、スプーンを添えて出す。レジもする。


 その仕事振りは、父母を見て育ち、手慣れていた。頑張っているのが、微笑ましく映る。


 そっと、紙を折り、真白に渡した青年。


 何か? と見てみると。


 愛の告白が綴られて、連絡を下さいと、連絡先と名前が記されている。


「・・・・・・え〜」


 芸能事務所のプロデューサーです。と言うお客さんに、芸能界に興味有りませんか? と、名刺を渡された事も有る。


 どちらの気持ちにも、応えられない。


(最近、こんな事が多いな?)


 お店での事は、父母に報告している。


 真白から、色良い返事が無くても、お客さん達は変わらずやって来る。


 ちょっとだけ、気まずい。でも、いつも通り明るく接客してくれる彼女達。


 このお店の雰囲気が、皆んな大好きだった。


 曲が代わり、先程のトランペット奏者が、今度は魅力的なしゃがれ声で、歌う曲が始まった。


 ジャズ界の巨星の1人。


(あ、私の好きな曲♪ この人のこの明るい声、好きなんだよ〜)


 曲が、順にかかって行く。


 中性的な歌声が素敵な、大物ヴォーカリスト。


(綺麗な声。優しい歌声が心地良い♪)


 超絶技巧のジャズピアニスト。


(とってもお洒落しゃれで、旋律が素敵♪ こんな風に弾けるなんて凄すぎる)


 ヨーロッパの、トランペット奏者にして、ヴォーカリストの人も好きなアーティスト。


(この歌声・・・・・・カッコ良いんだよなぁ♪ 流石、再来)


 ゆったりと、音楽を聴いている時間が。目を閉じて、自然とリズムを取ってみたり。


(ストレス発散。好き)


 接客の合間も、好きな音に触れられる。


 物心付く前から、このJAZZ喫茶と、音楽と共に育って来た。


 楽器には素養は無い。と、思う。


(歌を歌うのは好きだけど、私の歌は、ただ旋律をなぞっているだけかもしれない)


(パパ、ママ、桜ちゃんと、お風呂で良く歌ったなぁ。あの頃はまだ、パパともお風呂に入っていた)


 赤面する思い。男の人の裸。


 思考が横道に逸れた。


「ママ」


「ん?」


 やや、一息付いた店内の様子を見て語った。


「私は、JAZZ(ジャズ)が好き。楽器が自分で演奏出来なくても。聴いているだけで幸せを感じる。往年の名プレイヤーも、新しい人の音も、探すのが好き・・・・・・」


「良いわよね〜♪ ママもパパも大好き。そんな真白も大好きよ♪」


「うん。ありがとう! 私も大好きだよ♪」


(私の好きなJAZZ(ジャズ)


(私には・・・・・・士涼君に刺激されて、好きになった戦国時代や、三国志の知識。弓道。寺社仏閣巡り。お守り集め、御朱印集め)


 今迄。そして。


(これから。私は、どう生きて行くんだろう。これからも、趣味が増えたりするのかな? 誰かをまた、好きになったりするのかな?)


 ドアベルが鳴る。


「いらっしゃいませ♪ お客様は・・・・・・2名様ですね。どうぞ、空いているお好きな席へ!」


 続けて、


「ただいま! 真白お姉ちゃん。スケッチに熱中してたら、こんな時間に」


「お帰り。桜ちゃん♪ 桜ちゃんの新作だね♪ 完成した?」


「うん! 後で感想くれると嬉しい♪ パパ、ママ。ただいま♪ 直ぐに、支度するね」


 揃いの黒いエプロン少女は、可愛らしい中学生と小学生。


 看板娘は、今日も、明日、明後日、明明後日も・・・・・・お客さんを明るく出迎えてくれる。


 大好きなJAZZ(ジャズ)を聴きながら。

 差込投稿です。ほのぼの回を書きたくなり、真白のキャラクターと、JAZZ(ジャズ)喫茶を少し掘り下げて、閑話を書いてみました。


 実は、真白は作者の好きなキャラクターだったりします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ