第十八話 天上神《クラトス》
冥界神メティスが甲斐 空として、転生した。
巫女ファウナの導き。藤林 真白、桜姉妹との出会い。
魔法のゲーム【ソーサリースフィア】の完成と実用。
新世界への帰還を目指しつつ、時を重ねた。地球《旧世界》での10年。
その間。球状魔法世界ソーサリースフィア《新世界》では、大変な事になっていく。
四大魔王の跋扈と、英雄一行の難民救出劇から始まる物語。
天使クリムは、夫と、友に、主神クラトスの元に同行して欲しいと、提案。
それは、メティス様の遺志。
複雑な表情を浮かべながらも、ライオスは受け入れてくれた。
アドニスも、クラトスが居るのが祖国アストレア王国だと告げられ了承した。
クリムの悩みは、ひとまず1つ解決。
移動手段は、世界各地に在る賢者の門と言われる魔法の門。
パラミス国境砦からも近い古代遺跡内に在る。
神々は、全てのゲートを把握しているし、守護天使長は、神の代理人だ。
パラミス国境砦を去る。
守備軍の長エンケラドゥス将軍に、行動計画を伝えると、ライオス、アドニス、クリムがこの地を離れるのは、戦力的に不安だと言った。
だが、行動は認めると。
彼は、クーゼという長柄武器の使い手だ。
砦を離れる前に、難民の野営地を目にする。
あの少女は、どうしているだろう。
気になったが、今は行こう。
◆
そこは、森の中、泉の湧く清浄な地。庭園だった。
苔生して、緑になった門が建っている。
賢者の門は、魔法の門だ。
鍵となる呪文は、古代王国時代に忘れ去られている。
だが、いと高き存在、神々と天使は、それを覚えている。
神聖魔法(天使語魔法とも言う)で、呪文を守る聖霊を呼び出す。
聖霊の真名は、『アルエリス』
そして、それが呪文。
光りに包まれた、美しいお姉さんだ。
「アルエリス、この地の門を開いて。賢者の道アパテイアを繋げよ!」
『何処へ』
「アルゴルの塔へ!」
門が金色に輝く。
「アルエリス。ありがとう」
クリムが礼をし、輝く門を通過して行く一行。
アルエリスが微笑んで消えた。
門を抜けると、そこは石造の建造物。
高い塔の最上階に、門の出口が有った。
平野に建つ塔は、見晴らしが素晴らしく。
遠くに、高い山脈を臨む。
塔の下まで、整備された街道が伸びている。
「クラトス様、ディアナ」
「お帰り、クリム」
「姉弟子! ライオス様! お帰りなさい!」
白い神官衣の青年。
外見は若いが、茶色の髪に、何もかも見透かす様な理知的なダークブラウンの瞳。
優しい顔をしている。
と、柔らかそうなオーキッド色の髪、横の毛を頭の片側だけ結った、純真な、天使の様に美しいエルフの少女がいた。
この青年こそ、40年前に、天界から消息を絶った天上神クラトス。
「クリム。・・・・・・メティスは死んだのか?」
「っ、はい。ですが、転生すると最期におっしゃっていました」
しばし、何かを確認する様に、沈黙するクラトス。
首を横に振った。
「この世界にはいない」
「そ、んな・・・・・・」
「メティスの最期は、どんな風に逝った?」
クリムは、詳細にその時を伝える。
機械神に騙されて戦闘に。
ケルベロスちゃんを庇い、致命傷を受けたメティス。
最期まで、人々の事を気にかけていた事。
酷い事をしてしまった私達に、逃げる様言ってくれた事。
ケルベロスちゃんと、七色の光に包まれ、2人が消えてしまった事。
聞き終わると、クラトスは呟いた。
「この世界では、凌ぎきれないと言う事か。・・・・・・確かに」
「クラトス様?」
「大丈夫。七色に光ったのなら。メティスは、異世界に飛んだんだ。転生すると言ったなら、考え有っての事だ」
「異世界、地球? でしょうか?」
「ああ、そうだ」
クリムは、考え、
「クラトス様は、今の状況を知っていますか?」
「四大魔王の復活。魔族の攻勢。ガンマール魔導国の滅亡」
「「「!? ガンマール滅亡?」」」
「魔導王ガノが、調略されたよ」
「そんな!? あの方が寝返るなんて?!」
「冥界地下迷宮の最下層までは、覗けなかったけど、僕の目は、地上の物は良く見えるんだ」
一行は、驚きを禁じ得ない。
クリムも、懸命に民を救おうとしていたあの方がと、驚いた。
「悪魔は、人を誑かす。あの子は、何であんなのを造っちゃったかな」
「?」
(あの子?)
クラトスの呟きに、ディアナが可愛く首を傾げた。
「機械神デウス・エクス・マキナは、緋緋色金が欲しくて離反したのか。
メティスの宝はだが、妖精の宝。メティスを追って、異世界へ行っただろうね」
主神の知識で、色々な事が解って行く。
「機械神、諦めていなければ、宝探し中か、でなければ従神を狙うかな?」
「地球のメティス様に、危険はないでしょうか?」
「ん? だが、機械神は地球への交通手段が無い」
「では、やはり従神を・・・・・・」
考え、質問してを繰り返す。
「天界の緋緋色金が狙われるのでは?」
「だったら、天下分け目の大決戦だ。神と魔族の、総力戦になるな。人々、動植物、精霊、地上の多くが失われる」
「クラトス様」
畏れ多いと見つめていた、アドニスが挙手する。
「何かな?騎士殿」
「貴方が動けば、大魔王と言えど征伐出来るのでは」
「ふむ。だけど、これ程の、大勢力は、想定外でね」
「対抗出来ませんか?」
「強さの基準、戦闘能力SSR級以上の神は、クラトスを含めても、7柱しか残っていないからなあ」
「それが、この世界を創ったと言われる、創世の7神ですか?」
「面子は少し違うね。
この世界の創世神は、
天上神、冥界神、海神、妖精神、月の女神、加護の女神、神姫の7柱だよ」
ディアナは、ふむふむ。と、感心して聞く。
「流石、師匠です。筆頭じゃないですか!」
クラトスが、無邪気に喜ぶ弟子に微笑む。
ライオスも、アドニスも驚いていた。
(メティス・・・・・・様が、創世の7神だった!? 何てことをしてしまったんだ!)
「まあ、従神を揃えて出せば何とかなるか」
「クラトス様、実は」
◆
「・・・・・・冥従神にそんな仕掛けをしていたのか。なら、他の従神も危ないな」
「はい、メティス様はクラトス様に伝える様にと」
「メティスは、流石、出来る神だね」
ライオスが、眉間に皺を寄せ項垂れる。
「少し場所を変えよう」
ライオスを一瞥し、クラトスが、呪文を唱え始める。
「! 瞬間移動・・・・・・」
ディアナが、ワクワクと期待。
その通り、景色が変わる。そこは屋外。アルゴルの塔の下に見えていた平地。
続けて魔法。
「神聖結界!」
ディアナの言葉通り、輝く魔法陣が結界を形作る。
そこへ、全長20メートル。聖従神ブリジットが現れた。
(メティスが、帰参してくれる迄、被害を抑えておかないと)
「弟子達、ブリジットのオリハルコン鋼核を調べるぞ」
「「はい!師匠!」」
クリムと、ディアナが頷き、魔法の師でもあるクラトスの作業を見つめた。
ライオスとアドニスに、そんな師弟の様子は微笑ましいものだった。
第十八話も、大幅に書き直してしまいました。