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閑話 アトランティス

 アトランティス帝国。


 その王アトラスは、神アースシェイカーの子。智勇に優れた大英雄の一人だった。


 黄金時代の人族と、神アースシェイカーの血を引く王族は、不老長寿で、肉体は若いまま。


 だが、帝国の人々は堕落し、他から奪う事に長ける軍事国家となる。


 善良な人々の暮らす国を、侵略、敵対していく帝国に、神々の怒りは沸点を超えた。


 祖神であるアースシェイカーにも見捨てられたアトランティスは、地殻変動と、大洪水で、大西洋の海底に沈む神託を受ける。


 巫女ファウナは、アトランティス王家の血を引く少女。


 神アースシェイカーに仕える事を運命付けられて、穢れを知らず、無垢なまま育てられていた。


 青みがかった銀のミディアムヘア。


 知的でいてまだ幼さが残る、整った顔立ち。愛らしい少女。


 清潔な巫女服。白い貫頭衣を着ている。


 ファウナは愛猫パールを抱いて祈りを捧げた。


(祖国をお許し下さい。助けて下さい。ごめんなさい)


 だが。


 祖国は、祈りが届かなかったか、虚しく大地に飲まれ、海底に。


(怖い!)


 ぎゅっと、目を閉じる。しかし、ファウナに最期は訪れない。


「・・・・・・にゃー」


 パールが鳴く。


 目を開ける。そこは、見覚えのあるアトランティスの王宮では無かった。


 聖なる気配。


 立派な祭壇。青い光差し込む大聖堂。


 黒尽くめマントに衣装の、一人の年若い男神が、彼女を優しく見つめていた。


「大丈夫だよ」


 その言葉に、張りつめていた緊張が解けた。


「うぅ、ぐす、っふえーん」


「僕は、冥界神メティス、君の祈りを聞きやって来た」


 神様は、優しく、優しく、声をかけてくれた。


「メティス様、メティス様、メティス様、〜〜祖国は、どうなったのでしょうか?!」


「無事だよ。ここは、僕の住む冥界の入り口。君の願いは叶えられた」


「行こうか」


 言うと、黒猫を抱くファウナを、そっと抱き寄せ、メティスと少女は、青い光に満ちた地底世界の、アトランティスを見下ろす中空に瞬間移動し、浮いていた。


 二人と一匹の横、アトランティス大陸の上空には、巨大な神殿の建つ島が浮かぶ。


 先程の大聖堂の有った所だ。気配を感じる。


『アトランティスの民よ! 僕はメティス!妖精神ユリシスと、古代(ハイ)エルフの姫オフィーリアの息子。冥界神だ』


 人々は、男も女も、若者も老人も、メティスを見上げ、その声を聴くと、畏れ平伏した。


 兵士達は武器を捨て、王も大臣も将軍もそれにならった。


 メティスの声は、広大なアトランティス大陸中に届いたのだ。


『神々は、諸君の貪欲さ、戦い好きに呆れた。僕も怒りを覚えた』


 ファウナが、メティスの胸の中で震える。


 メティスは優しく抱きしめ、猫も、ファウナの頬を舐めて安心させようとする。


 群衆は狼狽えている。


『神託に有った様に、アトランティスは地上から消えた。だが!』


『海には沈まなかった!』


『・・・・・・巫女ファウナの願い。同胞への思いやりに、僕は感じ入った!』


 群衆は、メティスの一挙手一投足を見。固唾を飲む。


『アースシェイカーに取りなし、諸君の身柄を貰い受けた』


 群衆に、喜色が浮かぶ。


「メティス・・・様」


 ファウナの頬が染まる。


『この地底世界から出る事は許さないが、諸君は今日から僕の民だ! 平和を約束しよう!』


 その宣言に、アトランティス中が震える。


『『『メティス! メティス!! メティス!!!』』』


『『『我らの神!!!』』』


『『『慈悲深き御方!!!』』』


『『『ファウナ! ファウナ!! ファウナ!!!』』』


『『『我らの巫女!!!』』』


 200万人以上の群衆は、拳を天に突き出し歓呼。大喝采。


 アトランティス帝国が、メティスの名を、至上のものとしたのがこの時だった。


「メティス様・・・わたくし達は貴方様に従います」


「ファウナ。今日からは、僕の巫女になってくれる?」


「はい! 喜んで」


 新しい神様との契約に、少女は高揚し、はにかんだ。



 アトランティス大陸、ムー大陸、レムリア大陸、メガラニカ大陸。


 地球では、古代、これほどの大陸が神々の怒りに触れ、滅んでいる。


 その痕跡を、人類はまだ発見出来ない。

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