第十四話 竜王の加護と竜人
「桜ちゃん!ドラゴンマスターだって!何か凄い職業になったよ!?」
「う、うん!やった」
(エイダ)
空は、藤林姉妹には聞こえぬ様、対象を限った念話を飛ばす。
魔力を込めた念に、異空間に在る宝物殿から返事は無い。
だけど、この部屋の中。藤林 桜から、竜王エイダの、神に匹敵する巨大な魔力反応が有る。
(エイダの身体に馴染んで、緋緋色金の宝珠は、完全にエイダに所有権が帰属していたけど)
桜が空を見て、しばらくし、目を瞑る。そして、開いた桜の瞳の色が、金色になっていた。
時間の流れが止まる。音が消え、姉、真白の動きが止まっている。
時間停止。その部屋の中、空と桜だけが動いて。
『お久しぶりです。メティス・・・様?』
桜の声で、桜では無い者が話す。
「エイダ、復活したんだね。僕は転生したんだ」
『私は、少女と同化しました』
「桜さんの体に、オリハルコンごと吸収された?良かったの?」
少女が微笑む。
甲斐 空が、作ったゲームは魔法を帯びたゲーム。
『メティス様。このゲーム【ソーサリースフィア】人種の能力を引き上げる仕組みの魔法具ですね』
「さすがだね」
『真白ちゃんを見ればさすがに。桜ちゃんも、召喚士を引き当てたのは、偶然で無く。同化して、確信しました。私の存在を無意識下に感じ取っていたのです』
「才能の有る子だと思ってはいたけど」
少女は、可愛く頷きながら、
『・・・竜の限界を、人との同化で超えます。メティス様、私も一緒に鍛えて下さいまし。必ずお力になってみせますわ』
パソコンの画面。ゲームの、吹き出し文は、桜の職業がドラゴンマスターになったと告げた後、種族が、竜人になったと表示されていた。
新たな種族〈竜人〉の誕生。字面通り、竜と人の融合。
「桜ちゃん、貴女に竜王エイダの加護を与えます。どうか、私の友メティス様をよろしくお願いしますね」
桜の瞳が、金から黒に戻る。
「空・・・君」
少女の顔は、紅潮。
「神様だったなんて」
「桜さん?エイダの記憶を受け継いでいるのですか?」
コクリと頷く。
「・・・はい。私、もう人では無いんです。パパ、ママともお姉ちゃんとももう違う。どうしたら良いのか分かりません」
困り顔の泣きそうな少女は、切なく告げた。
「桜さんの将来は、僕が責任を持って支えます」
「空君が、私を?・・・私が・・エイダだから?」
「・・・空君には、阿刀羅桜さんと名乗っているケルベロスちゃんって心に決めた女性が」
「ケルベロスちゃんは、大切な女性です。今でも。でも、僕は日本人の小学生、甲斐 空でも有ります」
「私が、藤林 桜でエイダな様に」
「そう」
空が、桜を抱き寄せる。
確認する様に、空の目を見る桜。
「あわあわあわ?!えええ?!」
二人を見て顔を真っ赤に染め、目を白黒させる真白の声を聞いて、
「「!?」」
二人は、慌てて離れた。
時間は再び動き出していた。
今回、凄く短いですが、竜人の誕生回となっています。