第十一話 美術展と食事会
今日は、電車を乗り継ぎ。家族、連れ立って、緑の多い有名な公園の中に在る、美術館に来ている。
立派な、美術館の二階が、美術展の展示会場。展示が始まって、最初の休日。
「ドキドキする・・・ハァー」
「良かったなあ。桜。パパ、本当に嬉しいぞ。さあ、探そうぜ!」
「だね!パパ!桜ちゃんの絵は何処だろう」
「楽しみねえ」
パパ、姉、ママ。私と、展示室を見て回る。
色々な絵が、飾られていて、興味深いが、藤林一家は、それらの絵を流し見しながら、佳作の絵を探す。佳作は結構、数が有るのだ。
「それに、桜ちゃんが自慢してるお友達、空君の作品も見ないとね。最優秀賞」
「うん」
(クラスメイト・・・友達、かな?空君も、私を友達と思ってくれると良い)
中々、見つからなかったが、有った!
佳作 『秋のお社』 藤林 桜
「おーっ!」
「やっぱり、桜ちゃんは才能有るのよねー。ん!?この絵の子、誰!綺麗な子。男の子なの?凄いな」
と真白お姉ちゃん。
「甲斐 空君だよ」
「おーっ!この子が」
「そうそう!この子よね。凄い綺麗で可愛かったっ!」
去年の保護者参観で、ママは空君母子を見ていた。
「・・・ほー。可愛いな」
娘達大事で、いつもは近寄る男の子に鋭い目をやるパパが?
絵は、タイトルで『秋のお社』。主役は、神社のお社なのに。まず、家族で、描き込まれた空君の横顔の感想が始まってしまう。
「神社の社殿も、良く描けているわねぇ」
「ああ、紅葉とかも良いなあ。葉っぱの色に何色も使っていて、絵に奥行きがある」
「凄いね桜ちゃん」
照れ照れの桜。
「ありがとう。パパ、ママ、お姉ちゃん」
それからしばらく、皆んなで、私の絵を目に焼き付ける。近くにいた他のお客さん達も、私達の話が聞こえて、温かい眼差しで絵と私を見比べていたらしい。
後で、真白お姉ちゃんが教えてくれた。
「空君の絵は、最優秀賞を貰えるくらい。もっと全然凄いの」
人だかりがその絵の前に、出来ていた。
最優秀賞 『神域』 甲斐 空
絵の大きさは、私と同じ画用紙サイズ。構図も似てはいる。
だが・・・。
「凄い」
お姉ちゃんの呟き。パパ、ママも息を飲む。
学校で、空君の絵の完成品は見ていたが、これは。
『美術品』
何かが宿っている様な、存在感を放っている。
そして、
「「桜?」」
「桜ちゃんが」
その絵の中、お社を見つめる空君と私を見て、
「ええ?!」
「凄え!桜が絵の中に!やっぱ可愛いな〜!?」
「うん・・・。桜ちゃんは可愛い」
「桜ちゃんも空君も可愛い!」
凄い凄い。
私の家族は、驚き、興奮し、テンションMAX。はしゃいでいる。
(・・・恥ずかしい・・・)
「桜さん?」
聞き覚えの有る優しい声。
「・・・空君?」
そこに、甲斐 空君がいた。
優しそうな、男の人と、空君そっくりの女の人も一緒だ。
「お父さん、お母さん、こちら、友達の藤林 桜さんだよ。桜さん、僕の両親です」
可愛らしく笑う空君。
「初めまして。空の父です」
「初めまして。母です。藤林 桜さん?お話、聞いてました。空と仲良くしてくれてありがとう!」
「あ、あの、あ、ふ、藤林 桜です。初めまして!あ、私の父と母と、姉です!」
「パパ、ママ、お姉ちゃん、甲斐 空君」
あわあわ、説明する。
(友達って言ってくれた!空君も!)
「初めまして。桜の、父です」
「母です」
「姉の真白です。本当に可愛い〜」
絵を見ていた人達は、空君と私を見て、
「あ、あの子達!」
「この絵の!」
「本当だ!凄い!」
「やだ、二人とも可愛い〜」
注目されてしまった。
「わわわ・・・!」
私達はその場を離れた。
◆
幸い、空君家族も、絵は見終える所だったとの事。私達は、お昼前に美術館を訪れていたので、一緒にランチでも、という事になった。
パパも、ママも、余り都心のお店には明るく無い。ランチは、携帯で調べながら、どこかで洋食でも食べようかと話していたが。
空君のお父さんは、この辺りの地理に明るい様だ。
「この辺りだど、牛タンの定食が安く食べられるお店、洋食の老舗、お寿司屋さん、鰻屋さん。美味しいお店が結構有りますよ」
「牛タン!良いですね!」
「牛タン!」
パパと真白お姉ちゃんが、牛タンに反応する。
昔ながらの建物の二階にお店は在った。エレベーターで上がる。
エレベーターは二家族でいっぱいで、私とお姉ちゃんは空君と身体が当たってしまった。
恥ずかしくて見ると、空君も恥ずかしそうにしている。真白お姉ちゃんも赤らんでいたが、二人とも嫌そうでは無い?
店員さんが、四人掛け席を2つくっ付けて、藤林、甲斐両家は座り、メニューを交代で見た。
私はよく分からない。パパ達が全員同じセットに決めてくれた。
しばらくして、運ばれて来たのは、牛タン、麦めし、とろろ、漬物、スープのセット。
「麦めしは、お代わりも出来ますので」
感じの良い店員さんが下がり、食べ始める。
「美味しい!」
皆んなで、相好を崩す。
「牛タンって、こんなに美味しいんだ!」
塩を振って焼いた牛タンの、歯応え、肉の旨み。凄く美味しい。麦めしと一緒に噛みしめる。
「ご飯に、とろろをかけて食べるのも美味しいね!」
私とお姉ちゃんは、品々を一つずつ口に入れ、感動する。
「このスープと、辛い味噌漬けも美味しいわねえ」
「本当だな!ご飯が進む」
「良かった」
一緒に食べながら、空君のお父さん。
空君のお母さんも優しい表情。
「僕の大好物なんです」と、空君。
(空君の・・・!)
その日から、私の大好物に、牛タン定食が加わった。
お互いに、より深く自己紹介をした。
都心の中学校で、歴史の先生をしているという空君のお父さん。
昔は身体が弱かったという専業主婦のお母さん。
ウチは、パパが、ママと喫茶店をやっているという事。
お姉ちゃんが、中学生だという話をした。
それと、空君の名前が、冬の朝、綺麗に澄んだ空の日に生まれてきてくれたので空と名付けた事。
私が、春、桜の季節に生まれたので、桜。
お姉ちゃんが、冬の雪の日に生まれたので真白と名付けた事。
空君と、真白お姉ちゃんは同じ12月生まれ。
学校で、絵を描いたのは11月。今は2月なので、空君は、もう11歳になっている。
私は早生まれなので、3月になる迄はまだ10歳。空君の方が、私よりお兄さんだ。
「桜さんの絵見ました」
「え!」
「空を可愛いく描いてくれてありがとう」
ご両親が微笑む。
「こ、こちらこそ!」
「今度、ウチに遊びにいらして?」
「空君。空君もウチに遊びにおいで?」
空君も私も、顔を赤らめている様な。
空君と、家族ぐるみの仲になった。凄い日になった。




