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第十話 藤林桜

 甲斐かい そら。10歳。小学5年生の男の子。


 お母さんに似た、女の子の様に可愛い子。


 今、私達は図工の時間。先生に引率されて来た、岡の上に在る近くの大きな神社で、写生しようとしている。


 4年生の時、転校して来た私は、空君と同じクラスになった。今年もクラス代えは無く同じクラス。


 4年生の時の、保護者参観に来ていた空君のお母さんは、一際若く見えて、美人さんだった。


 空君にそっくり。綺麗なお母さんだなぁ。


 私のお母さん含め、初めて空君の母子を見た保護者の人は驚いた。


 私はクラスメイトというだけだけど、とっても誇らしい。


 男子は子どもっぽい。でも女子達も、空君の事は気にかける。


 高学年、低学年、中学年の子も、密かに空たん、お兄さんと慕う。


 今も、私達、女子は場所取りをしつつ、チラチラ空君を見てる。


 空君は、一緒にいた男の子達と別れて、絵を描く場所を探している様だ。


 そして、私の隣に来てくれた。同じアングルから、神社の社殿を描くらしい。


「藤林さん、ここで、一緒に描いて良い?」


「う、うん。良いよ。甲斐君」


「ありがとう」


 空君が笑った。


(可愛い〜)


『今ここに、カップル爆誕〜〜っ』


 数人の男子が、私達を笑い、私は恥ずかしくなって真っ赤だ。


「ごめん、藤林さん。僕のせいで。僕、他の所で描くよ」


(えっ?!行っちゃやだ)


 どうしよう。


 その時、


「お前さん達、早く描き始めないと何も描けずに、時間になっちゃうよ!」


 年配の女性先生の声に、私達をはやしていた男子たちが散る。


「い、良いよ、ここで描きなよ。甲斐君・・・」


 空君は、幸せそうに笑って、


「ありがとう!」と言った。


 私は、神社のおやしろを描く為、定規を使って線を引き、絵を描く。


 空君は、しばらくお社を見ると、迷いの無い手付きで、デッサンを始めた。


「え?!定規使わないの?」


「うん、この屋根、正確には直線じゃ無いからね」


「そ、そう?」


 二人、黙々と描き進める。集中して来た。


 お社、木々、石畳み。私は、絵を描くのが好きだ。実は学校では、図工クラブに入っている。


「・・・・・・」


 私の画板の上の画用紙。神社のお社と、周りの風景。そこには、お社の絵を描く空君の姿も描き込まれて。


 ドキドキ。また、からかわれる様な事をしている。空君に何と思われるか。


 空君を見る。


「出来た」


 空君の満足気な声に、私の目は、空君の画板に。


「え?!」


(どうして?!)


 そこには、私に似た構図。でも、図工クラブの私何かより、ずっと上手。そして、お社を見つめる空君と、私の姿が描き込まれていた。


 嬉しかった。私と空君が一緒に描かれている。その見事な絵に感動する。


「す、凄い上手!そ、空君、絵を習っているの?!」


「え?いやぁ、どうなんだろう?」


「?」


 ハッキリしない返答。


「桜さんも上手だね」


 その無垢な微笑みに、クラッとした。


 気付けば、私と空君は、下の名前で呼びあい、笑い合っていた。


 そして、空君と私のその絵は、次の図工の時間に不透明水彩で色を付け、先生が絵画展に送た。


 国の絵画展での成績は・・・空君が、最優秀賞。私が、佳作を貰った。誰も私達の絵を、笑わなかったの。


 これは、私、藤林ふじばやし さくらの一生の思い出。

空の話が始まりました〜。

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