第九話 亜神と魔王
あれから10年。亜神は、冥界神の宝が、迷宮内、神殿内の何処かに有ると信じていたから探した。
執着。
金属で出来た2対の水牛の様な角に、同じ鈍色に光る人型に近いフレーム。
目は2つのクリスタル。その中で明かりが灯る様で、時代の先を行く様な歯車で創られた機械仕掛け、智識を司る神の一柱。
名を機械神デウス・エクス・マキナ。
だが、宝探しに進展は無い。
冥界神は消えた。死んで消滅したにしては、眷属ケルベロスも共に消えた。
機械の駆動音が亜神の頭で鳴る。
(転移・・で逃げたのだ。嫌、急所を貫き通した・・あれ・・は、確実に転移先で・・死んだ)
(冥界神は、宝を持ち出した・・のだろうか? 何処に転移した?)
データを洗い直す。その時間の情報。世界中、神界に至るまで、転移反応が出なかった。
キ キ キィン キ キ キ キ
金属質な駆動音は、やがて、カチリとハマる。
(考えられるのは・・異世界に転移!)
電子脳が答えを出した。
(そんな事があの中で・・追えない。・・流石、冥界神。伊達では無い)
方法が分からないが、宝も持ち出したのか。
神殿で、英雄一行がメティスに通され、お茶をした部屋。そこの調度品、美術品類が消えていたのは、そういう事か。
(今さら・・)
御伽噺になるほど、冥界神の莫大な財宝は有名な話だ。メティスは、生と死を司る冥界の神で有り、財宝の神の側面を持つ。
世界。人間の国々の全ての財貨を集めても届かない。神界有数の財を持った貴人。
緋緋色金が欲しかった。
そして、強力な効果を持つ神器の数々が、機械の仲間を増やし、自らと同じ工程で亜神を作るには。
オリハルコンが良い。
試行錯誤の末、破魔の性質を持つ魔銀でも高度な知能は宿らなかったが、神の力、神威の宿る従神機械化兵シリーズの製作を共に任された時、確信した。
オリハルコン核に、自分のデータの一部をコピー出来たのだ。
迷宮、神殿、果ては冥界の門の中、冥界にも自ら赴いたが、そうか。無いのか。
この10年、どこだ。どこ。どこ、と時間を浪費した。
創造主達を敵に回し、四大魔王と手を組んで。
目的が叶わないとは。
カチ カチ カチ。
機械神は、歯車を動かし考える。
(『従神機械化兵』シリーズを・・手に入れよう。その能力で、異世界への扉が開く筈だ)
戦略修正がされた。世界は戦争になっている。手駒を動かせば良いのだ。
◆
冥界神を討ち取って、爆発的に経験値をえた。
辿々しかった言語能力がクリアになった。
ステータスパラメータ、魔力、神威の能力が飛躍的に上がった。
異世界に飛ぶ権能はまだ無い。が、冥界迷宮と神殿を繋げていた、神聖力で起動する魔法陣は、もう解析、無力化出来たのだ。
門の中からは、今でも、悪魔が出てくる。
四大魔王、魔人、悪魔。悪ではあるが、話に聞いた程、邪悪な気配は感じない。
精神が、冥界で浄化の影響を受けているのかも知れない。今も、冥界には人工湖に湛えられた聖なる水が流れ込んでいる。
が、問題では無い。
奴らは神々を憎み、自分達を封じたメティスには、特に暗い感情を抱いている。
メティスを討ち倒した亜神デウス・エクス・マキナは、神に叛旗を翻した事もあって、魔王達から敬われ受け入れられている。
ガンマール大戦。
この地に在ったガンマール魔導国は、英雄一行の奮戦にも関わらず滅び去った。
その時だけ、亜神は顔を出し、後は10年も宝探しをしていたというシュールさ。
魔族、悪魔は、敵対勢力には団結して暴威を振るう。欲望を満たす為に戦い、強くなる。
国都、主要都市、街、村。
逃げ遅れた人々は、ほとんど殺されゾンビ、死霊となり、軍勢に加わった。魔族の奴隷になり、扱われる者もいたが。
久しぶりに迷宮の外に、テレポートした。続けて気配を探り、念話を飛ばす。
「魔王アスモデウス卿・・デウス・エクス・マキナ・・だ」
返事が、声となって頭の中に返って来た。
「機械神殿。宝探しはどうしました。見つかったのかね?」
アスモデウスは、近くに気配の有った四大魔王の一人。落ち着いた、気品を感じる壮年男性の声。
亜神と魔王は、情報を交換した。
もう死んだだろう冥界神に、宝を持ち逃げされ、その場所を、今は追えない事を伝える。
面白くない声で、返って来た情報は、この10年で、ガンマールを始め、周辺の国家を併呑しつつ、強国と戦端が開かれた。
最中、半神の英雄ライオスは行方不明に。
彼の名声は、冥界神殺しのきっかけを作った戦犯の一人として地に落ちていたという。
同じく戦犯だが、大騎士アドニスはアストレア王国に帰国。
各国との連合国軍を整えて、将軍の一人となり転戦。天使、巫女のサポートを受けて、魔王軍と敵対している。
守護天使長クリムは、主神クラトスの行方を知る存在。それに、最大最強の従神機械化兵『聖従神ブリジット』の操者。
これも行方が追えないそうだ。
冥界神メティス、海神アースシェイカー、英雄神ウラス、そして、神々の王クラトスを入れて四強。
神々の強さの基準は、SSR級が最強と言われるが、この四強のみそれを大幅に超える。
その四強の誰も動かないのが謎だが。
今、守護天使長はクラトスの下か。
もしやライオスもそこに。
従神が手に入れば、メティスの宝を追える。
それに、素材から、機械神の眷属を作れるかもしれない。
従神機械化兵シリーズ。
全て、神の金属、緋緋色金製の、巨大な機械化兵。
操者が乗る事で、SR級〜SSR級の神と同等の戦力となる。
聖従神ブリジット、冥従神ハーデスの行方は分からない。だが、亜神が携わった従神は、5体。
聖従神ブリジット。雷従神レウコテア。炎従神レーヴァテイン。魔従神ルシファー。冥従神ハーデス。
それぞれの姿を思い浮かべる。
(緋緋色金は・・何処だ)
「四大魔王に・頼みが有る。従神の捜索と、遭遇したら・知らせよ。我が出向く」
「天使長や女神が使うアレか。よろしい。だが、操者は私が欲しいのだが」
「クリムには・聞かねばならん事が・有る。他は構わない・中身は・好きにするが良い」
「フフフフッ。楽しみだね」
魔王アスモデウスはさも嬉しそうに笑った。




