プロローグ 降臨
この地にて、七柱の神々によって神秘の力が揮われた。
天地開闢。
時と次元までも操り、空間は膨張する。これは、二度目の創造宇宙。
星々・・・天界、地上界、妖精界、冥界。
ここに第二の地球〈球状魔法世界ソーサリースフィア〉と、二つの月アスタルテと、魔王銀が創造された。
神々は持てる神威を揮う。
新しい神、天使、精霊、妖精、人間、亜人、動物、植物が生まれる。
中には猛々しい魔獣や幻獣、神獣等も生まれた。
確かに試行錯誤も有った。
魔王銀の月に創られた悪魔種と、その混血魔族、魔人は、反旗を翻した。
神にも、失敗は有る。
だが、世界の創造主にして、絶対の導き手『神』。その補佐が『天使』だったのだ。
やがて時は下り、地上の権威は、王という称号を与えられた指導者達に委ねられ、歴史の歯車が廻り始める。
王権の時代。
しかし。神話の時代はまだ終わっていなかった。
暖かい日差し。天界と呼ばれる、神域の中で、最も聖なる楽園。
蒼天の中、光に満ちた荘厳な世界。ここで、一つの異変が起きた。
「こちらコントロールセンター。神の権限において、天国の門が開きます。カウントダウン、5・4・3・2・1・開門します。どなたの権限でしょうか?」
全長20メートルは有ろうかという、神威に気高く輝く金属フレーム。人型の巨兵が、黄金の門を通過して行く。
まるで、鎧を纏った巨大な騎士。
「機械化兵〈従神〉? これは、聖従神ブリジット?
確認しました。守護天使長クリム様ですか。・・・え!? クラトス様?!」
鐘の音が天界に鳴り響く。
4枚羽根の上位天使達が、コントロールセンターの魔導スクリーンに映し出された映像に、座席から立ち上がって狼狽える。
巨兵の胸の位置に、大事に捧げられた両手の上に、白い神官衣の様な服を纏った、穏やかな顔立ちの青年(?)が一柱。面白そうに地上を見据え、立って乗っていた。
青年の口が何かを呟いた。その瞳は何を見ているのか。楽しげだ。
巨兵は黄金の門をそのまま抜け、降下して行くかと思うと、次の瞬間には複雑な紋様を散りばめた六芒星の巨大魔法陣が光輝く。光の線を引いて地上に消えた。
「?! 地上からの召喚魔法陣です!! 主神が!
・・・クラトス様が、降臨された・・・」