15 二郎系ラーメン
とりあえずダンジョンを運営してみて、一ヶ月の成績が出た。個人的な感想を述べるなら、思ったより悪くなかった。
っていうか逆に謎に良かった……
簡単すぎやろ、こんなもんマジで誰でもできてまうやん、というのがバーリーの感情のほぼすべてを締めた。
で、このような感情に支配されると、次に彼は真剣にこのように思うようになる。
絶対にこのダンジョン運営なるものには裏があるんだろう。レビテとか適当なことばっかり言って俺を騙しに来ているに違いない。
彼らの真の目的とは何なのか。
俺はこのままでいいのか。
ずっとこの暗い部屋の中で暮らしていかなあかんのか。そりゃ確かに電話さえあれば不自由ないけど!
バーリーとしては、徐々に自らの心の声を無視するわけにはいかないような気になっていた。
自分はもう外に出たい。
きっとこの世界にはまだまだ自分の知らないものがあるはず。
今の生活を捨ててでもあの扉の向こうには手に入れなければならないものがあるんや!
だが確信がない。
今の自分の考えはかなりリスキーで、絶対にこれは外に出るしかない、ここにいてももう何の意味もない、みたいな条件を揃えられるまで、実際の行動は起こしにくい。
ってかマジで今の時点で出ていったらアホや。
ではそれらを含めて今彼は何をすべきなのか。
扉をノックする音が聞こえた。
注文していたラーメンが届いたのだろう。前の世界では主に豚骨ラーメンが好きでよく食べていて、ほかの種類のラーメンってあまり食べたことがなかったのだが、ここへきて「二郎系ラーメン」なるものにはまってしまった。
あの野菜もりもり、注文するときには謎のコールなる呪文を唱えなければならない、というやつである。
わかっている。
何でここへてお前は二郎系ラーメンなどにはまっているのかと。
お前の食生活など興味ないと。
しかし聞いてくれ。自分でもまさか異世界にきて改めて二郎系ラーメンにはまるようになるとは思わなかった。
俺は関東にでも出張にでもきているのか。このまま元の世界に戻れることがあったとしても、こちらの世界の思い出が二郎系ラーメンになりかねない。
っていうか今もし戻れたら、確実にいろいろな店舗を食べ回ってみることだろう。
それほど二郎系ラーメンに今密かにはまっている。
毎回お腹いっぱいになって、もう当分ええわ、みたいなことを思うのだが、気付くと3日に一度くらいのペースで電話をかけてしまっている。
ドアを開けると、いつもの出前のお兄ちゃんが岡持ちを持って待ってくれていた。
ラーメンを受け取ったついでに、バーリーは何気なくそのお兄ちゃんに聞いてみた。
「そういえば、ここまでってどうやってきてるんですか?」
「え、バイクっすけどね」
バイク!
「バイクなんですか? 洞窟内をずっとバイクで?」
「いや、バーリーさんのマンションまでバイクっすね」
マンション?
こいつ何を言ってんねや。いや、変なことを言ってんのは俺の方か?
バーリーは改めて問う。「ここ暗いですよね?」
「え?暗いっすね」
「まるでダンジョンの中みたいですよね」
「はい、だってここはバーリーさんのダンジョンですよね?」
「ここに来るまで1000階ぐらい階段降りてきました?」
「え、それどういうギャグなんですか?」
いや別に受け狙ってへんけど!
しかしバーリーはこの岡持ちのお兄ちゃんと話ながら、自分の頭の中がスッーっと静かに混乱状態に陥っていく瞬間がわかった。
妙な気分である。
ここはダンジョンなのだろうか、それともマンション?
せっかくなので、お兄ちゃんにずばりこのマンション?ダンジョン?のことを聞いてみることにした。すると彼は、意外というか、意外では全然ないのかもしれないが、とにかくいとも簡単に質問に答えてくれた。
ここは都会の真ん中にあるマンションの一室で、自分たちはその近くでいわゆる二郎ラーメンのインスパイア系のお店を出している。
いつもバーリーさんのマンションの扉を開くと、そこから長くて暗い、ちょうど今自分の背後にあるダンジョンのような通路があって(しかしそこは20~30メートルほどしかない)、行き着くとこの扉がある。
そして扉をノックすると、やっとバーリーさんが出て来て、商品の手渡しになる、とのことだった。
唖然とする内容だった。
だがもうこうなったら何を信じていいのかわからない。胸のドキドキ?
こういうときってやっぱ胸のドキドキ?
バーリーは言った。「ちょっとさ、悪いんやけど、今一緒に通路渡ってマンションの外でてもいいですかね?」
「え、全然いいっすけど」
全然いいんか。
全然いいんか!
俺もいっつもヤル気なくて大概やけどな、この世界とこの世界の奴等もホンマにダンジョン運営する気あるんか。




