13 一ヶ月の結果
初心者研修を終えてからおよそ1ヶ月が経った。
バーリーは自分のダンジョンの不具合が発見されたあの日、めちゃめちゃこのまま部屋のドア蹴り破って外でたろかな、みたいなことを思ったがそれはやめておいた。
なぜなら、そんなことはいつでもできるからである。
せっかくのダンジョンを運営できる立場。いずれムカつくか絶望かして出ていくにせよ、ちょっとは黙って楽しんでみようじゃないかという気分だった。
ホンマに固定電話さえあれば生活に困ることないし。
で、今日はいよいよ一ヶ月分の成果が決定する日である。
多分もう部屋のポストに成績の書かれた封筒が届いていることだろう。
研修を終えてから、とりあえず俺は時間のかかりそうなこと(ダンジョンのコンセプトとかモンスターの選定など)は無視して、かなりおおざっぱにモンスターの発注を繰り返してみた。
モンスターを数万ゴールド分入荷する→冒険者くる→モンスターが一定数淘汰される→モンスターを最初の数まで補充する→また冒険者くる
の流れである。
何も難しいことはしていない。
モンスターの種類も2種類しか仕入れていない。
めっちゃ弱いのと、それよりは強いの、である。
申し訳ないがこちらとしては、モンスターの名前になんぞ興味はないし、もちろんその見てくれだってどうでもいい。
大事なのは仕入れるモンスターがどれくらい強いのか、強すぎないか、言い換えると、冒険者に対してどれくらいの耐久性があるのかということである。
本来ならば、研修を受けているので、まずダンジョンをデザインしてから実務に取り組む――このやり方を踏襲すべきだっただろう。
同期であるソフィアなんかは真面目ちゃんだから、このへんもきっちり考えて日々のダンジョン運営にいかしているようだ。
だが俺はめんどい。
申し訳ないがめちゃめちゃめんどい。
この辺は俺がこの世界のことをなめ腐っているからなのか、俺の感性が子供なのか、はたまた俺がこの世界だけでなく、元の世界も含めたどの世界に対しても不真面目な対応しか出来ないからなのか、よくわからないけれどもとにかくやる気が出ない。
すぐに「ま、何でも一緒やろ」みたいな感じになってしまう。
元の世界からの悪い癖だ。
ポストに入っていた封筒を開けて中身を確認してみる。数秒ほど中に入っていた書類を眺めてバーリーは「あー、なるほど……」
これはやっぱり資金が微増している。
当初は限度額の20%を上限としてモンスターを発注した。そしてそれを一ヶ月ずっと続けてみた。
モンスターが減ればそれを補充するという形をとってきたから、この一ヶ月で何回や、4回……つまりほぼ週一回業者に発注をかけているということになる。
それで資金が微増している。
黒字……このままこの運用方法を続けていけば、このダンジョンもこの世界で常に受かり続けるということである。
ちなみに生活費を最低限で見積もって差し引いてみる。
やばい。
これでも限度額の%をあげれば理論上まだマイナスの数字にならない。
何なんやこれは。
こっちはただホンマにほぼ何も考えずに、最初に業者からもらったパンフレットに載っていたモンスターを繰り返し注文し続けただけやのに。
プラスは……およそ1%……
何でマジでこんなんで増えるんや。
年率で12%?
もちろんバーリーは元の世界で金融のスペシャリストでもなければ、伝説の経営者というわけでもない。
何だったら普通の人よりも経済には疎い。完全なるフリーターだったのである。
だがそんな彼でもわかる。
この結果はなめている、と。
ダンジョンマスターとは名ばかりで、ホンマはこんなもん誰がやっても結果は一緒なんちゃうかと。
研修で適当なことを言って、それっぽいことばっかり俺らにさせて、しかしそれで適当にやってもほぼリスクがない。
もちろん適当ではなくて、めちゃめちゃきれいにモンスターを回せば、もっともっと儲けが出たんやで、ということかもしれない。
儲けたらどうなる?
もっと広い部屋に引っ越しできて、ほんでうまいもん食べれて、もっと強いモンスターを仕入れることが出来るのか……
いや、今のこの状況で基本的には何の不自由もないけどな……?
話をまとめると、ここではダンジョンの運営にミスってもほぼ損害はでない。とりあえずモンスターを仕入れて、そしてそれが減ったら、減った分だけ補充し続ければそれだけで儲けることができる。
マジで天国かよ、ここ!
もう一生ここで暮らしてもええやん!
あ、税金?
バーリーはそれを思い付くと、急いで再び書類に目を通し始めた。




