10 問題
問題が起きた。
「メルカトルムカデ」
こいつはダンジョンの地図を作成するときに必須のモンスターである。
こいつをダンジョン内に解き放つと、その構図を記憶して持ち帰ってきてくれる。
通常、この過程は3日~7日ほどで終わるらしいが、問題である、全然帰ってこないのである。
どういうことなのか。
一応研修で教えられた通りに一気に10匹放ったのに何がいけなかったのか。
不良品でも握らされたというのか。
何にせよダンジョン運営にいきなりつまずいたわけである。
バーリーはまずモンスターを卸してくれた業者に連絡を取った。もしかしたら初心者だと甘く見られ、適当なモンスターを送られてしまったのかもしれない。
が、違った。
注文を受けたモンスターに間違いはないし、たとえ不良品があったとしても、10匹全部がその可能性は低い、1匹も帰ってこないという事態はあり得ないのではないか、という返答。
次に研修で知り合いになったソフィアに連絡してみる。
ちなみに参加者同士の連絡は固定電話で可能だ。この部屋の固定電話にももちろん専用の電話番号がある。
ダメだった。
ソフィアは普通にうまくいったとのこと。っていうかダンジョンの地図などとっくに作成して、今はもっと別の作業をしているとのこと。
彼女にほかの参加者の様子もきいてみたが、メルカトルムカデでつまずいている者は、少なくとも自分は一人も知らないということだった。
え、マジでなんなんやこれ……めっちゃ時間を無駄にしてる気がしてさすがにあせってくんねんけど……
こうなったらレビテだ。
あいつがここのエリアマネージャーなんだろう?ということは、俺の成績が悪くなってしまえば、それはすなわち自分の成績も悪くなってしまうということだ。
相談内容をレビテに話すと、彼女は言った。
「それは……そやね、そういうことってあるよ。よくある訳じゃないけど、そういうパターン私知ってるわ」
研修を経て口調がフランクになっている。
パターンってどういうことなのか。
「えっとね、一応2個くらい原因が考えられてね、一つはメルカトルムカデが元々ダンジョンに棲息していたモンスターに狩られたパターンやね」
え、自分のダンジョンやのに元からモンスターって棲息してることあんの?
あの最初のウサギみたいなやつのこと?
「あとはね、まだ探索中のパターンやね」
まだ捜索中のパターン?
レビテが言う。「そうそう、別にムカデ自体はうまく機能してるんやけどね、範囲が広すぎてその意味がなくなっちゃってる、みたいな」
「え、そんなことあるんですか」
「あるよー、あるある。普通はだから、そういうことも考えて10匹くらい余分に放つんやけど、あなたの場合はそれでも足りなかったってことかもね」
「10匹って何階層分ですか」
「1000階やね」
え……
研修であんたら全然ちゃうこと言うてたやん。ダンジョンの深さや広さは個人によってばらつきがあるけど、一概に深いからいい、広いからいいというもんでもない。
ただまあ普通に冒険者から経験値の搾り取ることを考えると、深い方がいいし広い方がいいでしょう。
あとそれと、ダンジョンの広さは基本的にもうその個人の資質みたいなもんで勝手に決まってくるけど、考え方としてわかりやすいのは、そうね、ヒューマンの人たちにとっては、高層ビルとかがいいかもね。3階や4階の建物が多いなか、40階とか50階だとステータスでしょ。
それこそ100階とかだと世界的な建築物よ。
ちょっと待って……
俺のダンジョン地下1000階なん?
地下1000階以上あることが確定したん?
レビテは言う。
「とりあえずあと3日待って、週が開けてもムカデたちが帰ってこなかったらまた連絡ちょうだい。何か不具合が起きているんでしょうし、もしあなたの知らないモンスターが巣食っているということなら、また別の方法があるから」
「ちなみに今回はどっちっぽいですか」
「何が?」
「ほかのモンスターの仕業ですかね?それとも地下1000階以上ですか?」
「うーん、それはまだどっちともいえない。もしかしたらあんたのダンジョン、999階で明日辺りムカデたちが帰ってくるかもよ」
いやもうちょっと待ってくれ。
かんべんしてくれ。
しんどいやん。
どのみちこの時点で、謎のモンスターを駆除するか、それかべらぼうに広いダンジョンの管理確定やん!
そんなんどっちも嫌やねんけど!




