5話 自分からやって来る食材達
だがどうやって倒そうか?
うーーーーーーーーーーーーーん
そうだ!せっかく異世界にいるのだから魔法を使って見よう。
確か《スキル模倣》の一覧の中にかなりあったからどれか使ってみよう。
その中の《上級魔力魔法》を試してみよう。
この魔力魔法というのは魔力を火や雷といった現象に変えずにそのまま扱うというものらしい。
相手の弱点で威力が変わらない代わりに安定した威力と汎用性があるのが特徴なので初めて使うのにはちょうどいいかなと思ったんだが……
「魔力魔法は扱うのが難しいのですが悠斗さんなら簡単に扱えそうな気がします。」
俺の話を聞いたノエルがどこから来ているのか分からない自信を持って俺の考えに賛同していた。普通に可愛い。ヤバいな。このままだと親バカならぬ嫁バカになりそうだ。
いかんいかん今はノエルと暮らす楽しい我が家に危害を加えようとする害獣どもの駆除をしなくては!
だが今いる寝室のある二階からでは外にいる害獣どもがあまり見えない為、とても戦いにくい。
「ノエル、取り合えず外に出て撃退しよう。」
「そうですね。ここからだと下の猪が見えませんからね。」
ノエルも賛成みたいなので一階に降りる事にした。
二階から降りてそのまま廊下を通って玄関に出ようとしたがまともな戦う準備をしていない事を思い出す昨日作って『空間倉庫』という物を入れて置ける時の止まった異次元空間のようなものに入れておいた黒刀?を取り出した。
「悠斗さん、その刀を使うんですか。」
「あぁ、せっかく作ったしな。この機会に試そうかなと思ってな。」
まぁ、本音は実際の刀を振ってみたかったからだが。
黒刀の鞘をつかんで外に出ると2mほどの背丈を持つ巨大な猪が何体も目の前にいた。
上からだけだと案外分からないもんだなと思っていると降りてきた俺たちに気付いた3、4匹がこちらに向かって突進しようとして結界に邪魔されていた。
「早く片づけた方が良さそうだな。やかましくて生活に支障が出そうだ。」
「そうですね。悠斗さんの成長の礎と今日の昼ご飯になってもらいましょう。」
完全に棚ぼただがノエルの絶対美味しいであろう肉料理が食べれる。
「そういう話ならさっさと片づけるか!」
ノエルと雑談をしつつも使ってみようと思っていた魔法を使った。
すると左の手の平にアニメなどでよく見る魔法陣が浮かびあがって来た。
その魔方陣へと魔力を注ぎ込んでいくと段々と魔法陣が大きくなってきた。
何処まで魔力を注げばいいのか分からなくなってきたが魔法陣に魔力が突然入らなくなった。それでいいのかと思いつつも魔法を発動させた。
『舞い踊る剣』
すると魔法陣に注ぎ込んだ魔力が外に出てきて淡い水色の剣を20本ほど形作り、俺の周りを円を描くように回っていた。
「凄いですね。こんなに綺麗な魔力剣は初めて見ます。」
確かにこの剣が売っていたら観賞用に欲しくなるな。
……………………………….そっか今は害獣退治の途中だった。剣の鑑賞はこの後にしよう。
「行け!」
自分の周りに5本ほど魔力剣を残しておいて残りは猪を狙っていくようにまだ小さいながら残っている魔法陣から指示を出すと十五本もの魔力剣は猪へと飛んでいき首や胴に刺さったやつからバタバタと倒れていった。
だが仲間が倒れていく様子を見てもまだあきらめるつもりがないのか残った猪がこちらにめがけて襲ってくるので今度は《上級剣術》を模倣しつつ刀の握りをしっかりと握って猪に向かっていった。
出来るのか心配だったがスキルのおかげか切ったら倒せそうな所が頭の中で分かるという可笑しな体験に疑問を持ちつつもそこに向かって居合の要領で刀を振るとそのイノシシは頭と体が分かたれて絶命した。
周りにいる他の猪を三体あっという間に他をしてしまうとさすがの猪でも身の危険を感じたのか脱兎のごとく逃げていった。
戦闘というより蹂躙と呼んだほうが良さげなものが終わり家の玄関へと戻ると
「流石です、悠斗さん!かっこよかったです!」
と、天使 (というよりマジの女神だが)の様な満面の笑みのノエルが出迎えてくれた。
俺は間違いなく嫁バカになるなと思っているとノエルが倒れた猪に向かっていった。
俺も慌ててついていくと腕を組んで何か悩んでいた。
「どうかしたのか?」
「いえ、この猪をどう片付けたりしようかと思いまして。」
確かこういう時に役に立つ奴が何かなかったっけ?
……………………………….あっそうだ。
『空間倉庫』
刀を入れるのにも使っていた魔法を猪に触れながら使って見るとさっきまで目の前にあった猪が消えていた。
「さっきのは空間魔法ですか。」
そう、俺がさっきから使っていた『空間倉庫』は空間魔法と呼ばれる空間や時間などを操れる魔法だ。
まぁ任意に時間を操ろうとすると魔力をやばいぐらいに消費するのだが『空間倉庫』ぐらいなら簡単に使えるみたいだ。
………まあ『空間倉庫』が使えるようになるのは《上級空間魔法》からだからそれに見合った魔法だとは思う。
「これも《スキル模倣》で持ってきたんですか。」
「ああ、その通りだ。」
「やはり悠斗さんのスキルは凄いですね。」
「使いながらも流石は最高神のスキルだなと思っている所だよ。」
そんなたわいない事を話していたが突然俺の腹から音が鳴ってしまった。
「すまん、お腹が空いてしまった。」
「じゃあ朝ごはんにしましょうか。」
「じゃあお願いしようかな。俺は残りの猪の遺体をしまっておくから。」
ちょっと驚くことがありながらも俺はノエルとの異世界生活はそんな感じで穏やか?に過ぎていく。
2019/3/14 内容修正