プロローグ
年明けから二か月程経ったある日の事。
少年は日が傾いてきてもうすぐで夜になりそうな中、一人だけで道を歩いていた。
俺は篠崎悠斗、今は高校三年なのだが後一か月ほどで高校を卒業して頑張って合格した大学に通い始める。その大学は国立なのだが中学生の時から行きたいと思っていた。そのため高校生になってからもずっと頑張って勉強し、行けるようになった事がとても嬉しく、四月が来るのが楽しみだ。
次に何故、夕方に外を一人で歩いているかだが今さっきまで友達と一緒にカラオケなどを回って俺だけ先に家に帰る話になった。
大学入学が決まって浮かれていたとしても俺は決して今までの生活リズムを崩すわけにはいかないのだ。(友達にはノリが悪いと言われてしまったが…)
それで今は珍しく昔によく通っていた花咲商店街を歩いている。
歩きながら周り見回すと前とは違いしまっている店が多く、買い物に来る人たちが少ないように思えた。
一年前ほどから近くに大型スーパーが出来ていてその影響がここにも出ていた。
俺は今回ここを通っていった方が家に近いのでそうしているのだが、久々に来たにもかかわらず何か物さあびしい感じがした。
そんな事を考えながら感傷に耽っていると歩いていると目の前に少女が手に持っている何らかの紙を見ては落ち着かなそうに辺りを見回していた。かと思えば俯きその場に立ち尽くし始めた。
その子の事が心配になり近づくと一際目立つ白い髪と控えめで大人しそうなワンピースを着ている。
少女は俺の事に気付いたらしく顔をこちらに向けてきた。そして見えた少女に俺は見惚れていた。
何というか可愛いなんて言葉では表せないような程可愛らしく美しかった。
別に俺がロリコンだとかそういう話ではない。そんな事、彼女の顔を見てしまえばそんな些細な事など気にする。
彼女はこっちに気付いたようでこちらを向いて見つめながら一瞬ボーっとしていたかと思えば俺のところまで走って来た。
何か気に障ることをしたか等と考えていると彼女に声をかけられた。
「すいません。ここら辺でお食事するのにいい所は何処ですか。」
そう言われても俺も久々だからな。
「あっあの、ここに始めてきてまだ勝手が分からないんです。ですから詳しそうな人に聞こうと思って。」
確かにこの付近は分かりにくいのは分かる。それに女の子一人は心配なので案内してあげようと思った。
「俺で良ければ一緒に探す?」
そう返事をすると彼女はダメもとだったのか俺の返事を聞いて驚いていた。
「えっ…私は嬉しいのですがいいんですか?」
「俺の返り道の途中にある店まで送るだけだから大丈夫だ。」
そう説明すると彼女は納得したようで、
「では、お言葉に甘えさせていただきます。」
そうして俺は彼女を飲食店にまで送ることになった。
彼女はノエルと言って近くの町で住んでいるらしい。
「息抜きで散歩してここまで来ていてお腹が空いてきたので教えて貰えて良かったです。」
「俺もこの町はとても好きだからな。今回の散歩で好きになってくれたら俺も嬉しいよ。」
こんな小さな町に好きじゃなきゃいようとは思わないしな。
それにしてもノエルは思った以上に相手の気持ちも考えられるいい子だから店を教える事もどうってことない様に思えた。
「このお店は何ですか。」
「物作りが好きな人が頼んで物を売ってもらっていたりするお店で中々いい物が売れているからたまに見て見ると面白いよ。」
(クラスメイトが話していた事なんだがな。)
そんな話をしてふとノエルを見ると鉄製の首飾りをジーーと見つめていた。
折角だからと店主にお金を払って買うとノエルが少し残念そうな、意外そうなという顔をしていた。
その後に少し考えてノエルにあげる事にした。
「折角だからこの首飾り貰っていってよ。」
俺の行動の意味を理解したノエルは慌てたように言葉を紡いだ。
「そんな…お店までの案内をして貰っているのに物まで買ってもらってしまっては…」
「ごめんごめん、妹にあげようと思って買ったんだけど似合いそうに無かったから捨てちゃうぐらいなら貰ってほしいな。」
そういうと少し考えた後に貰ってくれて「後で返してって言っても返しませんからね。」と小声で話して早速首にその貰った首飾りを身に着けて嬉しそうに笑っている。
俺はそれを見てこの笑顔を見れただけでも買った買いがあったなと満足感に浸っていた。
そんな幸せそうな雰囲気で商店街を抜けるそうな所まで歩いてきた時に空気を読んで居ないかのように事件が起きた。
「てめぇ、うるせーんだよ。そこをどけや。」
目の前でサラリーマンの男の人におっさんが絡んでいるのが見えた。
「そこに居たら他の人の邪魔になるからどいて下さい。
どうやらおっさんは酒を飲んで路上に居座っているらしい。
まったくそんなことして恥ずかしくないのか…酒を飲んでいるから自分が何しているのかも理解して無さそうだな。
まったく迷惑だなと思っていると男の人が電話を取り出して警察に連絡すると話した
するとおっさんが突然立ち上がってどこからか包丁を取り出して男の人に向けた。
「警察に連絡したら殺すぞ。」
そういって男の人の頬を切りつけた。すると切りつけられたところから血が垂れてきた。
その後に一瞬の悪寒が過ぎると周りの人はパニックになり始めた。
俺とノエルが戸惑っていると
「おらぁぁぁぁぁぁどけやぁぁぁぁ!」
そんな事を叫んでおっさんがこっちに向かって走って来た。ノエルはその場から動けすにいた。
そこから先は体が勝手に動き始めた。全力で彼女を突き飛ばしオッサンの方を向いたがそこで一瞬胸元に熱さと共に何かが刺さった感じがしながら俺はその場に倒れた。
胸元を見ると心臓がある所をオッサンが持っていた筈の包丁が刺さっており、刺された場所から血が服にしみ渡っており地面にも流れていた。
俺は本能でこのまま死ぬことを分かってしまった。
それを見て周りの人がさらに騒がしくなっていった。
俺はまだ包丁が刺さっていたが自然と痛みなどは感じなかった。ただ彼女を助けられたという嬉しい気持ちが多かった為死ぬ恐怖は全くなかった事が幸いだった。
うわの空でそんなことを考えていると俺が助けたノエルが俺の手を握って来た。
「ごめんなさい。私が突っ立っていたせいで親切で優しいあなたがこんな目に……」
そんな彼女に声をかけようとするが口が動いても声が出てこなかった。
段々と視界が暗くなっていくと同時にまた辺りが騒がしくなってくる。
「またいつか……今度は貴方と一緒に過ごしたい。」
そんな声を聞きながら俺の意識は薄れていった。
『今日の夕方、花咲商店街で四十代の無職、‥‥容疑者が包丁を持って暴れ、女の子を庇った高校生の篠崎悠斗さんが刺されその場で息を引き取りました。』
その空間の中には女性が会社によく置かれている事務椅子に座り机の上に乗せられた紙の束に目を通していた。
その作業に慣れているらしく瞬く間に書類の山が減っていく。
そうこうしていると何もない空間に突然扉が現れ中から白い髪に白のワンピースというシンプルな身なりの少女が入って来た。
すると今まで黙々と作業をこなしていた女性は瞬きをする間に椅子から降りて少女の方へと頭を下げた状態でじっと立っていた。
「お帰りなさいませ、地球はいかがでしたでしょうか。」
すると少女は見た目に反してしっかりとした口調と声音で返す。
「えぇ楽しい数日間でした。ですが余韻に浸っている暇はありません。直ぐに二人に連絡し、例の話を進めてください。」
少女が話すとほぼ同時にその話が来るのが分かっていたかのように女性が机の上で分けて置かれていた書類を手に取り「これが例の件についてまとめた書類です。」と一言告げてから少女へと渡す。
「畏まりました、直ぐに連絡を行います。例の件は問題ありませんが、本日連絡された話は伺いましたが、何故その様な事をなされるのですか?」
普通はまだ親の元で生活しているはずの歳に見える少女からの指示に頭を垂れたまま疑問を言う事もなく淡々と従う女性だが今日聞いたらしい話には流石に疑問に思ったらしく聞き返していた。
すると今までの堂々とした語り方とは変わって熱が入ったかのように語りだした
「確かに可笑しいと思うかもしれません。
何故私がその様な事をと‥‥
ですが私は彼と出会い少しではありますが彼と話、同じ時を過ごして確信したのです。
これが人々が信じるという運命の相手であると‥‥。」
胸元で両手を重ね合わせて祈りを捧げるかのようなポーズで自分が体験した事とそれで導き出した自分の考えを語る少女にかろうじてわかる程度の呆れているかの様な顔をした女性が返事を返す。
「はっはあ……かしこまりました。急な話で手間取りはしましたが手続きの方は済ませておきました。」
「そうですか……いつも道理の迅速な対応……流石ですね。」
「\\\\\!!……おっ、お褒めの言葉を下さり感謝いたします。それとお二方から時間が出来てからで構わないのでその者と合わせてほしいそうです。」
「分かりました。二人には時期を見て改めて相談してきてほしいと伝えてください。その時に返事を返すとも。」
そういうと女性は一度頭を上げた後にもう一度頭を下げて「畏まりました。では自分はこれで。」とだけ言い残しこの空間から居なくなった。
そうしてその空間には白髪の少女一人だけになった。
そうして一人になった空間の中で少女はまるで窓の外眺めるように遥か彼方を見ながら言葉を紡いだ。
「お待ちしております。……篠崎悠斗さん。」
「私が恋をしてしまった人。」
そう口にする少女の首には鉄製の首飾りが鈍い輝きを放っていた。
時間はかかるかと思いますが少しづつ書けたらなと思います。
2019/2/11 内容を大幅変更。
2020/1/31 内容を大幅変更。