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織田信長の行動記録  作者: 楠乃小玉
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一般人が織田信長の思考を理解できない理由

織田信長が許すこと、許さないことの価値観は

一般人と違う。

よく、ドラマなどに出てくる織田信長は

「失敗は絶対に許さぬ!」

と言ったり、

「この世の中は実力主義じゃ!ワシは能力があるものだけを認める!」

とか言っていますが、

あれって、結局、無能な人が考えた「ボクが考えたすごくエライ人像」

なわけです。

実際の織田信長の言動を調べて描いたものではなく自分の中に内在する自分自身の

本音を書いただけなんですね。

そういう事を言っているから失敗するのであって、成功者はそんな事はいわかないわけです。


実際に織田信長は

佐久間信盛への折檻状の中で

「合戦の勝ち負けは時の運だから、負けたからといって責めたりはしない」

と書いているんです。

そのほかにも再三にわかって

「人間に大切なことは、誠実で一生懸命自分に与えられた仕事に取り組む人間であって、

特別有能な人間よりも、そうした真面目で誠意のある人間を自分は登用する」

と言っているんですね。

日本では、時間を守る習慣というものがありますが、

これも織田信長の影響で、

人との待ち合わせの時間を守るということは、他人との約束事を守る人の尺度なわけです。

どれだけ有能な人間であっても、小さな約束を守らない人は、

土壇場で仲間を見捨てて逃げる人なわけです。

つまり、「たった5分遅れただけで、何の影響があるんですか?」という質問は

あくまでもミクロな視点であって、

その人を犠牲にしても何も感じない人という人間の心理は、

最終的に自分に不利益がなければ、平気であなたを殺す人ですよ。

ということなわけです。

だから、人との約束の基本である、人との待ち合わせの時間を守らない人とは距離を置くべきなのです。

それは、たとえ優秀であっても「他人を犠牲にしてもなんとも思わない人」だからです。

単に、その場かぎりのたった5分の犠牲ではない。


話が脱線しましたが、

織田信長は人の失敗には寛容でした。

では織田信長は何に激怒したのか。

見てみると、

人との約束を守らない人、

ウソをつくひと、

人から盗む人。

不誠実な人。


織田信長はそういう、自分では守れるのに、自分の利益のためにルールを守らない人を

嫌悪し、征伐したんです。


長島の一向衆も、信長との休戦協定をやぶって、背後から不意打ちして、

信長に皆殺しにされました。


池田恒興の家来は人の家からものを盗んでおいて、嘘をツキとおして、

信長に切られました。


信長は不誠実な人間が大嫌いです。


だからこそ、荒木村重は家臣が物資を本願寺に横流ししていることが発覚して、

恐れて信長に反乱を起こしたのです。


明智光秀も横領が発覚して信長が止めるよういっても、また隠れて横領をしていたので、

最終的には殺されるのではないかとの恐怖感をもっていたに違いありません。


織田信長が自分の組織を柔軟に動かした原動力は、

他人に対する許しです。


木下藤吉郎は柴田勝家と作戦の方向性の違いから言い争いになり、

敵前から撤退し、織田軍の敗北の一因にもなっています。


しかし、織田信長は木下藤吉郎を許しています。

ほかの組織なら完全に死罪です。


織田信長は、家臣の失敗を責めません。


そのかわり、自分のかかげた理念に逆らうものには猛然と怒りを向けます。


つまり、信用経済の構築、「天下布武」を使って、日本に信用経済を構築する。

金や銀などを崇拝する物質貨幣経済からの脱却。

そのための相互信頼の構築。


それを守らない者に激しい怒りを表します。


それは、織田信長の留守に遊びにいってしまった女房たちにも向けられます。


それを見た凡人は

「なんだ、ちょっと主人が留守の時に遊びに行っただけで激怒するなんて頭がくるっている。

戦争で負けたほうが罪が重いじゃないか。しかし、戦争で負けても責めず、ちょっと

約束の時間をすっぽかしたり、人の目を盗んで遊びに行ったような軽い罪では大きな

罰を与える。織田信長は狂っている」


と考えるわけです。


しかし、織田信長は、そうした軽い信用崩壊、地頭や奉行の横領など

小さな裏切りの積み重ねが戦国時代を生み、

多くの血が流される時代を作ってしまったことを理解しているので、

そういう小さなことでも激怒していましめたのです。


現代の日本の治安の良さは、織田信長が構築した相互信頼という幻想の上に立脚しています。

私たちは生まれた時からそれを享受しているので、

その有益性を理解していません。

よって、織田信長がなぜ、そんなに怒るのか理解できず、

「ちょっとくらいいいじゃん、自分だけ人をだましたり、時間を守らないで、

人に迷惑かけても、世の中何もかわらないよ、それより自分が有能な人間だと

アピールしたほうがいいよ」

などと言うわけです。


実際に社会的に成功した織田信長は

人の失敗を許し、人の不誠実を許さない。

でした。

そのことにより社会的成功が得られるのです。

織田信長は、「ちょっとだけ人を裏切った」だけでも許さない。激怒する。

だから非寛容な人間と世間から言われる。

しかし、

誠実に一生懸命やった人間に対しては、大きな合戦で敗北しても失敗しても織田信長は許した。


一般の会社の社長などは、

ほんの少し人との時間を守らない人間でも有能な人間を選び、付き合い、

どんなに誠実でも失敗した人間には激怒し、自分が損をしたことを責めさいなみ激怒する。


織田信長は、どんなに有能で自分に利益をもたらす人間でも、人を裏切り、人との約束を

守らない人間に激怒し、それでも守らない人間を切り捨てた。


誠実に頑張っている人に対しては、たとえ失敗しても次のチャンスを与えた。

前田利家しかり、木下藤吉郎しかり、徳川家康しかりです。


織田信長の組織でなければ、前田利家は織田信長の茶坊主を切った時点で殺されており、

木下藤吉郎は越中から撤退した時点で切腹、徳川家康は三方ヶ原で敗北した時点で

失脚していました。


織田信長の組織であったからこそ、この後の英傑たちは生き残って成長したのです。

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