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5 魔王アシール


 ごぼりと、魔術師は口から血を吐き出した。2度、3度、咳込むように喀血する。

 もう魔術は使えないだろう。命だって長くは無い。


「……ゲボッ、ハァ、……女を、人ゴホッ、質にぃっ……!」

 なのに諦め悪く、魔術師は僅かに残った兵達に指示を下す。

 その指示の内容はとても、本当に今更な物だ。いくら相手が女子供とは言え、あの程度の人数では多数の魔族を人質に何て取れやしないだろう。

 だがそれでも、武器を持った人間が相手なら犠牲者が出る可能性はあった。


 指示に動く敵兵を妨害に走るが、先程の火球を弾いたダメージに鈍った身体は思うように動かず、到底間に合いそうにない。

 焦りに歪んだ我が顔を見て、魔術師が血を吐きながらも笑う。

 愉快そうに、奴程の知恵者ならば、その笑いですら自分の寿命を縮めているとわかりそうな物なのにも関わらず。


 しかしその時だった。笑う魔術師の喉笛に、一頭の狼が喰らい付いたのは。

 かひゅっと空気の漏れる音を最後に、魔術師は沈黙した。

 いや、魔術師だけじゃない。魔族の女子供に迫りつつあった兵士達も、突如として現れた狼に襲われ、喰らわれている。

 更には魔族の女子供達、そして我にも狼達が牙を向けんとするが、


『ヴォゥ!』


 響く咆哮に一斉に頭を垂れた。 

 そんな狼達の奥から、悠々と現れたのは、見覚えのある姿。

 我の前に来て、頭を摺り寄せて来るソイツは、森の中で治癒魔術を施したフォレストウルフのリーダーだ。

 その身体は、塞いだ筈の傷口が幾つか開き、更には見覚えの無い傷まで付いている。


 到底俄かには信じ難い事だが、状況とその傷が、このフォレストウルフのリーダーの我と別れてからの行動を物語っていた。

 即ち此奴はあの後直ぐに他の群れに合流し、その群れを力で支配したのだろう。

 確か狼種は群れの中の強者に従う習性があった筈。


 だがそれでもその日入ったばかりの新参者が群れの長に挑戦しようとするならば、群れ全体から激しい抵抗を受ける事は想像に難くない。

 其れを捻じ伏せ、手に入れた群れを率いて此奴はこの場に駆け付けたのだ。

 無駄死にをさせまいと連れて来る事を選ばなかった此奴は、我が思うよりも遥かに強く、誇り高い存在だった。


 己の見る目の無さを、知らず知らずのうちに見下し、相手を弱者だと思い込んで居た自分を恥じる。

 けれど今、我に頭を擦りつけて来る此奴は、きっと謝罪等を望むまい。


「ハハハッ、助かった。礼を言うぞ。貴様やるではないか」

 感謝と、そしてその武勇を褒め称えて、摺り寄せて来る戦友の頭を思い切り撫でまわす。

 戦いは終わったのだ。其れも恐らくは最良の形で。

 傷の痛みなど大した事では無い。拳を振り上げ、叫ぶ。


「我等の、勝利だ!」

 我が声に、狼達の遠吠えが重なった。




 勝利宣言の後、狼の群れは森に帰って行く。

 土産に、人間達の骸を引き摺って。

 だがフォレストウルフのリーダーだけは、我から離れようとはしない。

 彼の狼達と此奴の間にどのような契約が交わされていたのかは知る由も無いが、一つだけわかる事は此奴は我と共に来る心算であるらしい。


 まあそれは良いのだが、問題は今、我の前に膝をつく魔族達だ。

 我は声に応じてこの世界にやって来た。故に成すべきを成さねばならない。


「魔王様、我等を御救い下さり、ありがとうございます」

 一番前で跪くのが、声の主である彼女。

 年若い彼女が村の中でどういった位置にあったのかはわからないが、生き残りの集団の中では代表者となる立場のようだ。

 しかし漸く、名前を名乗る事が出来る。

 我を喚ぶ声の主。我が名乗りを聞くのは、この世界で彼女が一番初めでなければならない。

 其れがルールだ。


「我は魔王、魔王アシール。娘よ、汝が助けを求める声に応じ、この世界に喚び出されし者」

 言葉に、彼女が顔を上げる。

 その紅の瞳に浮かぶのは驚きだ。自分の祈りが、助けを求める願いが、魔界に届いているとは思いもしなかったのだろう。

 けれど彼女が求めたからこそ、確かに我は此処に存在するのだ。


「娘よ、名乗れ。そして我を喚びし者として一つだけ願いを言うが良い。我はその願いを叶える為に此処に来た」

 魔王は魔族の神に声を届けし者を助け、その願いを叶える為に魔界を送り出された。

 其れは魔族に伝わる儀式だ。

 不可能な願いを言う事も出来る。だがその結末は誰にとっても不幸にしかならない。


 彼女の本当の願いも察する事位は出来た。村の人達、家族を生き返らせて、元通りの生活を。

 しかし死者の蘇生は、神でさえもがおいそれとは手を出さぬ領域の業。

 一介の魔王には叶えられない。


「村長アック・フリッグの娘、サーガに御座います。アシール様、どうか我等をお導き下さい」

 サーガは強く、賢い娘だった。

 我儘を言わず、泣きもせず、皆の為の願いを口にした。

 だからこそ強く思う。この娘とその同胞を守らねばならないと。


「願いは確かに聞き届けた。サーガよ。汝は、汝等は、この魔王アシールが守り導こう」

 己が胸に手を当て、宣言する。

 契約は今確かに交わされた。

 我は漸く、本当の意味で魔王となる。民たる魔族を導く王となる。

 この『貯金』だけが取り柄の魔王の物語は、今此処から始まるのだ。




名称 アシール

種族 魔王

年齢 0(?)

髪色 黒 瞳 黒


レベル 3→5

生命力 80→100

魔力  110→150


STR 45→55

INT   79→93

DEX   57→69

VIT  50→60

MND  67→79


戦闘技能

武器類取扱(低)

魔術技能

魔力操作(高) 強化魔術(高) 幻想魔術(中) 治癒魔術(中)

他技能

感知(中)

ギフト

『貯金』魔王銀行を何時でも何処でもご利用になれます

現在貯金額11.357G

魔力貯金額     0P


所持品

魔王の服(防御力小、清潔、自動修復付与)




名称 無し

種族 フォレストウルフ(リーダー)

レベル 10(上限)


生命力 70

魔力 40


STR 40

INT   15

DEX   40

VIT  35

MND  15

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